第4話 リヴァプールさんが無双しました

リヴァプールさんが夜勤で戦争モードに参加できない。

それは、うちの騎士団ゴールドラッシュにおいて結構きつい。

わずか3ヶ月のプレイ歴で、3年頑張った俺と同じパーティーランクになっている。

もうすっかり頼りになる存在であり、主力メンバーの一人になっているからだ。


戦争モード対戦中。

俺はブロッカーなので、守りに徹していればいい。

相手の攻撃をひたすら耐えて壁に徹していればいい。

割と暇で楽だが、花形ではない。しかし大事な役職である。


ぼーっと戦争モードをプレイしながら考える事は、リヴァプールさんの仕事の事だ。


夜勤の仕事……。

考えられるのは、病院の看護師か。

リヴァプールさんは、女性プレーヤーであり、看護師。ナース。

それで20代中盤くらい。俺と歳が近くて……。

旅行が趣味でイギリスが大好き。それでリヴァプールが大好き。

きっと美人なんだろう。モデル級でさ。

旅行先のリヴァプールで撮った自撮りの写真やお洒落なカフェのスイーツをインスタにアップしていて、そのフォロワーからいいね!を沢山貰えるインフルエンサー。


……いや、待て。

それは、ただの俺の願望じゃないか。

それはリヴァプールさんの理想像だ。


そうじゃない。こんな騎士団のゲームをしているんだ。

きっともっと違うタイプだ。

夜勤……。夜勤……。


そうだ。夜勤のある仕事といえば介護職だ。

きっとお年寄りの為に尽くしている心の優しい女性なんだ。

年齢はおそらく30代前半。俺よりも少し年上。

お年寄りに尽くして熱心に仕事をするあまり、自分の婚期を逃してしまった。

少し焦っている。良い人なのに独身。

だから趣味がゲームなんだ。

リヴァプールなのは、友達との女子会で彼氏と旅行で行ったリヴァプールが良かったという内容の会話があって、それが羨ましくて心のどこかに残っていたからリヴァプールになったんだ。


……いや、違う。そうじゃない。

やっぱり女性プレーヤーなのは、俺の願望じゃないか。

それもリヴァプールさんの理想像だ。


現実は違う。きっと男だ。

そう。男の中の男。漢って感じの男なんだ。

リヴァプールさんは、きっと汗臭い感じの男なんだ。

夜勤の仕事っていうのは、夜間工事をする工事現場の男だ。


おそらく年齢は40代後半。

ビートルズが大好きで、その出身地であるリヴァプールにしたんだ。

本当はビートルズにしようかと思ったけど、少し捻りを入れたんだ。

うん。きっとそうに違いない。

リヴァプールさんは、工事現場のおっさんだ。

現実なんてそんなものだよ。きっと。


そんな事を考えながらぼーっとブロッカーの仕事を全うした。

そして負けた。


敗因は俺がぼーっとしすぎていたからだ。

いつもならもっと上手くやれたはずだ。


【お疲れさまでした。すみません。ぼーっとしてて負けてしまいました】

【ドンマイです。疲れてる時は、誰にでもありますよ】


ノンシュガーさんは、優しく励ましてくれた。

やってしまったな。戦争モードで皆に迷惑をかけてしまった。

明日はもっと頑張ろう。


翌日の事だった。


【昨日は戦争出れなくてすみませんでした。今日はアタッカーで頑張ります。よろしくお願いします】


今までオールラウンダーでやってきたリヴァプールさんが、アタッカー?

大丈夫なんだろうか。

アタッカーはパセリさんに任せてあるけど……。

アタッカーが増えて困る事はない。

どれ、リヴァプールさんのアタッカー。

お手並み拝見といこうか。


戦争モードの時間になった。


リヴァプールさんは、開始早々に一気に突っ込んでいった。

物凄い怒涛の攻撃で、一気に敵をねじ伏せていく。

初っ端から物凄い勢いだ。

相手のブロッカーがしっかりと守りを固める時間すら与えず、リヴァプールさんの猛攻が続いていく。

相手のブロッカーが立ちふさがる。

しかしリヴァプールさんは、そんな事お構いなしにガンガン突っ込んでいく。


「す、すげぇ……」


俺は思わず声を出してしまった。

リヴァプールさん。ここまでの火力があったのか。

リヴァプールさんの後ろからパセリさんも続いて追撃していく。

ゴールドラッシュの二人のアタッカーが、一気に攻め込んで敵陣で暴れまくる。


楽勝だった。

圧倒的な力でごり押して勝利した。


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