第425話 処刑執行! その2

「……は?」


「ぇ……」


「っ!?」


「何が……」


 ガクッと項垂れるようにして熾天使共の声が言葉の途中で不自然に途切れて黙り込み、静寂が舞い降りた荒野にクズ勇者共の困惑する声が鳴り響く。


「バルトロ? パウロ、ヨハン、フィリ!

 ど、どうしたのですか!? 返事をしてください!!」


 五大熾天……堕天して私の軍門に降ったペトロ以外の四柱の熾天使共がもう盲信していると言っても良い主人あるクソ女神が呼び掛けるけど……それに応える者は誰もいない!

 まっ! 当然だけど!! 何せ……


「ふふっ、無駄。

 もう死んでる」


「「「「っ!!」」」」


 死んでるから、盲信する主人から呼び掛けであっても応えない! 応えられない!!

 死者は返事をできないからな。


「っ! そんな……」


 へぇ、クソ女神のこの嘆きの感情は本物じゃん!

 クソ女神は熾天使共の事なんて使い勝手のいい駒程度にしか思ってないと、思ってたのに意外だわ〜。


「ふふっ」


 まぁ、でも! これでクソ女神も少しは大切な人達が殺される辛さが理解できたかな?


「死ん、でる?」


「うそ……」


「何を、言って……」


 まっ! クズ勇者共が信じられないのもわかる。

 だって私は死ねって言った以外、熾天使共には手も触れてないわけだし。

 でも……


「クソ女神、お前には、わかるでしょう?」


 私がどうやって熾天使共を殺したのかはともかく、コイツらが既に死んでる事は。


「っ……何を、したのですか?」


 ふっふっふ〜ん! そこまで知りたいのなら教えてやろう!!


「私の付与ノ神は、全てに干渉して、全てを私の思うがままに、書き換える」


 つまり! 私がその気になれば、この世の全てが……生と死さえも自由自在!!

 消えろと命じればクズ勇者共の魔法は消えるし、止まれと命じれば止まる。


 それと同じように、私が死ねと命じれば死ぬ。

 まぁ尤も、付与対象が私と同等か私よりも膨大な魔素エネルギーを保有していたら昔、初めてファルニクスと戦った時みたいな感じで弾かれたり、抵抗されたりするんだけど。


「コイツらには、〝死〟という概念を、付与してあげた」


「付与して、?」


「ん」


「っ! ふざけないで下さいっ!!」


 全然、全く、これっぽっちもふざけて無いんだけど?


「付与してあげた、だなんて……貴女はこの子達を殺したのですよっ!?」


「だから?」


「だから、ですって……?」


「ふふっ、コイツらは、苦しむ事もなく。

 何の痛みも感じず、死の恐怖を感じる暇もなく、殺してあげた。

 感謝しろ」


 いや〜、復讐対象なのにあっさりと殺してあげるとか、本当に私って優しいわ〜!!


「それに、安心するといい。

 コイツらは死んだ、けど別に滅んだわけじゃない」


 まぁ、魂ごと本当の意味で殺す事もできたんだけど……

『彼らにも主様にお仕えする名誉を与えてあげてほしいのですっ!』って堕天使同類仲間ができるっ! って感じで目をキラキラさせて、ペトロからお願いされたら断れない。


 今頃は……ミリアと一緒にペトロが嬉々として用意していた肉体に熾天使共の魂が定着して堕天。

 悪魔王国ナイトメアにある幼魔神の試練私のダンジョンの深部にあるペトロの部屋で感動の再会でもしてるんじゃないかな?


「それはどう言う……」


「主様っ!」


 あっ、来ちゃったのね。

 まぁ、こっちには来るなって止めてたわけじゃないし、別にいいんだけど。


「ペトロ、どうだった?」


「それはもう! 完璧でした!!」


「ペトロ! どうして貴女がここにっ!?」


「あっ……っ! も、申し訳ございません。

 また、つい興奮してしまって……」


 堕天して欲望に忠実になったからか、テンションが上がるとはしゃいじゃうようになったんだよね〜。

 そんで、ハッと我に帰って恥ずかしがる……むふふ! 可愛い、後でもふもふな翼をモフってやろう!!


「ん、別に良い」


「主様っ!」


「ペトロ……ごめんなさい! 私では貴女を助ける事が……」


「あっ、ご無沙汰しております」


「ぇ?」


「そ、それでですね。

 実は彼らも主様にご挨拶をしたいと言っているのですが……」


「ペ、ペトロ? どうしてしまったのですか!?」


「自我愛と偽善の女神アナスタシア。

 申し訳ありませんが、煩いので少し黙っていてもらえますか?」


「っ──!!」


 ペトロにゴミを見るような冷たい目を向けられたクソ女神が目を見開いて息を呑む!!

 さっきのファルニクスといい、もうクソ女神のメンタルはズタボロだっ!!


「せめて、この場には同行させてほしいと、言っているのですが……ダメ、でしょうか?」


「ふむ……」


 まぁ、堕天したとは言え、アイツらにとってこれから処刑されるクソ女神はつい数分前まで主人だったわけだし。

 気になるのは当然か。


「ん、わかった」


 ペトロはともかく、アイツらはもしかしたら堕天しててもクソ女神を守ろうとするかも知れないけど……

 その時はその時だ。


 ペトロにお願いされた事と、殺した後も私に仕えさせる事で罰としようと思ったから堕天させたけど。

 まだ、ペトロとは違ってアイツらの事をしんようしたわけじゃないし。


皆んなみんなと一緒に見てて良い」


「ありがとうございます!」


 ペトロが頭を下げるた瞬間……


「っ!?」


「これは……」


「どうなって?」


 クズ勇者、アバズレ聖女、クリスの3人の……


「どうして、この子達が……?」


 驚愕に目を見開き、愕然と呟きを漏らすクソ女神の視線の先。

 ペトロのすぐ後ろに、3対の漆黒の翼を持った4人が。

 堕天して堕天使になったバルトロ、パウロ、ヨハン、フィリの4人が転移して現れ……片手を胸に当て跪いた。

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