第8話 未来から妹がやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!01
「えーと」
色々考えた末、
「いただきます」
と夕餉にした。
白米と青椒肉絲、中華スープといった具合。
ダイニングテーブルには、三人が座っている。
僕こと軽木。
妹のルリ。
そしてルリに、ひどくよく似たルリさん。
アルビノの白髪赤眼は、ルリと良く相似する。
それが如何な意味を持つのか……さすがに想起には適うわけで、結局のところルリさんは何者よ?
「はー、兄さんの手料理はやはり美味しいですね~」
そしてルリさんは、僕を兄さんと呼ぶ。
妹か?
妹なのか?
「お兄ちゃん……?」
義妹のルリが、こっちを見てそわそわ。
基本的に彼女は極端な人見知りだ。
暫定ルリさんから受けるプレッシャーたるや、想像の埒外に浮き、筆舌に尽くしがたいといっても決して大げさではない。
「叩き出そうか?」
「ええっ!?」
何故驚くんだろう?
普通に流れで青椒肉絲を食べてるけど、僕はルリ第一主義だ。
ルリに対して不利になる現象の排除は、お兄ちゃんの義務。
「ていうか不法侵入だよね?」
「ちゃんと鍵を使って開けました!」
そういう問題かなぁ?
そもそもなんで鍵を持っているのか?
「で、ルリさん?」
「呼び捨ててください!」
「それだとルリと被るし」
隣の義妹の頭を撫で撫で。
「私だってルリです!」
「さいかー」
「信じていませんね?」
「そりゃまぁ」
未来のルリと言われても、まさにバックトゥザフューチャー……そういうのはハリウッドでやってください。
「ホラか。詐欺か。妄想か」
「うがー」
吠えるルリさん。
「おかわりは?」
「いただきます!」
元気いっぱいに茶碗を差し出された。
米を余分に炊いているので、コレは宜しい。
「うーん。ラブリティ……」
何がよ?
「食事一つとっても兄さんの愛を感じます! この至福の貴重さは、万金に値すると言って正にその通り!」
「兄さんね……」
「妹として至福です」
「こんなおっきな妹は知らないけど」
「未来から来たので加齢しているんです!」
「時間移動はあり?」
「なしです!」
自分で否定するか普通。
「じゃあどんな原理?」
「それは後刻と言うことで!」
はいはい。
「――――」
ルリさんはガツガツと食事を取り申しました。
「ルリさんは……」
「呼び捨ててくださいよぅ……」
「ルリは一人で間に合ってる」
「うにゃ~……」
色々とある御様子。
「あー……ルリさん……」
「つーん」
「ていうか呼びにくい。仇名を所望する」
「仇名……」
青椒肉絲を食べながら、天井を見上げて、ルリさんがしばし勘案し……提出。
「ルリルリ」
「却下」
即答だった。
「何ゆえ?」
「同い年を素面では呼べない」
「一応誕生日的にも、兄さんより下ではあるんですけど……」
ルリの誕生日はね。
「ルリはどう思う?」
「あう……」
目が泳ぐのも、言葉を封じるのも、何時もの御様子。
「じゃあラピス」
「ラピス……」
「瑠璃はラピスラズリって呼ばれるでしょ?」
「劇場版機動戦艦ナデシコだね」
「にゃ」
そんなわけでルリさんの愛称は、暫定的にラピスに決まった。
「じゃあ司馬ラピスになるのかな?」
「まず以て戸籍がありませんけど」
「あ」
仮に未来から来たのなら、当人の戸籍と年齢が一致しない。
「どうするの?」
「別に良いんじゃないですか?」
そこは楽観論なんだ。
「兄さん」
「はいはい」
「おかわり」
「はいはい」
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