ホワイトボード
先輩には彼女がいる。
いや、婚約者と言った方が正しいだろうか。
3歳上の大学生、先輩の会社でバイトをしている女の人だ。
先輩の会社というのは正しくは先輩のお父さんの会社。
先輩のお父さんは某大手化粧品メーカーの社長であり、先輩は勿論後継ぎ息子である。
しかし先輩は全くと言っていいほど彼女の話をしない。
噂によれば、先輩がその彼女のことをとても好きでアプローチしまくったとか何とか。
先輩は携帯を触っている時、たまにとても幸せそうな、見たこともないような顔をする。
あ、彼女にメッセージ打っているんだな、とひと目でわかる。
私は何をしているのだろうか、どう考えても先輩は私のことをただの後輩、いや妹にしか思っていない。
そんな事はわかっているのに、先輩をかっこいいと騒ぎ立てる他の女の子より近い存在でいられることがうれしい自分に腹が立つ。
「…彼氏欲しいなあ」
呟いてみる。
「ふふっ、誰か仲良い男いないの?」
ちくん。
胸に少し針が刺さる。
「最近放課後一緒に勉強してる人は仲良いかなあ…」
少しでも嫉妬してほしくて、昨日かっこいいと評判の隣の席の男の子に、勉強教えて欲しい、と声を掛けた。
どうでもいい男の子になら声をかける事はこんなにも簡単なのに。
「え、二人でやってるん?…うわあ」
少し眉を潜める。
こういう反応は少し嬉しい。
と、その時目の前に座っていた、同じ制服を着た男子高校生が、
今話題にしていた男の子、
「え、」
バチっと目が合う。
「お、はよ…」
少し言葉が詰まる。
公人くんは少し照れ臭そうにおはよう、と笑った。
ああ、やってしまった、自分のことを好きだと確実に思われた、公人くんに。
先輩の顔を直接見れなくて、窓に写った先輩の顔をチラッと見る、
すると先輩は、とても優しい顔で微笑んでいた。
どういう事…?
何で微笑むの?
思わず目頭が熱くなった。
違う、私が好きなのは、先輩です、
そう口に出してしまいそうになった。
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