第419話 付与って最強だと思いませんか?
「リナぁっ!!」
イヤだ、イヤだと情けなくも泣きながら。
それでも歩みを止める事なく一歩一歩、ゆっくりとアバズレ聖女が私の方に歩いてくる中。
クズ勇者が声を荒げて、その姿が一瞬にして掻き消える。
「擬似神能・英雄ノ王! 神千浄魔光刃っ!!」
私の頭上に短距離転移したクズ勇者が神剣ワールドを振り下ろすと同時に無数の光の斬撃が殺到し……
「〝止まれ〟」
ピタッ! っと、全ての斬撃が空中で停止する!!
「なっ!?」
ぷぷっ! バカだな〜。
さっきクソ女神の攻撃を停止させたのを覚えてないの?
「返してあげる」
パチンっ!
指を鳴らして、クズ勇者が放った光の斬撃を反転させて……
「〝行け〟」
自分の放った攻撃が全て空中で停止した光景に目を見開いて間抜けな顔をしているクズ勇者に向かって発射!!
「っ──! ぐァっ!!」
斬撃のせいでクズ勇者の姿は見えないけど、なんか悲鳴をあげてるし……あっ、全身ズタボロのボロ雑巾みたいになったクズ勇者が地面に落ちた。
ふむ、とりあえずクズ勇者は放置でいいか。
「やだ、やだぁ! ゆ、許してぇ!!」
まったく……お前の大好きな旦那様であるクズ勇者がやられたのに自分の事ばかりで心配すらしないとは。
まぁ、それでこそ自分勝手で自己愛に塗れたアバズレ聖女だけど!
誰にでも分け隔てなく接する心優しい聖女様の夫なのに心配してすらももらえないクズ勇者。
ふふっ! 可哀想に! 流石にちょっとクズ勇者が哀れだわ!!
「っ! 魔神レフィー、もうやめるのです!!
これ以上罪を重ねてはなりません! 聖女リナを解放してください!!」
「罪を重ねるな?」
はんっ! まだそんなヌルい事を言ってんのか、このクソ女神は。
もうこれは、そんな次元の話じゃないのだよ!
これは私のお前達に対する復讐!!
復讐をする事が罪云々なんてどうでも良い。
私がお前達を弄び、甚振って、血祭りにして、復讐を完遂するか。
お前達が私を滅ぼして生き残るか。
これは、そういう話なのだ!!
「ふむ……良いだろう」
「ほ、本当にっ!?」
ふふん! アバズレ聖女め、子供みたいに喜んじゃって!
私はお前達と違って嘘はつかないのだよ!!
「っ! わかってくれま……」
「アバズレ聖女を、解放してほしいなら、代わりに、お前がこっちへ来い。
そうすれば今は、アバズレ聖女を、解放してあげる」
「っ……」
あれぇ? 黙り込んじゃった!!
「アナスタシア様? た、助けてくれますよねっ!?」
「……」
あ〜あ、つい数秒前は助かると思ってあんなに喜んでたのに。
一気に青褪めちゃった。
まぁ尤も……助かると言っても、言ったようにあくまでも〝今は〟だけど。
「ぅ……リ、ナ」
「ん?」
「リナを、離せ……」
おぉ〜! クズ勇者が立った!!
「封魔ノ神鎖っ!!」
「むっ」
「今ですっ!!」
またこの鎖か。
もういい加減飽きたんですけど。
「ォォォォオ! 擬似神能・英雄ノ王っ!!」
雄叫びを上げるクズ勇者の姿が掻き消え、一瞬の後にクズ勇者が蹴り上げた地面が爆ぜる。
「「「「擬似神能・熾天ノ王!」」」」
私の頭上に転移して現れた熾天使共が私に向かって手を翳す。
「神能・美徳ノ帝っ!」
クソ女神から放たれる膨大な
「絶魔神閃っ!!」
「「「「
「神滅っ!!」
クズ勇者から放たれた斬撃が。
熾天使共から放たれた白い熱線が。
クソ女神から放たれた天を衝く光柱が……
「〝消えろ〟」
綺麗さっぱり消え去った。
「そん、な……」
「〝落ちろ〟」
「がぁっ!?」
「ぐァっ!!」
「ギャァっ!!」
「きゃぁ!!」
グチャッ! っと、肉が潰れるような音と共に……3対の翼を潰されて悲鳴を上げた熾天使共が苦悶に顔を歪ませながら地面に落ちる。
「〝吹き飛べ〟」
ボンッ!
地面に落ちた熾天使共の四肢が爆散して血肉が周囲に飛び散ち、熾天使共の絶叫がこだまする!
「ふふっ、お前達は、そこで見ていろ。
〝動くな〟」
「「っ!!」」
私が熾天使共に気を取られてる間に動こうとしていたクズ勇者とクソ女神が驚愕に目を見開いて息を読む!!
「な、何が……何故このような事がっ!?
いったい貴女は何をしたのですかっ!!」
「私の神能・付与ノ神は、あらゆる事象、あらゆる概念。
私の認識する全てに干渉して、私の思うがままに、全てを書き換える」
「付与ノ神……そ、そんな、貴女の、貴女の神能は創滅ノ神では……」
「付与ノ神、創滅ノ神、大罪ノ王、魔導ノ王。
私は4つの神能を、持っている」
「4つ……?」
ふっふ〜ん! どうだ、驚いたか!!
「う、ウソですっ!
そんな事は嘘に決まっているっ!!」
「ん?」
「付与ノ神? そんな力があるのであれば、何故我々の攻撃は貴女に通用するハズがない!」
「そうだ、我らは一度貴女を倒している!!」
「えぇ、ノア、その通りです。
魔神の言っている事は全て出鱈目だ!!」
「ク、クリスの言う通りです。
私達の攻撃は確かに貴女に通用していました……4つの神能を、それも神級を2つも有するなんて……」
ふむ……まぁ、信じなくても別にいいんだけど。
「言ったハズ、遊びは終わりだって……〝跪け〟」
「「「「っ!!」」」」
クズ勇者とアバズレ聖女が仲良く並んで跪いた。
「ねぇ、勇者ノアール」
お前はかつて、地下牢で私に向かって言ったな。
付与なんて無能だと。
聖女であるリナの足元にも及ばないと。
「聖女リナ」
私に王子様を奪われた気分はどうか?
公爵令嬢なのに付与なんてハズレしか使えない無能。
あの時はほとんど心ここに在らずで聞こえてなかったけど。
今はあの時のお前達の蔑むような顔も、その言葉もハッキリと思い出せる。
「ふふっ」
昔のように優雅に。
令嬢の鏡とまで称された公爵令嬢だった時のように柔らかな、誰もを魅了するような笑顔で……
「付与って最強だと思いませんか?」
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