ギター
「オレにとって、
女はえてしてオレを裏切るが、ギターは裏切らないからな」
この発言、有名なミュージシャン、例えばキース・リチャーズあたりの名言かと読者諸兄姉は思われたかもしれないが、あいにく申し訳ない、私自身の言葉である(苦笑)。
そのくらい、ギターは私の人生で大きな位置を占めている。
私の結婚歴は11年弱に過ぎなかったが、ギター歴は約50年、半世紀の長きにおよぶからだ。
しかし、生来「努力」という言葉が大嫌いな私は、このギターに関しても、ほとんど巧くなろうとする努力をして来なかった。
私なりのロジックでは、
「音楽は文字通り、楽しいもの。
そういう好きなものを習得するために、血の滲むような苦しい思いをするなんて、おかしいじゃないか。
ギターを努めて練習するなんて、馬鹿げている。
自然にやってりゃいいじゃないか」
そういうふうになっていたのだ。
今も、その根本精神は変わらない。
根を詰めて練習をするなんてことは、私においては絶対ありえないことなのだ。
だがその結果、私のギターの腕前は十年一日どころか、五十年一日、ちっとも上達しないのだった。
まぁ性分だから、出来ないものは仕方がない、そう考えるようにしている。
しかしながら、言い訳をするつもりはないのだが、20年前の私のプレイを思い返せば、今のプレイは確実にマシになっていると思う。
少なくともリズムを外したり、変な音を選んだりすることはない。
と言っても、富士山の三合目ぐらいにいたのが五合目ぐらいに上がって来たというレベルで、まだまだたっぷり五合分が残っているのだけどね。
わずかとはいえ上達した理由を考えてみるに、やはり「場数」の問題だと思う。
つまり、人前でギターを演奏する機会を、積極的に持つようにしたこと、これが大きいのだ。
楽器を家でひとりリラックスして弾いている状態は、そのひとの真の実力を示しているとはいえない。
やはり大勢の、それも自分より明らかに実力のある人々の前で緊張して弾いている状態こそが、彼の本領を示しているのだ。
私はこの20年間、セッションやライブに臆せずに参加することで、鈍亀の歩みながらもギターの腕を上げられたのだと思っている。
それにしてもギター弾きという人種は、総じて弾くこと以上にギターを集めることに熱中するもののようである。
同じギター弾きたちと交友を重ねていて、そのことを切に感じる。
1本手に入れると、また1本。
2本になっても決して満足することなく、もう1本。
気がつくと、軽く2桁に到達していたりする。
気に入ったギターは限度なく手に入れたいと欲するさまは、まるで何十人もの愛妾をかかえながらなおも麗しい女を探し求めようとする、
これはピアノやドラムスのような大型楽器ではありえないことだろう。
適度にコンパクトで軽量な、ギターという楽器ならではのことである。
実は私もご多分に漏れず、この20年でエレクトリック・ギターが4倍に増えて、現在12本になっている。
収納場所の問題もあり、さすがにこのあたりで打ち止めにしようかとは考えているのだが、本音を言うとあと1、2本はあってもいいかなと思っている(笑)。
私はエレクトリック・ギターの2大メーカー、ギブソンとフェンダーのうちではギブソンのほうが好みなので、あと2本入手出来るとなれば、ソリッドタイプのSGモデルとセミアコースティックのES335モデルを選ぶつもりである。
これでさすがに、私のコレクションも完成ということになるだろう。
現在12本あるギターは、寵愛度においては個体差はあるものの、どれも私の愛情の対象である。
すべてのギターに手入れをし、順番にセッションやライブに持って行き、奏でるようにしている。
売ったり、ひとに譲ったりしようとは、まったく思わない。
惚れ込んで手に入れた以上、すべて私が最後まで面倒を見てやりたいと思っている。
私は自分の側から女性をふったことがないように、ギターにも自分から別れを告げたくないのだ。
私が亡くなった後は、棺桶に一番お気に入りの1本を入れてもらうつもりだ。
残りは、親しい友人たちに形見分けしてもらう。
そうやって
《付記》
2000年までの私とギターとの付き合いについては、過去に「ギター偏愛記」という一文(上・下)にまとめてある。
興味のおありのかたは、こちらもぜひご覧いただきたい。
http://www.macolon.net/guitar1.htm
http://www.macolon.net/guitar2.htm
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