第46話 アート=シルバーマン03
「臣国は増えてる?」
「あまり」
「台湾が切り口になると思ったんだけど」
自宅。
お隣がウィーンガションガションと工事中。
シルバーマンが家を建築中らしい。
何かにつけ派手にすれば雅ってワケじゃ無い気がするけど、たしかに財閥令嬢をマンションに押し込むのもどうかなわけだ。
茶を飲む。
「お兄ちゃんは……大丈夫……?」
「可愛い!」
心配げなルリを抱きしめる。
すっぽり胸元に収まる小ささ。
「はぁ幸せ」
ルリズムです。
シスコンです。
後ろめたくもござんせん。
「えへへ~」
ラピスが嬉しそうに笑った。
まぁ本人に限りなく近くはあるのだろう。
僕とルリとラピスで茶を飲んでまったり。
「発展途上国あたりは簡単に靡いてくれると思ったんですけど」
そりゃエネルギー問題が解決するなら願ったりだろう。
「穀物メジャーが強いですね」
「エネルギー以上に真摯な問題か」
食べ物あってこそ人民は暮らせる。
であればその流れの支配は盤石たる。
さすがにアメリカを敵に回す国々も少ないらしい。
絶無皆無とまではないらしいけど。
こと貧しい国は多少なりともオファーが来るとのこと。
「グレートブリテンの介入は少し予想外でしたけど」
ラピスの予想では「敵対だろう」とのこと。
が、アートがヒットマンでもなければ、存在としてはジョークに成り得ない……いやこの際ジョークの方がまだしも良心的な気もしますけど。
「ま、向こうに振り回されることはないんじゃない?」
「ですね」
スッと僕は茶を飲んだ。
「しるばーまん氏は……お金持ち……?」
ルリが首を傾げる。
「らしいよ?」
僕も実感沸かないけど。
「お兄ちゃんは……いっぱい好きだね……」
「僕はルリが好きなんだけど」
「お嫁さん……」
赤面する様は本当に鑑賞に値する。
ガラスケースに入れて保存したい……二次性徴で乙女になるルリも楽しみだけど、今この瞬間のルリもまた輝かしい銀河の歴史がまた一ページ。
「……………………」
ラピスの方はそこにつっこまなかった。
「何か不安でも?」
「いえ。然程でも」
肩をすくめるジェスチャー。
「お茶のお代わりを」
「はいはい」
緑茶を湯飲みに注ぐ。
覇王と宰相の関係では無いけど、家では僕が世話係だ。
ラピスもその辺は受け入れていた。
妹の世話を他者に譲りたくないのは僕の本音なので。
ちょくちょくニュースで僕は出るけど、熱その物は冷えてくる頃合い。
ぶっちゃけた話、政治がどうあれテレビの視聴者……俗に言うマジョリティは新鮮さを求めてニュースを見る。
その点で、僕とラピスの暴挙は色褪せる。
このままだと普遍的に色味のない王様となるわけだけど、そのあたりをラピスがどう考えているのか。
聞きたいような、聞くのが恐いような。
鵺の鳴く夜は恐ろしい。
「イギリスですか」
グレートブリテン。
「お姉ちゃんは……大丈夫……?」
「ええ」
赤い瞳を穏やかに細目、自身と同色……純白の髪を撫でるのでした。
「にゃは……」
くすぐったい様にルリが笑う。
鼻血を吹きそうだ。
ルリもラピスもマックス可愛い。
これで「タイが曲がっていてよ」とか言われると別の世界に目覚めてしまう確信がある。
「結局掣肘なのかな?」
「それだけで本家の直系が来るとは考えにくいのですけど」
「日本とは頭上で会話を」
「それはするでしょうね」
興味をかき立てる物でもないようだ。
日本もイギリスも王国の属国には違いないだろうけど、なお民衆に紛れているので核兵器を落とされる心配もないし、実現したところでメギドフレイムの前には無力だ。
「ふあ」
ラピスの欠伸。
「膝貸そうか?」
ソファに座ったまま膝をポンポンと叩く。
「よ、宜しいので?」
今更だな~。
「ラピスを甘やかすのも兄さんの仕事ですので」
「うぅ」
紅潮する様は愛らしい。
これだけみると魔王には思えないから不思議。
いいんだけど。
意を決してラピスが言う。
「それでは……失礼します」
「良い夢を」
それを願うばかり。
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