お稽古
1
ここは神界に設置された稽古場。
迦琉が剣を片手に剣術の練習をしている。
正面には命流が立ち、剣を持って指導にあたっている。
「迦琉、剣の基本はすでに教えた通りだが、禿ぺらを相手に見せた剣捌きは悪くなかったぞ。」
「まあね。」迦琉は胸を張って言った。
「しかし、まだ力の乗せ方が足りん。」
「力の乗せ方?」
「そうだ。今日はそれを教えよう。」
「よろしくね!」
迦琉の楽しそうな様子を見て、命流の指導に熱が入った。
「先に、力の溜め方から。見ていろ。」
命流が剣を両手で強く握り、剣を真上に向けたまま、股を大きく開いて腰を落とす。
「こうして、剣と地面に意識を集中し、力を高めるのだ。」
迦琉の動きが止まった。
「あの…。」
「どうした?やってみろ。」
「いや、あの、そういうガニ股とかは…。もう少し、女性らしいポーズになりませんか…。」
「気にすることではない。」
「いや、あの…。そう…、雪柊も呼ぼうよ!。」
「構わんが…。」
2
剣の稽古をする迦琉とそれを指導する命琉。
程なくして雪柊が二人の前にやってきた。
「ああ、そういうのなら。」
雪柊がすらりと剣を取る。
「昔少し習っただけだけど…こうかしら。」
雪柊は、剣を真上に向け、足を少しだけ交差させて直立している。
「そうかぁ。」
「まあ、それでもいいだろう。」
迦琉が雪柊を真似てポーズをとる。
「微妙に違…。」
命流の声は迦琉には聞こえなかったのかもしれない。
「えーい、私が決める!」
そう言って迦琉が取った型は、剣を逆手に持って上体を閉じ、背を向けた姿であった。
「それは駄目だ。」
「なんで?」
「力が真直ぐ伝わらないし、道に反する。」
「うーん。だったら…。」
次に迦琉が取ったのは、低く構えた居合の型であった。
「それは次の段階で教えるから。」
横で見ていた雪柊が言った。
「迦琉、それで剣と反対の手を後ろに伸ばしてみて。」
「こうかなあ?」
雪柊が迦琉の周辺に鏡を出現させる。
「いいかも。」
命琉は迦琉と雪柊を他所目にして腰を下ろしている。
「まあ、軽い武器ならそれでいいだろう。」
「私の剣は軽いよ。それにこっちの方が狙いが定めやすい気がする。」
「ほお。立ち姿勢からその型にうまく繋げ。」
迦琉は、その後も鏡の前でポーズを微妙に調整していたが、やがて固まったようだった。
「完成。」
迦琉がそのままポーズを決めて得意の笑顔で言った。
「鳥の型。」
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