第54話 ドワーフの村へ
俺たちは準備を終え、ドワーフの村に向かっていた。
馬車でいくとだいたい一週間ほどかかる。
流石に一週間も馬車で過ごすのは嫌だと思っていたが、アメリアさんからありがたい情報を得た。
馬車よりも竜車に乗って行くと、早く着くと教えてもらった。
竜車は地竜の中でも騎竜と呼ばれる小型種によって引かれるものだ。
馬車よりも高額だが、馬とは比べものにならないほど速く、おまけに丈夫であるため休息の回数が少なくて済む。
そのためかなり短時間で目的地にたどり着く事ができる。
俺たち三人は竜車に揺られてドワーフの村を目指す。
だいたい四日ほどで到着すると言われていた。馬車だと一週間ほどかかることを考えると、竜車がいかに早いかがわかる。
外を見ればどんどん景色が変わって行く。行くけど……
「気持ち悪い……」
完全に酔った。乗り物酔いなんてしない方だと思っていたけど間違いだったみたいだ。
「大丈夫? 顔色悪いよ?」
エリンが心配そうにこちらを見て来る。俺の隣に移動して来ると、優しく背中をさすってくれる。
「やばいかも……」
スピード出ているため、馬車よりも揺れる事が原因の一つであるが、昨日の夜寝付けなかった事が一番の原因だろう。
寝れなかった原因は竜車に乗る事が楽しみすぎて寝れなかったのだ。
騎竜は小さいとは言え竜だ。興奮しない方がおかしい。ゴブリンやスライムもファンタジーを代表する魔物だが、竜はそれらの魔物とは一線を画す。
そんな竜を近くで見る事ができ、しかも竜車にも乗れるのだ。楽しみすぎて全然寝れなかった。遠足前の小学生みたいでとても恥ずかしい。
「ほら、辛いなら横になって」
「うっ、ありがとう」
エリンが俺の頭をそっと手を添えるとそのまま横に倒す。俺はそれに従って体を傾ける。
「ちょっと位置が悪いかな」
そう言ってもぞもぞと足を動かす。
「よし、これで大丈夫」
頭に柔らかい感触がある。上を見るとエリンの顔が近い。
下から見ると胸ってすごいんだな……
あれ? もしかしなくても、これって膝枕じゃないか?
「どう? 竜車は硬いからこの方がいいでしょ?」
「あぁ……」
エリンの匂いに包まれる。それだけで少しだけ体調が良くなった気がする。
エリンが優しく俺の頭を撫でる。
「気持ち悪いなら寝ちゃった方が楽だよ」
エリンの膝枕はとても嬉しいが、気持ち悪くで純粋に喜べないのが辛い。
「仕方ないわね」
アウラが魔法を使うと、体が風に包まれる。僅かに体が浮いているような気がする。馬車の揺れを感じなくなった。
「これで楽になると思うわよ」
「二人ともありがとう」
そう言って俺は目を閉じた。
◆◆◆◆
寝た事で体調はかなり良くなった。かなりの時間寝ていたようで気づけば外は夕方になっていた。
ずっとエリンの膝で寝てしまった。
適当な場所で野宿をして、また移動を開始する。
その間エリンが眠たくなった時、今度は俺の膝を貸すように言われた。
大袈裟かもしれないが、乗り物酔いしている時は、死にそうなほど気持ちが悪いのだ。
エリンの膝枕のおかげでだいぶ体調が良くなったので、俺の膝くらいいくらでも貸す。
エリンとは違って、柔らかくなく硬いので寝づらいのではないかと思ったが問題ないらしい。途中アウラも俺の膝を使って寝ていたが、意外と好評だった。
二人とも硬い枕が好きなのかもしれない。
そうこうしているうちにドワーフの村に到着した。
「やっと着いたね」
「ずっと乗っていたせいで体が痛いな」
「そうね。馬車じゃなくて竜車で本当に助かったわ」
竜車に揺られる事三日。ようやく到着した。
「馬車だったら、まだ着いていないもんね。流石に辛いよね」
「そうだな」
地球の乗り物のように乗り心地はあまり良くないため、長時間乗るのには適していない。
竜車から降りて体を伸ばす。バキバキっと骨がなり心地良い。
村の入り口のところに人が立っている。小柄だが、全身筋肉のような体をしている。腕は俺よりも太い。
「何か身分を証明するものを見せてくれ」
俺たちは冒険者カードを見せる。
「よし、問題ない。通っていいぞ」
「ありがとうございます」
「ようこそ我らが村へ。ゆっくりして行ってくれ」
そう言ってドワーフの男は、男臭い笑みを浮かべた。
そして俺たちはドワーフの村に足を踏み入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます