第10話 バッサリ系幼馴染み
アルデさんに訓練をつけてもらってから、早くも二週間の時が流れていた。
毎日訓練を続けていれば、次第に訓練を楽にこなせるようになると思っていたが、少し楽になりかけたところでアルデさんが回数を多くするので一向に楽にならない。
村の中を何日も走り続けているので俺たち二人は少しだけ話題になっている。
小さい村だからすぐに話が広がるのだ。
走っていると少し遠くの方から声が聞こえる。
「おいおい、あいつらまた走ってるぞ。一体何が楽しくてあんなことやっているかわからねぇな」
「デルの言う通りだ」
「エリンもなんであんなやつと、なんで一緒にいるのかわからないな。俺たちと遊んだ方が楽しいに決まってる」
「そうだよな。しょうがないからエリンを誘ってやるか」
こっちに聞こえるようにわざと大きめの声で話しているな。
「おい、エリン、そんなやつと一緒にいるより俺たちと一緒に遊んだほうが楽しいぞ。そんな奴放っておいて、こっちに来いよ」
エリンが足を止めたので俺も合わせて止まった。
うわぁ、すごく嫌そうな顔をしている。面倒臭いなら無視すればいいのに……
俺たちが足を止めるとデルたちがこちらに来る。
デルは俺たちより一つ二つ年上だ。体格は横も縦も大きい。
後ろには仲間? を引き連れている。
「やっと俺たちと遊ぶ気になったのか」
「違うよ。いつも断ってるじゃん。私はアレスと一緒の方が楽しいから、デル君たちとは遊ばない」
バッサリいくな。
「なんでだよっ、俺が誘ってやってるんだぞ!」
これだけはっきり言われてよく食い下がれるな。ある意味感心するわ。
エリンが困っているし放っておくわけにもいかない。
「デル、エリンが困ってるだろ。それに俺たちは訓練の最中なんだ」
俺が声をかけるとデルが睨みつけてくる。
「うるせぇなっ」
すると馬鹿にしたような嫌らしい笑みをこちらに向けてくる。
「お前、エリンのことが好きなんだろ? そうなんだろ?」
なぜか勝ち誇ったようにデルが声を上げる。
小学生の頃こんな奴いたわ。「お前、〇〇のことが好きなんだろ?」って言って謎の牽制をしてくる奴。俺のことじゃないよ?
同じような奴はどの世界にもいるんだな。
「おい、どうなんだよ」
後ろの奴らもニヤニヤしている。
「エリンは大切な幼馴染みだからな。好きだよ」
「ひゅーひゅー」
「やっぱり好きなのかよっ」
冷やかすように周りが騒ぎ始める。
面倒臭いからこのまま放っておこうかな
そんなことを考えているとエリンが口を開いた。
「私もアレスのことが好きだよ?」
「なっ……」
「え?……」
すごいなエリン。一瞬で黙らせた。
まぁ、デルたちの勘違いだと思うが……
デルたちは恋愛的な意味で好きだと言っているが、おそらくエリンは家族として好きと言う意味だと思う。何か言おうとしているのか口をパクパクさせている。ちょっと面白い。
「訓練を再開しよ。ほら、行こう」
俺はエリンに手を引かれて走り始める。
三人はしばらくそこから動かなかった。
◆◆◆◆
あの時の一件からデルたちが絡んでくることは極端に減った。
俺たちは順調に訓練を続け、ようやく訓練を始めてから一ヶ月ほど経過した。
「そろそろ剣を使った訓練を始めていくぞ」
「「はい!」」
手渡されたのは木刀だ。
「二人の訓練用に俺が作った木刀だ。有り難く使えよ」
アルデさんが作ったのか。すごいな。
転生前に店で見たことあるやつよりも立派な気がする。
「まずは素振りからだ。俺の動きをよく見て真似するんだぞ」
「「はい!」」
「よーく見てろよ。はっ、はっ、はっ!」
アルデさんの動きにはキレがある。なんというか迫力があるのだ。
「お前たちもやってみろ」
「はっ、はっ、はっ!」
木刀でも振り続けているとかなり腕が疲れるな。一ヶ月間訓練したが、まだまだってことか。
俺たちはアルデさんの指導のもとで、日が暮れるまで木刀を振りつづけた。
手の皮がむけて痛い。帰る前に俺たち二人ともローナさんに手当てしてもらった。
今日の訓練の感覚を忘れないようにしよう。
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