My Guitar History #5(1989-93)

僕のギターヒストリー、第5話です。


音楽活動の再開は、実に意外なかたちでやって来ました。


僕はロックだけでなく結構ジャズも好きな人で、10代の頃からインストもの、ボーカルもの、ともによく聴いていました。


ジャズというのは聴いている分にはいいのですが、演奏するのはハンパなく難しい音楽です。


ロックが凡才にもできる音楽だとするなら、ジャズは天才でなくては演奏不可能な音楽と言っていいでしょう。


ギターを例にとるなら、ジャズギターの最高峰、ウェス・モンゴメリーの演奏とか聴いてしまったら(特にリバーサイド時代の「フル・ハウス」とか)「コピーなんか絶対ムリ!」って思いますよね。


僕も何度か挑戦したものの、結局まともなジャズギターはマスター出来ませんでした。


才能がないのですから、致し方ありませんよね。


でも、僕はロックボーカルを何年かやっていたこともあり、ジャズでも歌ならなんとかやれるんじゃないかとは思っていました。(今思うと相当甘い考え方ですが)


そんな31歳、1989年の春、たまたまあるジャズボーカルスクールの広告を雑誌で見つけて、「仕事の息抜きにいっちょうやってみるか!」と思い立ったのです。


プロのピアニスト兼シンガーの先生について4年半ほどボーカルを習い、半年に一度くらいのペースで「発表会」という名の生徒合同ライブに出演していました。


僕はフランク・シナトラとかディーン・マーチンあたりのよく知られた男性シンガーを意識して、レパートリーを選んでいました。


そしてその縁で、じきに歌以外のことにも手を染めるようになりました。


それはなんと「ベース」でした。


スクールの経営者が、大学生の頃部活でスイングジャズを演っていたというオジさん(パートはアルトサックス)で、彼に「◯◯さん(私の本名)、ギター弾けるんでしょ? 今度作ったジャズバンドにベーシストがいないから、ぜひやってくださいよ〜」とかおだてられ、ついその気になり引き受けてしまいました(苦笑)。


ベースは持っていなかったので、大枚をはたいて購入しました。それもエレキベースでなく本格的なアップライトベース(!)。


「スタッドB」という名前で、正確な金額は覚えていませんがたしか10万円以上しました。もちろん、それまでに買った楽器で一番高価なやつでした。


そのうち練習用にということで、弾きやすいギターサイズのミニベースも買いました。こちらは韓国製のサミックで1万円台と超廉価版。


めでたくメンバーが揃って始動となったその素人ジャズバンドではおもにグレン・ミラーのようなスイングジャズを演奏、2回くらいは発表会に出た記憶があります。


ベース、特にジャズのベースはやってみると、ギターほどではないにせよ、とても難しいです。


フォービートのグルーヴを出すのに、えらく苦心したものです。


僕が今もときどき自分主宰のブルースジャムセッションで(ベーシストが足りない時に)ベースも弾くのは、そういうバックグラウンドがあってのことなのです。


こんな話をすると、僕のペースプレイを聴いたことのある方々からは「ン?キャリアのわりには全然上達してないじゃないか?」というツッコミを受けそうです(笑)。


ま、ペースはあくまでも余技としてやっているということで、お目こぼしいただきたいですね。


そんな感じで、僕は89年から93年まで、ジャズボーカルとベースというツーウェイで、音楽活動に励んでいました。


スペックだけ聞くと、非常に華麗な経歴ですが、実態はど素人レベルのまま、自己満足に終始していた時代でした。(続く)

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