2話 虫取り。

「アッキー! あーそーぼー!!」


「うぇ!?」


 雀の鳴き声と眩しい太陽の光が差し込んできた時間帯に、なー姉ぇの元気な声が響き渡る。


 俺は寝惚けた目をこすりながら時計を見た。


 今の時刻は朝5時30分。


 昨日ってか今日の夜12時過ぎに解散したばかりだから、あれからまだ5時間ぐらいしか経っていない。


 それなのにもう遊ぼうとか、なー姉ぇの体力はどうなってんだ?


「なー姉ぇおはよう。 朝から元気だね」


「おはようアッキー! 元気はあたしの取り得だからね!っというわけで遊ぼう!」


「早すぎるよなー姉ぇ……あと2時間は寝かせてよ……」


「そしたら起きる時間7時30じゃん! 遅すぎるよ!!」


「朝の7時30は遅くないよぉ……ってかなー姉ぇ。 遊ぶってなにをして—————もしかしなくても虫取り?」


「そう虫取りだよ!」


 俺は目がはっきり見えるようになってきたので、なー姉ぇの姿を見る。


 今日のなー姉ぇは服の色が違うぐらいで、昨日とほとんど同じ服装だったけど、違う点が何個かあった。


 1つ目は麦わら帽子を被っていること。


 2つ目は虫取り網を持っていること。


 最後に身体に虫取り籠をかけていることだ。


 ……良い感じに虫取り籠でパイスラしているな。 眼福眼福。


「……ちょっとアッキー。 今胸見てたでしょ?」


「そ、そんなことないよ!」


「…………」


「ほ、本当だよ!?」


「……アッキーのスケベ!」


「ご、ごめんなさいぃぃぃぃ!!」


「もう! 許してあげるから10分で支度してね!」


「はい! 分かりました!」


 俺はなー姉ぇの言う通りにする。


 うぅ……しょうがないじゃん! 男の子なら見ちゃうって!


「なー姉ぇお待たせしました!」


「うん。 本当に10分で支度したね。 朝ごはんはしっかり食べた?」


「残っていたおにぎりとみそ汁、沢庵をいっぱい食べました!」


「よし! なら体力も満タンだね! それじゃあ山にセミを取りに行こう!」


「はい!」


 俺はなー姉ぇについて行く。


 セミ取りなんて前なー姉ぇとやって以来だから、3年ぶりか?


 俺、まだセミ捕まえることができるのかな?


「ここの山にいっぱいセミがいるんだよ! 一緒に捕まえよう! もしかしたら、珍しい虫を捕まえることができるかもしれないよ!」


 俺はなー姉ぇと一緒にセミを取り始める。


 しかし、ここで大きな問題に気づいてしまった。


「なー姉ぇ大変だ!」


「どうしたのアッキー?」


「網でセミを捕まえたのはいいんだけど、触れないんだ!!」


「えぇ!?」


 俺自身も驚いている。 小学生の頃は全然触れたのに、今となっては触れないなんて!


「アッキーって虫触れない人だったっけ?」


 なー姉ぇがセミを掴んで俺の虫取り籠に入れながら聞いてくる。


 ひぃ! セミが飛び回って虫取り籠からの振動が俺のお腹にぃぃぃぃぃ。


「なー姉ぇと遊んでいた頃は普通に触れたよ。 でも、どうやら、触れなくなったらしい」


 俺がそう言うとなー姉ぇは俺のことを鼻で笑う。


 そして、俺に対してこう言うのだった。


「まったく……これだからシティーボーイは!」


 かっち———ん!


「はぁ!? 別に触ろうと思えば触れます———!」


「ならなんで触らないんですか—————?」


「取れないであろうなー姉ぇに触らせてあげようと思ったんです————!」


「な、なんですって—————!?」


 俺達は低レベルの罵り合いをする。


 そして、どっちがたくさんセミを捕まえることができるか勝負することになった。


 俺は負けず嫌いだ。 負けたくない。 


 だから、嫌だけどセミだって触ってやる!


「ぐぉぉぉぉぉ!」


「アハハ! なにそのへっぴり腰! カッコ悪~い!」


「なんとでも言え! 絶対勝ってやるからな!」


「そんなへっぴり腰の相手に負ける気がしないね~」


「なんだと~~!」


 俺達は時間を忘れて勝負する。 最終的には大差をつけられて負けてしまった。


 くっそ~相手の方が地の利があるし、経験豊富だってこと忘れてた~!


「へへっ! あたしの勝ちぃ~!」


「くっそ~もう一回昼から勝負だ!」


「いいよ!」


 俺達はセミを逃がして、山から下りて2人でおじいちゃん家に戻る。


 そして、じいちゃんとばあちゃんも混ざってもう一回朝ごはんを食べ、なー姉ぇと縁側で昼寝をしてからまたセミを取りに行ったのだった。


 ちなみに昼も俺の負けだった。 おやつのスイカを少し取られたのは悔しかったから、なー姉ぇがトイレに行っている間に塩を大量にかけたら怒られてしまった。

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