第9話 未来から妹がやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!02
食後……茶を飲みながら事態の把握。
「えーと……つまりラピスは……未来人と……」
「そゆことです」
茶をしばくラピス。
「何故に過去へ?」
「世界征服のためです」
頭に疾患があるのかな?
「世界征服して何がしたいの?」
「兄さんを世界で一番幸せにしたいです」
「何を以て?」
「逆に聞きますけど……」
「何か?」
「両親が亡くなってからこれからどうするつもりです?」
「働く」
「でしょうね」
本当にラピスが未来のルリなら知っているのだろう。
「そんな兄さんに朗報です」
「?」
「スマホで口座を確認してください」
「……………………」
茶を飲みながら口座にアクセス……今どきの金融事情って便利だよね。
おかげで総負債が幾何級数的に膨れあがっているんだけど……この場合人類の業は何処でリセットされるのやら。
ともあれスマホで確認。
「……………………」
そして沈黙。
有り得ないほど桁の並んだ数値が現われた。
一、十、百、千、
「一兆円?」
「然りです」
コックリ。
サックリ。
ラピスは頷く。
「稼いだの?」
「在る意味で」
「どうしろと?」
「兄さんが働くのは私の……司馬ルリのためですよね? つまり、これで働く理由がなくなったでしょう?」
「いや……そうはいうけどさ……」
そんなあっさり言える金額ではない。
破壊的な数字ばかりが意識を支配していて、どこか夢遊病のように精神がフワフワしているのを感じる。
「まだまだこれからですよ」
まだあるの?
「とりあえずの軍資金です」
とりあえず……と申しますか。
まだ上が有りそうな意味合いを含んでそうで恐い。
「というわけで兄さんは、学校を辞める必要はなくなりました」
「ラピスのヒモ?」
「家族なのですから助け合うのは当然でしょう?」
何を今更。
そうラピスは言う。
家族……ね……。
「けど一兆円なんてどうやって……」
「東証があれば幾らでも稼げますので」
あのー。
それって犯罪じゃ?
背筋に嫌な汗が流れる。
「てなことで」
紅茶を一口。
「金銭面では不自由させませんので大船に乗ったつもりで」
「だいたいオチが分かっちゃったな」
「?」
首を傾げるラピス。
ピンポーンとインターフォン。
「はいはい」
「警察です」
でしょうね。
「協力を願います」
「構いませんが何をしろと?」
「司馬ルリさんはいらっしゃいますか?」
二人ほど。
ヒョコッと、ラピスの方が玄関に顔を出した。
「何ですか?」
「株式の不正取引容疑で逮捕します」
「えー」
すごい嫌そう。
「面倒だからヤです」
「逮捕状も出ていますので」
「…………兄さん?」
「禊ぎと思いなさい」
ガチャン。
手錠をかけられパトカーへ。
エンジン音が遠ざかる。
「何だったんだ……いったい」
口座の一兆円はどうすんべ?
場合によっては差し押さえだろうけど。
「ていうか」
ラピスの戸籍はどうするんだろう?
調べようにも存在しない。
「ま、いっか」
「あう……」
ルリがヒョコッと顔を出した。
可愛い。
癒される。
「ラピスお姉ちゃんは……大丈夫……?」
「死にゃしないでしょ」
そのあたりは楽観論。
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