第52話 報告
遺跡の調査を終えて無事にルーデルス王国に戻ってくることができた。
遺跡がそもそも大きくなかった事と、アウラの魔法で一瞬でゴーレムをお倒すことが出来た。その結果、予想よりも早く遺跡の調査が終わり、夕方には帰って来れた。
その足でギルドに向かう。エリンはアウラを宿まで連れて行くので俺一人だけだ。
ギルドに入るとちょうどアメリアさんがいたのでその場で報告を終わらせる。
「お疲れ様。早かったわね」
「はい、思ったよりも遺跡が小さかったので、すぐに最深部にたどり着くことが出来ました」
「そうなのね。まずは無事に帰ってきてくれてよかったわ」
俺は別室に案内されて、そこで詳しいことを話すことになった。
「遺跡の中はどんな感じだったの?」
「その前に、これを」
そう言って布でぐるぐる巻きにした、錆びた剣を机の上に置く。
「これは?」
「遺跡の最深部にあった箱にあった物です」
布を取り外す。
「剣……かしら?」
「そうだと思います。なんで遺跡の奥にしまわれていたのかは分かりませんが……」
「少しだけ調べさせて貰っていいかしら」
「はい」
「ありがとう。預からせてもらうわ」
その後遺跡の内部について話した。
この剣を守るようにゴーレムが配置されていたことも話した。
「そう……情報提供ありがとう。助かったわ」
「いえ」
「貴方達が持って帰ってきた情報をもとに、詳しく遺跡の調査を開始するわ。と言っても、聞いた限りだとあまり更なる情報は期待できなさそうね」
小さい遺跡だったのだからしょうがないだろう。
「まぁ、この剣が一番の収穫かもしれないわね」
話し終えたところで聞きたいことを聞いてみる。
「あの……この剣を鍛え直す事はできますか? この剣には加護がついているみたいなので……」
「ほんと? だったら普通の剣ではなさそうね……一応心当たりがあるから少しだけ待っていてくれるかしら?」
「わかりました」
一通り今回の件を話し終えた俺は家へと戻った。
家に戻ってきたがまだエリンは帰ってきていないようだ。
しばらくして扉が開く音がする。玄関の方に向かうとそこにはエリンだけではなくアウラの姿もあった。
「どうしたんだ?」
エリンの手には大きめの鞄が握られている。
「私もこの家に住むことにしたわ」
「はい?」
驚いてエリンの方を見る。
「えっとね、アウラの住んでいた宿が取り壊すことになったみたいなの。住むところがなくなるから、どうせなら一緒に暮らした方が色々楽かなって……」
「そういうことか……部屋は余っているしいいんじゃないか?」
「よかった」
アウラなら拒む理由はない。エリンも了承しているみたいだしいいだろう。それにこの大きな家に二人だけというのは広すぎる。ルームシェアみたいなものだ。
「助かるわ。ありがとう」
エリンの持っている鞄はアウラの荷物だったのか。
アウラを連れて家の奥へと入って行った。
◆◆◆◆
エリン視点
私はアウラを連れて宿へと向かう。まだ回復していないようで歩くのが辛そうだ。
部屋に着くとアウラをベットに座らせる。
「大丈夫?」
「えぇ、ありがとう」
帰ろうと部屋を出ようとした時アウラに呼び止められる。
「エリン」
「なに?」
若干の沈黙の後アウラが口を開く。
「貴女はアレスのこと好きよね」
「えぇ!?」
予想外のことを言われて動揺する。
「その……私もなの……」
「はい?」
意外な一言に固まる。
「パーティを組んでから、彼と関わって彼が良い人だって事も分かったわ。それに……今日助けて貰ったじゃない? それが決め手になってしまったみたいなの……」
なんて言っていいのかわからず口をパクパクさせてしまう。
顔をほんのり赤くして恥ずかしそうにしている姿は、完全に乙女のそれだ。
「貴女も心当たりがあるんじゃない?」
「うっ……」
正直心当たりしかない。私も子供の頃にアレスに助けて貰ったことで、自分の恋心を自覚した。アウラも私と同じなのだろう。
「私はアレスを独占するつもりはないわ」
「それは私も……」
「そうなの? 意外だわ」
驚いたように目を丸くする。
「だってノエルちゃんもいるし……」
「ノエルちゃん?」
「私達の村にいる女の子で、妹みたいな存在なの」
ノエルちゃんもアレスのお嫁さんになりたいって言っていた。
アレスのことは大好きだけど、ノエルちゃんだって大切な妹だ。そんなノエルちゃんを悲しませたらアレスだって許さない。それにアレスなら、まとめて愛してくれると思うから大丈夫。二人でも三人でも……それ以上でも問題ないと思う。
「アウラの言いたい事はわかった。協力しようよ」
「いいの? 自分から話を持ち出しておいてあれだけど……」
「うん、二人で協力した方がアレスを落としやすくなるし、英雄色を好むっていうでしょう?」
アレスは間違いなくいずれ名を残す功績を挙げるに違いない。ずっと近くで見てきた私は断言できる。きっと英雄になるだろう。
「エリンって器が大きいのね……」
「そうかな?」
村には流石にいなかったけど、一夫多妻の家庭は意外とある。最近会った人なら国王様がそうだ。
「正妻の余裕なのかしらね。それじゃあ、改めてよろしくね」
そう言って私たちは握手を交わした。
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