第3話 リヴァプールさんがSランクになりました
白と黒の戦争では、自分のパーティーランクが仲間内に表示される。
ランクも上がればお知らせに表示される。
それは突然やってきた。
リヴァプールさんがSランクになりました。
そんなお知らせが俺のスマホに表示されたのだ。
「う、嘘だろう!?」
俺はスマホの画面を見ながら思わず声をあげてしまった。
Sランク……。
3年やってきた俺と同じランクじゃないか。
リヴァプールさんは、確かに異常なほどレアなキャラをガチャで当てまくっている。
次から次に出てくる強力なキャラクターをどんどん引き当てて育てていき、自分のパーティーに入れてきていた。
リヴァプールさんが入団してから3ヶ月目の事だった。
しかしリヴァプールさんの不思議なところは、チャットをほとんどしないことだ。
【よろしくお願いします。】
【オールラウンダーでいきます。】
【おつかれさまでした。】
これくらいしか喋らない。
他の人はガチャで爆死したぜとかあのキャラ欲しいとか言ってチャットでワイワイ盛り上がっているけど、リヴァプールさんだけは何も言わない。
さりげなく強いキャラを引き当てて、黙々と育成して、いつの間にか強くなっている。
リヴァプールさん。
物凄い引きが強いのか、物凄い金額の課金をしているのか。
それが分からない。
でもチャットでそんな事を聞く勇気が出ない。
だってリヴァプールさん無口だし、ずっと敬語だから話しかけにくいんだもん。
俺はリヴァプールさんが、俺と同じパーティーランクSランクになってからというもの、リヴァプールさんの存在が気になって仕方なかった。
【よろしくお願いします。】
【オールラウンダーでいきます。】
【おつかれさまでした。】
またか。またそれだけしか喋らないのか。
リヴァプールさん。チャットで話そうよ。
あんたの事が気になって仕方ない俺に、あんたの情報を俺に教えてくれ。
でも俺からは、なんか聞けないんだ。
だってネットゲームで個人情報を聞くのってマナー違反だろう?
頼む。自分から色々喋ってくれ。語ってくれ。
俺に情報をくれよ。
情報を貰えないなら、俺は自分であれこれ推測するしかない。
リヴァプールさん。
まずはハンドルネームから人となりを推測してみる。
ネットを使い、リヴァプールで検索をかけてみる。
リヴァプールとは、イギリス・イングランド北西部マージーサイド州の中心都市である。
都市の名前なのか。
イギリスの都市の名前をハンドルネームに使うなんて、なんかお洒落な人だな。
リヴァプールさん、リア充なのかな。
更に調べてみる。
世界的ロックバンド、ザ・ビートルズの出身地である。
「ビートルズの出身地なのか。洋楽には詳しくない俺だけど、ビートルズなら俺でも分かるぞ」
リヴァプールさんは、もしかするとビートルズが好きなのだろうか。
ビートルズ好きという事は、結構歳取った人なんだろうか。
いや、ビートルズ好きイコールおっさんとは限らない。
音楽に精通している人なんだろうか。
リア充だろうか。
それとも単純にビートルズは関係なく、イギリスのリヴァプールが好きなのか。
もしかすると旅行好きでリヴァプールが好きなリア充の可能性もある。
くそう。分からん。考えても全く分からん。答えが出ない。
リヴァプールって何なんだ。
リア充なんだろうか。
リア充感が凄くて、リア充っぽいイメージしか出てこないよ。
そんな悶々とした気持ちで日々を過ごしていた時、それは突然の事だった。
【明日は夜勤なので、夜の戦争に出れません。】
夜勤……。
そうか。リヴァプールさんは学生ではなく、働いてる社会人なのか。
嬉しい。ついに一つ、情報を手に入れたぞ。
【分かりました。仕事お疲れ様です。夜勤頑張ってください】
俺はチャットを返した。
苦節3ヶ月。
ついに俺は、リヴァプールさんの仕事で夜勤がある事を知った。
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