第5話 加護について2
アルデさんが加護持ちであるといういい情報を、村長さんから手に入れることが出来た。
アルデさんに話を聞くために俺たちは、アルデさんの家を訪れた。
扉を叩くと野太い声が帰ってきた。
「待ってな! 今開ける」
扉が開き出てきた男は、服の上からでも分かるほど筋肉が隆起している。丸太ほどあるのではないかと思うほど太い腕だ。おまけに顔が怖い。
「おお! 坊主に嬢ちゃんよく来たな!」
そう言って俺たち二人の頭をガシガシと撫でつける。
完全に力加減を間違っている。エリンなんて頭ごとグラグラと揺れている。
「そうだ、これをやろう!」
そう言ってポケットの中に手を突っ込み何かを取り出す。
「ほら菓子だ。仲良く食べろよ」
俺はそのお菓子を受け取った。
アルデさんは顔は怖いが、大の子供好きなのだ。
村の中ですれ違うと、必ずと言っていいほどお菓子をくれる。子供たちにお菓子をあげるためにいつもポケットの中にお菓子入れて持ち歩いている。
なかなかのギャップだ。
別にお菓子を貰うために来たわけではない。早速本題に入ろう。
「アルデさんに聞きたいことがあって来ました」
「聞きたいこと?」
「加護のことについて調べてて、そうしたら村長さんがアルデさんのところに行けば何かわかるかもしれないって……」
「そうか。いいぞ、俺に答えることが出来ることならなんでも答えてやる」
「ありがとうございます!」
「立ち話もなんだし、家に入れ」
「失礼します!」
アルデさんの家には傭兵業で使う武器などが置いてある。
手入れをしていた最中だったのかもしれない。剣や砥石などが床に置いてある。
家の奥から一人の女性が出てくる。
「あら? 二人ともいらっしゃい」
「ローナさん、こんにちは。お邪魔します」
「ゆっくりしていってね」
そう言って微笑む。
ローナさんはアルデさんの奥さんで、美人さんだ。
そんなローナさんのお腹は大きくなっていて、動くのが大変そうだ。
もうすぐ子供が生まれるらしい。
「よかったら触ってみる?」
見すぎてしまった。失礼だったかもしれない。
「え、いいんですか?」
俺より先にエリンが聞き返す。俺と同じようにエリンもローナさんのお腹をじっと見つめていた。
「いいわよ」
「やった!」
エリンは小さくガッツポーズをして、ローナさんの近くへ駆け寄る。
恐る恐る手を伸ばしお腹へ触れる。
「わ! 動いた!」
エリンが興奮したような声を上げる。
「アレス君も触ってごらん」
「はい」
ゆっくりと手をローナさんのお腹に当てる。
妊婦さんのお腹に触らせて貰うのはこれが初めてだ。転生前も一度も触ったことはなかった。ものすごく緊張する。
手のひらを通して温かさが伝わってくる。僅かに動いた気がする。とても感動的だ。
「もうすぐ生まれるの、そうしたら仲良くしてくれる?」
「もちろんです!」
エリンはすぐさま答えた。
「ふふ、よろしくね」
子供好きのアデルさんはものすごく甘やかしそうだな。そんなことを考えていると、後ろからアルデさんに頭を撫でられる。
「俺からも頼むよ。うちの子をよろしくな」
「はい」
男臭い笑みを浮かべると、もう一度強く頭を撫でた。
「俺に聞きたいことがあるんだろ? 向こうで座って待っていてくれ。すぐに行く」
「わかりました」
アルデさんはローナさんに近づきそっと体を支える。
「あまり無理するな。一番大変な時期なんだから」
「これくらい平気よ。少しくらい動かないと体が鈍っちゃうわ」
アルデさんはローナを連れて家の奥へ向かった。
アルデさんは奥さんのことを気にかける素敵な旦那さんだな。
◆◆◆◆
しばらく待っているとアルデさんが戻ってきた。
「待たせたな。加護についてだったな」
「はい」
「まず基本的なことだが、加護は神から与えられるものだ。生まれた時から持っていることもあれば、後から与えられることもある。ここまでは知っているか?」
「はい、知っています」
「ちなみに俺は、生まれた時から加護を待っている」
「なんの加護なんですか?」
「武神の加護だ。恩恵は、簡単に言えば身体能力が上がる」
武神の加護……なんか、かっこいいな。
気になっていたことを聞いてみる。
「アルデさんは二つの加護を持った人に会ったことがありますか」
「あぁ、あるぞ」
「本当ですか!?」
「ここで傭兵として雇われる前、冒険者をしていた。高ランクの冒険者の中には二つ加護を持っている者もいた」
「……やっぱり強いですか?」
「……そうだな。やっぱり加護の影響は大きいからな」
この世界で加護はかなり重要な鍵になってくるのか。
「実はな、加護ってのは失うこともあるんだ」
「え?」
思わず聞き返す。そんなことを本には書いていなかった。
「そんなことをあるんですか?」
「あぁ、俺の知る限り一人だけだがな」
犯罪者でも加護を失わないのに一体何をしたら加護を失うことになるんだ?
アルデさんの言葉を待つ。
「昔、ある事件が起きたんだ」
そう言って話し始めた。
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