第3話
「出会った頃より痩せたこの躯……」
男は女の腹に手を、中てた。
「この皮膚の感触――体温」
男は目を、閉じる。
「ああ……この一つひとつが。全てが君を形成している……なんて素晴らしいんだろう」
女は黙ったまま天井を、見ている。
「ねえ、君とはいろんな話をしたよね」
男は女から身を離し傍らで、膝を抱えて座った。
「僕が一番興味深かったのはね、人は死んだらどうなるのか、という見解の話だよ」
男も天井を、見た。
「人は死んだら土に還るのか、星になるのか、はたまた――全てが灰となり不燃物の屑と成り果てるのか……」
長い沈黙が部屋を、漂う。
「君は言ったんだ」
男の視線が天井から女の肩口へと、下りる。
「君は――無になる、と」
女からの返事は、ない。
「そこには何もない、と。生き残っている者の概念のみなのだ、と。死者は無なのだ、と――」
男は抱えた膝を更にきつく、抱き寄せた。
「僕は感動したよ。それから考えたんだ。君と一つになる――ということについて」
女の目が微かに、開いた。
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