第426話 処刑執行! その3

 おぉ〜、これは意外な展開だわ。

 いくら堕天したとしてもアレだけクソ女神を盲信してたからクソ女神の味方をする可能性まであると思ってたのに。

 まさか転移でやって来ると同時に私に向かって跪くとは……


「愚かな我らの願いを聞き入れていただき感謝いたします」


「ん」


 な、何? 何で4人ともそんなにキラキラと尊敬するような、崇めるような目をしてるわけ?

 さっきまで私を殺そうとしてたのにこの変貌ぶり! 流石に戸惑っちゃうんですけど!!


 ポ、ポーカーフェイスだ! 私は六魔王が一柱ヒトリにして、神へと至った原初の悪魔! 全ての魔を統べる幼魔神!!

 そして何より……この場ではクズ勇者共の処刑執行人なのだ!

 この同様を悟られるわけにはいかない!


「挨拶は後で、今は皆んなみんなと一緒に、後ろで見ていると良い」


「「「「はっ!」」」」


「では主様、御前失礼いたします」


「「「「御前、失礼いたします」」」」


「ん」


「……はい! では皆さん、こちらですよ」


「ペトロ……」


「貴女には緊張感というものが……」


「ちょっと、待ってください……」


「ふふっ、それでこそペトロですよね……」


 ……うん。

 まぁ何だ、先導するペトロについて仲良さげに話しながらシルヴィア達みんなの方に歩いて行ったけど……4人ともペトロと仲が良いみたいで何よりだわ。

 しかし、これは……


「そんな、何故……っ!」


「ふむ」


「きゃっ!? な、何をっ! 離しなさいっ!!」


「〝黙れ〟」


「っ──!!」


 まったく、ちょっと頭を掴まれた程度で騒ぎ過ぎだろ。

 ふむふむ……へぇ〜これはこれは!


「なるほど」


 軽くクソ女神の脳内の記憶を覗かせて貰ったけど……まさかねぇ。


「そんなに睨むな。

 もう、喋って良いよ?」


「っ! 私に何をしたのですか?」


「ふふっ、ねぇ……魂の加護が、気になる?」


「なっ!?」


 あ〜あ、そんなわかりやすい反応をしたらダメじゃん!


「魂の、加護?」


 ほら、クソ女神が大袈裟に反応するからクズ勇者が反応しちゃった。


「クソ女神、お前は、熾天使達を、生み出した時、その魂に加護をつけた。

 ふふっ、それとも、呪いって言うべき?」


「呪い? さっきから何を……」


「女神アナスタシアは、自身の生み出した熾天使達の魂に、加護として暗示を刻み込んだ。

 それが……自身に対する、絶対的な忠誠と献身」


「「「っ!!」」」


「出鱈目です!!」


「不自然と、思わない?

 手足を捥がれようと、翼を潰されようと、臆する事なく、クソ女神のために、戦い続けるだなんて」


 そんなの薬漬けにされた狂戦士じゃん。

 まぁ、それ程までにクソ女神の事をも盲信してるんだろうなぁって思ってたんだけど……まさか、魂に絶対的な忠誠心を刻まれていたとは!


「魂の刻印は、思考すら歪める。

 肉体的な痛みも、恐怖心も後回しにして、全てがお前への忠誠心に、塗り潰される。

 熾天使達は、クソ女神の奴隷だった」


「「「っ!!」」」


 しかも、自身の思考が故意に歪められてる事に自覚も無ければ、その事実に気づく事も絶対にない。

 本当に悪質で悪辣なやり方だわ!

 これぞまさに悪魔の所業! 悪魔の私が言うんだから間違いない!!


「ふふっ! けど、安心すると良い。

 あの4人……五大熾天、5人に付けられていた、魂の加護は、取り払った」


 まっ! 無理やり堕天させた事による副産物だけど。


「そんな……そんな戯言をっ!

 アナスタシア様が! 我が主神たる女神アナスタシア様が、そのような事をするなんて!!

 そのような事があり得るはずがないっ!! アナスタシア様、そうですよね!?」


「……」


「ア、アナスタシア様……?」


 ふふっ! まぁ、アナスタシア教の教皇にして、アナスタシア教国の統治者。

 熾天使達に劣らずクソ女神を狂信するクリスが信じられない……信じたくない気持ちはわかるけど……紛れもない事実なのだよ!!


「さてと……」


 大ショックを受けて間抜けな顔を晒してるところ悪いけど……


「教皇クリス、次はお前だ」


「っ!」


「あはっ! 今まで心の底から信じていた事が崩れ去った気分はどう?

 盲信していた心優しい聖女の正体はお前が憎悪するアバズレで! 心の底から信仰する女神は自己愛に満ちたクズ!

 ねぇ? 今、どんな気持ち?」


「貴様っ!」


 質問しただけなのに睨むとは、失礼なヤツめ。

 まぁ、クリスの気持ちなんて長々と聞きたくないし、別に良いんけど。


「お前の末路を、見せてあげる……〝付与ノ神〟」


「ひっ!」


 あはっ! 救世の六英雄様の1人なのに、情けない悲鳴をあげちゃって!!

 さっきまで私の事を睨んでたくせに、恐怖に顔を歪めて青褪めてるじゃん!


「ふふっ、喜べ。

 お前は死後、悪魔に転生する」


 当然、最下級悪魔ベビーデーモンとしてだけど、頑張って進化を重ねたら強くなれる可能性はある。

 尤も……最下級悪魔に転生したクリスがシルヴィアを筆頭に、七魔公の皆んなが統治している悪魔界でどうなるのかは想像に難くないけど!!


「ぁぁあっ!!」


 中位たる悪魔デーモンの中でも高位の存在や上位グレーターに位置する悪魔達はともかく。

 下位悪魔レッサーデーモン達が多く住む場所は悪魔界の中でも常に魔法が飛び交い、進化して強くなるための争いが日夜続く危険地帯だからな。


「安心しろ。

 悪魔族は肉体が滅んでも、消滅する事はない」


 まぁ、本来なら心が折れたら消滅しちゃうんだけど。

 そこはこの私が自ら、そう簡単には……シルヴィア達レベルじゃないと消滅させられないように加護を与えてやるから安心しろ!


 つまり! クリスは例え他の悪魔に何度殺されようとも生き返る。

 何度も何度も何度も! 何度でも!! 永劫の時を殺されても、自殺しても、終わる事が許されずに悪魔として生き続ける!!


「や、やめてくれ!

 お、お願いします!!」


「罪状は、アバズレ聖女を盲信し、無実の私を拘束、拷問する事に協力し。

 教皇として、私の家族を、殺す事にも加担。

 そして、クズ勇者共と、率先して、無実の罪で、私を公開処刑した事」


「い、嫌だ! 悪魔になんて……!」


「刑を執行する」


 そうだな〜、うん! お前の好きな神の炎とやらで消し炭にしてやろう!


「ふふっ、あはっはっはっ! せいぜい、頑張って悪魔界で生きるがいい!

 〝燃え尽きろ〟」


「助けっ……」


 白い炎の一瞬にして涙ながらに助けを乞うクリスを包み込み……塵すら残さずに消し去った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る