第424話 処刑執行! その1

 ふふん〜!

 どうだ! これでわかった?

 そう! お前は ファルニクス様とか言ってるけど、それは大きな間違い!!

 ファルニクスはお前のじゃなくて、私のなのだっ!!


「……」


 唖然と目を見開いて押し黙りながら、ファルニクスに抱っこされてる私を見上げるクソ女神のこの表情!

 ふふっ! いい気味だわ!!


 ファルニクスは私のなのに。

 勝手に勘違いして、自分の都合のいいように思い込んで、私に対してドヤ顔で私のファルニクス様アピールされてるウザかったからな!


「ふふん!」


 スカッとした!!


「う、うそです!

 ファ、ファルニクス様が貴女のものだなんて、そんな事……そんな事があるハズがありませんっ!!」


 まったく、これだから現実を直視できてない夢見がちな脳内お花畑は……

 まぁ、認めたくない気持ちはわかるよ?

 けど……お前は椅子に拘束されてて、私はファルニクスの腕の中!


「コレが、現実!」


『まぁ、腕の中と言っても抱っこされてるだけなんだけどね〜』


 シャラップ! 抱っこだろうが何だろうが、腕の中にいる事には違いない!!

 外野は黙って見てろ!


『はいはい、でもそうだね。

 それだけ甘々な空気を醸し出してるんだから、抱擁だろうと抱っこだろうと関係ない……のかな?』


 そう! あまあまな……あまあまな空気っ!?

  い、言っておくけど、私は人目のあるところでベタベタといちゃついてなんかいないからな!


 コレはクソ女神にファルニクスはお前のじゃなくて私のモノだって理解させるためであって他意はない!!

 人目も憚らずイチャつくアバズレ聖女とは違うのだ!


『うんうん、そうだね〜。

 人目がある、ところではね〜』


 ん、その通り!

 わかれば良いのだよ! わかれば!!


『ふふっ』


 さてと……


「そんな、そんなハズがありません!」


 問題は失恋してた現実を受け入れられずに……と言うか、受け入れたくなくて喚いているクソ女神だな。

 う〜ん、まぁ放置してもいいんだけど。

 クズ勇者共を処刑してる隣で喚かれても鬱陶しいし……


「だって、私とファルニクス様は相思相愛で愛し合っているんです!!

 そ、そうですよね? ファルニクス様!!」


「……何を言っているんですか?

 先程言ったハズですよね? 不愉快なので私の名を呼ばないでほしいと。

 私と貴女が愛し合っている? むしろ付き纏われて迷惑しているくらいですよ」


「ぇ、ぁ……」


「それに、珍しくレフィーが素直に甘えてくれているんです!

 事実無根とは言え、貴女の妄言を聞いてレフィーが勘違いしてしまったらどうしてくれるんですかっ!?」


「っ……!!」


 ……うん。

 当人であるファルニクスにここまで言われて、完膚なきまでに否定されて涙目になってて流石にちょっと可哀想というか哀れだし。

 何より今口を出してこれ以上こっちに飛び火すれば恥ずかし過ぎるからクソ女神は放置でいいや。


「ファ、ファルニクス。

 降ろして」


「わかりました……」


 と、とりあえずクソ女神の勘違いを正して、理解させる事はできたみたいだし。

 ポーカーフェイスだ! ポーカーフェイス!

 この程度で動揺する私ではない!!


「アナスタシア、貴女のせいで……」


「っ!」


 ふぅ〜、よし! 落ち着いた。


「ん?」


 何かファルニクスがめっちゃクソ女神の事を絶対零度の冷たい視線で睨んでるけど……どうしたんだろ?


「ふむ」


 まっ! 別に良いや。

 それよりも……これからクズ勇者共を処刑するわけだし。

 うんうん! いつまでもファルニクスに抱っこされてたら処刑を執行できない……事もないけど、格好がつかないからな!


「ふふっ」


 とりあえず……クソ女神が騒ぎ出したり、ファルニクスが姿を現たりとで話が逸れてホッとしてるみたいだけど……アバズレ聖女、何助かった気でいるの?



 パチンっ!



 指を鳴らすと同時に安堵の息を吐いていたアバズレ聖女の髪が肩口からバッサリと地面に散らばる!


「ぇ……?」


「何、安心してるの?」


 はい! これで地下牢に繋がれて、やつれた私の姿を見てマウントを取ってきたご自慢の綺麗な黒髪は無くなったっと!

 ふふん〜! ざまー!!


「さて……最初の処刑は」


 椅子に拘束している全員の顔をゆっくりと見回して……


「五大熾天、お前達だ」


「「「「っ!!」」」」


 ふふっ! 熾天使共の顔がサッと青褪めた!!


「罪状は、無実の罪で行われた拷問、公開処刑を黙認し。

 私や私の大切な人達を、見殺しにした事」


 コイツらは全てを知っているにも関わらず、アバズレ聖女のためにとか言う意味不明な理由で、自分の罪悪感を軽減するためにクソ女神が私が生贄にする事を止めもせずに肯定し。

 無実の罪で行われた拷問やら公開処刑やらを黙認した。


 とは言え、コイツらに直接何かされたわけではないし。

 私が生贄にされる事を黙認してた事についての鬱憤はかなり晴らした。

 という事で! 私は優しいからスパッと殺してやろう!!


「これより、処刑を執行する!」


「まっ……!」


「っ!!」


「許……!」


「助けっ……」


 今更になって命乞いをする熾天使共は無視して……


「ふふっ! 〝死ね〟」

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