第4話 加護について
村長さんの家を訪れ、ブラックグリズリーについて調べ始めてからかなりの時間が経過している。
外を見れば、日が落ち始めている。お昼頃に来たことから考えるとかなりの時間だ。
魔物に関する本を読みあさっていたが、時間の割にブラックグリズリーについての情報は得られなかった。
本で調べ物をするとかなり時間がかかるのだ。インターネットが普及した現代なら、一瞬で調べることが出来るのだが、この世界にはそもそもインターネットなんて存在しないから無理な話だ。
あとは、子供の体ということが時間がかかってしまう原因なのかもしれない。
一つ一つの動きが小さくなってしまうし、色々なものが大きく見える。それに力も体力もない為、すぐに疲れてしまう
子供の体とはこんなにも不便なものだったのか……
とりあえず調べたことを箇条書きにしてまとめてみた。
•体長はおよそ2メートル
•雄より雌の方が大きい
•群れで行動しない
•雑食
•森に生息している
•目があまり良くない
•毛皮が厚く物理攻撃が通りづらい
こんなところだ。どの本を見ても似たような内容ばかりだった。
その中でも目が悪いというのは、なかなか良い情報だ。
ブラックグリズリーを見かけたら下手に動かず、去っていくのを静かに待つのが一番いい方法らしい。
まぁ、見つかってしまったら意味はないが……
暗くなる前に帰らないと母さんに怒られてしまう。
本当はもう少しブラックグリズリーについて調べたかったが、今日はここまでだな。
読んだ本を片付けて帰る準備をする。
「帰るのかい?」
村長さんが声をかけて来た。
「はい、あまり遅くなると母さんに怒られるので……」
「たしかに、それは大変だ」
そう言って微笑んだ。
「あの、明日も来ても良いですか?」
「勿論良いよ、待っているからいつでもおいで」
「ありがとうございます!」
村長さんが優しくてよかった。みんなに慕われるわけだ。
片付けを終え家を出る。村長さんは家の外まで見送りに来てくれた。
「気をつけて帰るんだよ」
「はい!」
自宅に向けて歩き出す。少し歩いたところで振り返ると、まだ玄関のところで見ていてくれている。村長さんが手を振っているので、大きく振り返した。
夕食の時間に遅れないように急がないと。
◆◆◆◆
昨日に引き続き今日も、村長さんの家を訪れていた。
ブラックグリズリーについて少し調べてみたが、新たな収穫は得られなかった。
次だ次。俺にはあまり時間がないのだ。
次は魔法について調べようと思っていたのだが、ちょうど加護についての本が目に入ったので、先に加護について調べることにした。
加護は神から与えられるもので、全ての人が持っているわけではないらしい。
意外だったのは、生まれつき加護を持っている者もいれば、途中から加護を与えられる者もいるということだ。
「いっぱい頑張れば、たくさん加護をもらえるってことだよね!」
エリンの考えは間違っているとはいえないと思うがどうなのだろうか?
「うーん、それは難しいと思うよ」
俺たちの話を聞いていたのか、村長さんが答えてくれた。
「そうなんですか?」
「加護は神様から与えて貰うものだからね、何をすれば加護をもらえるかは、私たちにはわからないんだよ」
「加護は一人に一つだけですか?」
「いや、中には二つの加護を持っている人もいるけど滅多に存在しないよ。私も人生で一度も会ったことがないしね」
加護にも様々な種類がある。「武神の加護」や「慈愛神の加護」、「炎神の加護」、「水神の加護」などだ。
それぞれの加護には特有の恩恵がある。例えば、「炎神の加護」なら炎属性の魔法の威力が上がる。「水神の加護」ならば、水属性の魔法の威力が上がるといった感じだ。
そのため、加護を持っているものと、加護を持っていないものが戦えば、加護を持っているもののほうが勝つ確率がかなり高い。
俺に加護があるか分からない。加護持ちとは戦いを避けた方がいいな……
だが厄介なことに、他人の加護は感じ取ることが出来ないため、誰が加護を得ているかは分からないのだ。
例外があるとすれば、神に仕える高位の聖職者ならば、他の人の加護を感じ取ることが出来るそうだ。
加護の有無がわからなかったらどうやって避ければいいんだよ! 聖職者になろうかなっ
実際には、加護についてわかっていることは少ない。
加護が与えられる人に統一性はない。善人だけが与えられるのではなく、犯罪者が加護を持っていることもあるらしい。加護を持っているものは、総じて戦闘力が高いため捕まえるのに苦労するのだ。
加護を後から与えられたものと同じことをしたとしても、加護が得られるわけではないという記述もあった。
この世界の人たちでも明らかに出来ていないことが、転生者の俺が分かるわけがない。
さらに困ったことがあるとすれば、「勇者の加護」というものについてはどこにも書かれていない。
たしか作品の中では、主人公が「勇者の加護」を持っていたことから、勇者と認められたはずだったが……
もしかして俺、主人公ではないのか!?
いや、楽観的な考えはやめよう。加護が無いこと以外、ほとんど作品の主人公と同じなのだ。
加護なしとか余計にハードモードじゃねーかっ!
そもそも、ここに書いてあることが全てでは無い。書かれていないだけで存在する可能性だって十分にある。
考え事をしていると、村長さんに話しかけられる。
「加護のことが知りたいのなら、アルデさんのところに行くと良い」
「アルデさんですか?」
アルデさんはたしか村の傭兵だ。
「彼は加護を持っているんだよ」
「そうなんですか!?」
まさかこんなに近くに加護持ちがいるだなんて……
「彼はもともと冒険者だからね。本に書かれていないことも知っているかもしれない」
そうと分かれば早速アデルさんのもとへ向かおう
善は急げだ。今すぐ行こう。
村長さんにお礼を言ってアデルさんの家へと向かった。
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