第53話 ドワーフ族

 遺跡調査から一週間ほど経過していた。その間依頼には行かず、長めの休みということにしていた。


 理由はいくつかあるが、一番の理由はアウラの調子が悪かったことだ。遺跡調査で魔力を使い過ぎてしまったせいで、いつものように戦う事が出来ていない。


 魔力ポーションというものを飲めばすぐに回復できるのだが、アウラは要らないと言っていた。

 それなりに高価なものだし、待てば回復することから余計なお金を使いたくなかったのかもしれない。


 どれくらいで回復できるのかわからないので長めに休みを取ることにした。実際は一日と少しで回復する事が出来た。体調も戻ったみたいでよかった。


 そのほかの理由としては、最近長い休みを取っていなかったという事だ。武器や防具をしっかりと調整したりと、色々とする事があったのだ。それに、アウラが一緒に住むことになったので揃えるものもあったのだ。


 十分に休息を取る事が出来た。そろそろ活動を再開しようとしていた時、俺たちはギルドに呼ばれた。


 メンテナンスを終えた防具に身を包みギルドへと向かった。

 ギルドに到着するとすぐにアメリアさんが出て来る。


「来てくれてありがとう。遺跡の調査やその他について話があるから付いてきて頂戴」


 言われるままアメリアさんに付いて行く。

 これまで一度も入ったことのない部屋に案内される。

 アメリアが扉をノックする。


「ギルド長、三人をお連れしました」


「入れ」


 中から女性の声が聞こえる。なんというか少女っぽい?


 扉を開け中に入る。ギルド長の部屋という事もあり結構大きい。

 そしてその中心には小柄な女性が立っている。


 見た目は成人しているとは思えない小柄な体型だ。それにアンバランスと言える大きな胸。なんというか……ロリ巨乳だ。

 目を引くのはそれだけではない。特徴的な赤茶色の髪だ。これはドワーフ族の象徴でもある。


 普通の人族よりも小柄で赤茶色の髪。間違いなくこの人はドワーフ族だろう。


「よく来たな。私がギルド長のソフィアだ。よろしく」


「こちらこそよろしくお願いします」


 慌てて挨拶をすると、ギルド長がニヤリと笑った。


「ドワーフ族を見るのは初めてか?」


「えっ……あ、はい」


 じろじろと見過ぎてしまったようだ。


「こんな体型でもちゃんとした大人だからな。お前たちよりも歳上だぞ」


 そう言って自慢げに胸をそらす。胸の主張が激しい。小柄のせいで余計に目立つ。


 ドワーフ族は人族よりも寿命が長い。もともと小柄な種族で、見た目が少女にしか見えなくても間違いなく俺たちよりも歳上だろう。年齢は見た目通りではない。下手をすれば国王と同じくらいかもしれない。


「ギルド長、話を進めましょう」


 アメリアさんがいつの間にか俺たちが回収してきた剣を持っている。


「そうだな。簡潔に言うと遺跡を調査しても新たな事は何もわからなかった」


 小さい遺跡だし、しょうがないだろう。


「それとお前たちが持って帰ってきた剣についてだが、かなり大昔に作られたもののようだ。正確にいつ作られたはわからなかった」


 目の前に置かれた剣に視線を落とす。


「ミスリルやオリハルコンと言った特殊な鉱石を使って作られている事はわかった」


 ミスリルやオリハルコンといえばファンタジーを代表する鉱石だ。かなり希少で高い強度を持つ事で有名だ。


「この剣を鍛え直したいそうだな?」


「はい」


「その辺の鍛治士には無理だろうな」


「そうですよね……」


「だが、心当たりはある」


「本当ですか!?」


 ニヤリと笑う。


「私の種族がなんだか忘れたか?」


「あっ……」


 ドワーフ族と言えば鍛治や建築が得意な種族だ。鍛治に関して言えば、ほかの種族よりも飛びゆけた才能を持つものが多い。

 そんなドワーフ族の中にならこの剣を鍛え直す事ができる人がいるかもしれない。


「私の妹が鍛治士をしている」


「妹ですか?」


「我が妹ながら、あの子は間違いなく天才だ。きっとこの剣を鍛え直す事もできるだろう」


 そう言う事なら是非お願いしたい。


「どこに行けば会えますか?」


「そうだなぁ、会うならドワーフの村に行くしかないな」


 ドワーフの村か……ルーデルス王国からそれなりの距離がある。馬車だっだら一週間以上かかってしまうだろう。その間依頼をこなすことは出来ないだろう。


 それでも……加護のついた不思議な剣を使ってみたいと言う欲求が抑えきれない。おまけに遺跡の奥に大切にしまわれていたんだ。興味を惹かれない方がおかしい。

 期待を込めてエリンたちの方を見る。


「そんな顔されたらダメって言えないよ」


 呆れたようなようにため息をつく。


「私はもともとドワーフの村に興味があったから行ってみたいわ」


 パーティメンバーの同意も得られた。


「ドワーフの村に行ってみようと思います」 


「そうか。向こうに着いたら私の名前を出すと良い。そうすれば簡単に妹を見つけられるだろう」


「ありがとうございます」


 ドワーフの村……よく考えたらこの国に来てはじめての遠出かもしれない。

 ファンタジーを代表する種族の一つの村だ。ワクワクが止まらない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る