俺となー姉ぇの1週間の夏休み。

@raitiiii

1話  再会。

 広い海にたくさんの山。


 聞こえてくるのは波の音と、けたましいセミの声。


 電車に揺られて2時間。


 俺、高木晶たかぎ あきらは父方の祖父の家へと来ていた。


 中2の夏休み、一週間ここで過ごすことになっている。


「それにしても……やっぱりここは田舎だなぁ。 俺、ここで1週間も生活できるのか?」


 俺はスマホを見る。 スマホの電波は1本しか立っていなかった。


「父さん、一応ネットは開けるって言ってたけど本当か? 良くて電波2本しか立たないし、時々圏外になるんだけど」


 俺はキャリーバッグを引きながら駅の改札口へと向かう。


 うわっ人がいない。 無人駅なんて本当にあったのか。


 俺が住んでいる都会では信じられないな。


 俺は事前に父さんからカード類は使えないと聞いていたので、切符を改札に入れる。


 外に出るとカンカン照りの太陽が容赦なく俺に降りかかった。


「あちぃ……早く涼しいところに行きたいな」


 祖父の家に行くのは3年ぶりで、当時俺は小5だった。


 夏休みには毎年来ていたけど、ここ最近来ていなかったな。 ここも変わってないや。


 俺は水分を取るために駅にある自販機でスポーツドリンクを買う。


 取り出すとき、鉄の部分が凄く熱くて、思わずあちっ!と言って手を離してしまった。


「あちちち……冷やそ冷やそ」


 俺は買ったばかりのスポーツドリンクで手を冷やし、落ち着いてから飲んだ。


 ぷはぁ~身体に染み渡る~。


 俺はゴクゴクと音をたてながら飲んでいく。


 しかし、両親が1週間出張だから祖父の家に来たけど、ここは本当に変わってないし、なにもないな。


 聞いた話だとコンビニまで20キロ以上、スーパーまで10キロ以上離れているらしい。


 ここの人達はどうやって生活しているんだろう?


 俺はそんな疑問を抱きながら祖父の家に向かっていく。


 すると、橋の近くで同い年ぐらいの女の子がいることに気づいた。


 髪を二つ結びにしていて、ショートパンツにノースリーブTシャツを着ている。


 身長は女の子にしては高く、よく外で遊んでいるのかしっかり日焼けをしていた。


 可愛らしい顔立ちをしていて、胸がデカい。


 田舎にもこんな可愛い子がいるんだな。


 俺はまじまじと見ていると不審に思われると思い、すぐに顔を逸らす。


 でも、あそこの橋渡らないと向こう側にいけないいんだよな。


 どうしよう?


 俺が悩んでいると、女の子は俺の存在に気づく。


 すると、満面の笑みを浮かべながら俺の方へと走ってきた。

 

 え、なになに!?


「アッキー久しぶりーー! かっこよくなったねぁ!!」


 女の子は大きな声でそう言いながら俺に抱き着いてくる。


 抱き着いた瞬間、柑橘系の良い香りと、柔らかい胸の感触が伝わってきた。


 ~~~~~っっ!


「うわぁ本当にアッキーだ! 身長も高くなって男の子っぽくなったね! 筋肉もカチコチだ!」


「ちょ、ちょっと!?」


 女の子は離れたと思うと、遠慮なく俺の体を触りまくる。


 ちょ、ちょっと腕を触らないで! 腹筋をツンツン突かないで!!


「な、なんなんですか貴方! 初対面の人の体をいきななり触りまくるなんて痴女なんですか!!」


 俺が体を抱きしめながら後退すると、痴女は不思議そうに俺の方を見る。


 そして、少ししてポンっと手を叩いた。


「あれ? もしかして気づいてない感じ? あたしだよ! アッキーのおじいちゃん家の隣に住んでいる豊川奈緒とよかわなおだよ!」


「…………なー姉ぇ!?」


 そういえば、おじいちゃん家の隣に1つ上の女の子がいたな。


 夏休みにこっちに来たら毎日朝から夕方まで遊んでいたっけ。


 でも、なー姉ぇって半袖半パン、サンダル履いて膝に絆創膏をいつも貼っていて、男の子みたいな女の子だったはずだけど……成長したなぁ。


「そうそう思い出してくれた?」


「うん。 思い出したよ。 なー姉ぇ凄く女の子っぽくなったね」


「ちょっと! 3年ぶりにあった女の子にそれは失礼なんじゃない?」


「ご、ごめん!」


「なーんて冗談! 確かに小学生の頃のあたしって男の子っぽかったしね。 アッキーが気づかないのはしょうがないよ」


「だ、だよね!?」


「でも~あたしの乙女心的には気づいてほしかったな~」


「うぐっ!? ご、ごめん!」


「アハハッ大丈夫だよ。 さて、積もる話もたくさんあるだろうし、早く行こうよ!」


「え、どこに?」


「どこって……アッキーのおじいちゃん家だよ!!」


 なー姉ぇは俺の手を引いて歩き始める。


 女の子の柔らかい手の感触にドキドキしてしまった。


 そして、なー姉ぇの案内のもと、俺はおじいちゃん家についた。


 そこからはもう怒涛の展開だった。


 じいちゃん、ばあちゃんは3年ぶりに会った俺を大層可愛がってくれたし、いつの間にか豊川一家が家に上がっていた。


 そして、あれよあれよという間に夕飯の時間になり、気づいたら宴会が始まっていた。


 大人たちは酒を飲みながらどんちゃん騒ぎ。


 俺となー姉ぇは空白の3年間を埋めるために長い時間お話をした。


 宴会がお開きになったのは時計の針が12の数字を越した辺りだった。


 初日から予想外のことがあって疲れたけど、楽しかったなぁ。


 俺はそんなことを思いながら布団に入って眠ったのだった。

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