第379話 アイツが来たっ!

「ッ……」


「うぅ……」


 かつて世界を脅かす魔王と打ち倒した救世の六英雄様が……


「ふふっ!」


 六英雄の中でも最強と呼び声高い勇者が!

 異世界より召喚された女神の寵愛を受けし慈愛の聖女が!

 人類の希望たる救世の六英雄の筆頭2人が何て顔をしてるのやら。


 私を冤罪で嬲り殺して。

 かつて王家に迫る程の権勢を誇って、邪魔になった私の家族を殺して。

 間違っていると声を上げた私の友すら殺して……


「あはっはっはっ!!」


 そこまでして血に塗れた玉座を手に入れたくせに。

 自分達の国を侵略されて、王都を消し去られて。

 何もできずに、荒野と化した元王都の地面にボロボロで倒れ伏してるとか!!


「ねぇ? 国王、勇者ノアール様。

 ねぇ? 王妃、聖女リナ様。

 今どんな気分?」


「ッ! 貴様……」


「貴女のせいでっ……」


 私のせい?


「違う」


 私達、悪魔王国ナイトメアと連合軍での戦争が勃発したのも。

 大陸西部の半分を私に支配されたのも。

 多くの人間が死んだのも。


 今や大陸中にその名を轟かせる人類国家最大の超大国。

 アルタイル王国が侵略されて、なす術なく王都が消滅したのも。

 ここでお前達が無様に転がってるのも!


「ふふ……全部、お前達のせい」


 アルタイル王国の半分は既に私の手に落ちてるし。

 栄華を極めた王都は一部を……焼け落ちて放置された私の。

 私の家族との思い出ある屋敷以外は跡形も無く消滅した。


 頼みの綱の王国最高戦力であるクズ勇者とアバズレ聖女は、他の六英雄とクソ女神の駒である五大熾天と一緒にこの通り。

 つまり! ぶっちゃけ、これで超大国アルタイル王国は滅亡したと言っていい!!


 まぁ、こんなのは序章に過ぎないし。

 コイツらにはもっともっと……もっともっともっともぉっと! 生きる事に絶望して。

 最低でも、もう殺してくれって懇願するくらいは苦しんでもらうし。


 それで終わりでも無いけど。

 とりあえずは、かつての事実をこの世界にいる全ての人間共に教えてやって、今日のところは一区切りにしようかな〜。


「かに……」


「ん?」


「確かに、私達は王都を守れず貴様に敗北した。

 だが、いい気になるなよ」


 こうなる事は決定事項だったわけだし。

 別にいい気に何てなって無いけど?


「負け惜しみ?」


 無傷で佇む私に対して、ボロボロの満身創痍で消滅して荒野と化した王都に倒れ伏す六英雄と五大熾天。

 この状況じゃあ今更何を言っても負け惜しみにしか聞こえないんですけど。


 ふふっ! 仮にも超大国アルタイル王国の国王にして救世の六英雄の筆頭。

 人類最強の英雄王である勇者様が無様なもんだわ!


「違うさ。

 まだ私達には……」


「む?」


 これは……


「人類には彼がいるからね」


 突如として荒野と化した王都の魔力が揺らいで、空間が歪む。


「っ……実はずっと要請はしていたんだけど、キミが来る直前に返事を貰ってね。

 今まで表舞台には殆ど立たなかったけど、彼の実力は本物。

 勇者である私に匹敵する強者」


 顔を顰めながらも膝をついて立ち上がったクズ勇者の視線の先。


「確かに、キミの言う通り王都は守れなかった。

 だけど、まだ私達は負けてはいない……リナ」


「うん、任せて!」


「待っていたよ、ネフェリル帝。

 本当の戦いはこれからだ」


 アバズレ聖女の回復魔法が展開される中、空間魔法で転移して来た者達が……

 ネフェリル帝国が皇帝ショウ・アラキ・ネフェリルが側近にして側仕えでもある5人の美姫と共に降り立った。

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