第8話

 女の太腿を挟むように男が跨り腰骨辺りに手が置かれ、動く。

「泥鰌はね――何も食べずに水だけを飲まされ、体内の泥や汚物を出し切るんだよ」



 ――水



 それを聞くと女の瞼は頑なに動くのを、拒否する。

 男の口から感嘆の吐息が、漏れる。

「……ああ……綺麗だ。なんて……なんて美しくて刹那くて――凶暴なんだろう」

 女は凶暴という言葉を――言葉の意味を、考える。



 男は優しかった

 男は、柔らかかった――あの瞬間まで



「……君と一つになりたい」



 男が自分に気付くあの瞬間、までは



 女は微動だに、しない。

「――もうすぐ……もう、すぐだよ」

 男の指が女の躯の中へ滑り込もうと、している。

 女はもう一度、考える。



 ――あの瞬間

 男が私の中に入ることが適わなかった、あのときから



「そう――泥鰌だったね。彼等は水を飲み、汚物を全て吐き出し浄化され、その時をただ待つんだ。ただ……待つのみなんだよ」

 男の指が女の中心を探り、止まる。

「ただ――目に釘を打ち込まれ、捌かれ食べられるその時を……」



 捌かれ、食べられる

 水を飲まされ浄化し――



 女は瞼をそっと、開いた。

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