第12話 地下通路。

「いったぁー……。ここ、どこ……」


 背の高さより高い床からそのまま落ちた感じ。ここは地下室?


 怪我は……。ちょっとしてるっぽい。


 そう自身の身体を確認したセリーヌ。


 足の指の骨が折れてるのかちょっと変な風に曲がってる。ひじもひどく擦り剥いてる、か。


 キュアはセリーヌのマナを使って働く。そう念じもしないのに自動で怪我を治してくれるわけではないのだから。


 万能じゃ、ないのよね。


 そう零して掌を患部に当てる。


 金色に光る粒子が溢れて出て、傷口に吸い込まれるように入っていく。


「ありがとね。キュア」


(セリーヌ、好き)


(セリーヌ、大丈夫?)


 キュア達のささやきが聞こえる。


 そうこうするうちに傷は癒え、骨折も治ったようで。セリーヌは立ち上がって辺りを改めて確認した。


 ぐるっと見渡すとどうやらここは地下通路のようで、道は前後に続いている。


「さて。どっちにいくのが正解かな?」


 そう独り言を言いつつ目の前、その時に向いていた方向にとりあえず歩いてみることにした。


 崩れた天井に登るには足場が無い。せめて椅子なり机なりそういうものを探さなければ。そう思って。




 地下室はぼんやりと薄明かりがどこからとも無くさしていた。


 天井に隙間がある、わけでもない。どちらかと言ったら壁全体がうっすらとした光を生んでいる。そんな気もする。


 不思議な空間だった。



 しばらく歩いているうちに、目の前に扉が見えた。そこには……。


「古代語?」


 扉の壁に張り巡らされた沢山の文字。それはいにしえの文明のものだった。


 セリーヌも若干習った事はあるのだけれど、全て習熟しているわけでも無くて。


 わかるところだけでも読んでみる。


「勇者の盾、ここに眠る。って、どういう事だろう……」


 扉に触れてみるが、押しても引いても動かない。


「この扉の先に何かあるらしいっていうのはわかるけど、これじゃどうしようもないかな……」


 そう、諦めかけた頃、だった。


 扉の前にあった灯篭の頭についていた丸い石に何気なく触った時。


 それまでとは違った変化がおきた。


 その丸い石がぼんやりと光り、それはまるでセリーヌのマナを吸うように。手のひらから力がそこに吸い込まれるようなそんな気持ちの悪さを感じて。


 急激にマナを吸われ、貧血のようにめまいに襲われ。


 セリーヌはその場に蹲み込んだ。

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