第418話 試してあげる

「ハァァッ! 擬似神能・英雄ノ王……浄滅一閃っ!!」


 自分自身を奮い立たせるように声を荒げながら鋭い踏み込みで一瞬で切迫。

 地面すれすれ、限界まで低めた姿勢で切迫して来たクズ勇者から眩い輝きを放つ神剣ワールドによる一閃が放たれ……


「〝吹っ飛べ〟」


「ぐァっ!?」


 力のベクトルが反転したかのように。

 弾かれたように後方へと吹っ飛ぶ!


「ノアっ! っ〜クリスっ!!」


「わかっています!

 擬似神能・敬信ノ王……聖なる領域っ!」



 ズシンッ!



 クリスが聖盾ユミルを地面に打ち付ける同時に足元の地面が白く輝き……


「まだです! 魔断結界っ!!」


 私の周囲を囲うように神聖な気配を放つ結界が展開される。


「リナっ!」


「任せて!!」



 コンッ



「擬似神能・慈愛ノ姫っ! 滅悪の慈光っ!!」


 アバズレ聖女が神杖オリジンを地面に着いた瞬間。

 クリスが私を捕まえるために展開している結界の内部全域を白い輝きを放つ光柱が埋め尽くし……


「〝消えろ〟」


 光の柱も。

 私を閉じ込めるための結界も。

 神聖属性を強化して、魔の存在を弱体化させる聖なる領域も。

 全てが一瞬にして綺麗に消える!!


 ふふん! 聖なる領域って言っても所詮は神聖属性に特化した神域展開の下位互換でしかないし。

 いくら擬似神能を使っていようが、クリスの結界やアバズレ聖女の攻撃でこの私を閉じ込めたり、倒す事なんて不可能なのだよ!!


「「「「擬似神能・熾天ノ王っ! 封魔ノ神鎖っ!!」」」」



 ジャラララッッ!!



 むぅ、本当にクソ女神といい、この熾天使共といい。

 超絶美少女たるこの私を鎖で雁字搦めに拘束するとか何考えてんの? 超絶美少女だぞ私は!!


 まったく……私の柔肌に鎖の跡がついたらどうしてくれるんだ!!

 しかも、クソ女神とは違って、四方から4人で私を拘束してるから鎖の量が多過ぎるわ!!

 もう顔以外全身が鎖で埋まっちゃってるじゃんか!


「神能・美徳ノ帝! 聖光神槍ルミエルっ!!」


 熾天使4人に拘束されて身動きの取れない私に向かってクソ女神が光り輝く巨大な槍を放ち……


「〝止まれ〟」


 一瞬で飛来した巨槍が私の顔の前で止まって、遅れてやって来た風で髪が靡く。


「なっ!?」


「〝砕けろ〟」



 ピシピシピシッ──!!



「「「「っ!!」」」」


 私を拘束していた幾多もの鎖に一瞬で亀裂が走って砕け散る!


「〝反転〟」


 目の前で止まっていた巨槍がゆっくりと回転し……


「〝行け〟」


 愕然と目を見開くクソ女神へと向かって飛来する!!


「っ!!」


 ふむ、避けたか。

 このまま、あの槍を放置したら……多分射線上にあるネフェリル帝国が消滅することになるな。



 パチン!



 指を打ち鳴らすと同時に綺麗さっぱり消滅!


「これでよし」


 しかし……流石は超越者たるクソ女神。

 クズ勇者共なら反応すらできずに上半身が消滅してただろうに、頬を薄く切られた程度で避けるとは。


「擬似神能・魔法ノ王、爆炎の檻っ!」


「擬似神能・剣舞ノ姫! 魔剣ノ舞っ!!」


「擬似神能・闘武ノ王……破断!!」


 無数の火球が私の周囲を取り囲み……1つの火球の爆発が引き金となって終わりのない爆炎が空気を揺らす、

 雷、冷気、風、水、炎、様々な属性を纏う幾多もの魔剣が飛来し。

 大地を砕いて斬り裂く、巨大な斬撃が迫り来る。


「ふふっ」


 が……


「〝消えろ〟」


 パッ! っと、全てが掻き消える。


「お前達と、遊ぶための、箱庭は無くなった」


「何を……?」


 確かにあの世界での戦闘が終わるまでは輪廻の呪縛で縛られて死ぬ事は無かった。

 けど、クソ女神共は一度私を殺した。

 クソ女神共に輪廻の呪縛をかけて縛っていたこの私を。

 さて、ここで問題です!


「ねぇ、次に死ねば、どうなると思う?」


「「「「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」」」」


 輪廻の呪縛は継続されているのか。

 それとも……


「ふふっ! 試してあげる」


 まずは……お前からだ!


「ひっ!」


 むぅ、目があっただけで喉を引き攣らせるとか。

 本当にアバズレ聖女は失礼なヤツだわ!


「〝来い〟」


「っー! い、いやっ!!」


 ふふっ! 自分の意思とは関係なく私に向かって歩き出したアバズレ聖女が涙目になって悲鳴をあげる!


「リナっ!!」


 確かに、さっきの遊びではアバズレ聖女達の気が狂っちゃったら面白くないから気が狂わないように精神状態もまとめてリセットしてあげてたけど……


 記憶は継承される。

 ゴブリンに弄ばれた屈辱と恐怖も、拷問を受けた絶叫したくなるような痛みも、死の恐怖も!


「あはっ!」


 その身体に! 魂に刻み込まれた記憶と恐怖は消えはしない!!

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