第7話

 男は丁度女の太腿辺りに跨り腰骨を、触り始める。

「泥鰌はね、捕まえてきたら水槽に入れられるんだ。そこで何も食べずに水だけを飲まされ、体内の泥や汚物を出し切るんだよ」

 男の手が躯の線をなぞるようにゆっくりと、動く。

 女の瞼は、動かない。

「浄化されたそれは……美しい。そう……今の、君のように」

 男の口から感嘆の吐息が、漏れる。

「……ああ……綺麗だ。なんて……なんて美しくて刹那くて――凶暴なんだろう」

 男の腰が下方へ動きなまめく指が太腿を、撫でる。

 女は微動だに、しない。

「君が欲しい……君と一つになりたい。もうすぐ……もう、すぐだよ」

 男の手が女の躯の内側へ滑り込もうとして、いる。

「そう――泥鰌だったね。彼等は水を飲み、汚物を全て吐き出し浄化され、その時をただ待つんだ。ただ……待つのみなんだよ」

 男の手が、止まる。

「ただ――目に釘を打ち込まれ、捌かれ食べられるその時を……」

 女の瞼がゆっくりと、開いた。


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