第373話 王都決戦 その4
まっ、わざわざ教えてやる必要は無かったんだけど。
現状でアイツらが把握している
「そ、そんなのウソに決まってる!
ただエネルギーをぶつけただけで、あんな事になるハズが無いもんっ!!」
「ふむ」
アバズレ聖女の、無いもんっ!! って言う、ぶりっ子感満載な口調はともかく、信じられないのはわかる。
まぁ、アイツらが信じようが信じまいが、どうでも良いんだけど。
各属性にはそれぞれ特色がある。
基本属性なら言うまでもなく火なら燃やす、水なら濡らすみたいな感じで。
当然、上位属性にも特色が存在して神聖属性には邪を祓って清める特色があり。
神聖属性と対をなす深淵属性には触れるものを破壊するって言う特色がある。
まぁ、各々に特色があるって言っても、ただの
それが私ならば話は別!!
何たって私は原初の悪魔にして、真なる神である超越者へと至った魔神!
濃密で膨大な魔素を持つ私にかかれば、魔素のみで物質に影響を与える事なんで雑作も無いのだっ!!
「それに! 私達の神聖魔法が効かないとか……強がっても無駄なんだからっ!
貴女の事は私達が、苦しんでる多くの人達のために絶対に倒してみせるっ!!」
うわぁ……今、鳥肌が立ったわ。
何あれ? 何あのアバズレ聖女の、必死で
謀略で私を嵌めて、陥れ。
私のみならず、私の家族も、かつての使用人達も、そして私を擁護してくれた友さえも。
何の罪もない人達を自分の欲望のためだけに皆殺しにしたくせに。
今更、心優しい聖女様アピールしてんじゃねぇよ。
「ふん」
なら、せいぜい必死に王都を守れ。
ふふっ、そして自分の無力さを思い知って、自分のしでかした事を後悔し、絶望しろ。
「来い。
遊んであげる」
***
「急げ!
広域殲滅魔法の準備はっ!?」
「全員、詠唱完了っ!!」
「タイミングを合わせてぶっ放すぞ!
これだけの数の広域殲滅魔法だ、いくらあの化け物でも無事じゃあ済まないっ!!」
王都ペイディオの一画。
今回の魔神率いる悪魔王国との戦争における決戦の地として選ばれたこの地に集った者達。
連合軍でも精鋭たる強者達が、目の前で繰り広げられている戦闘……
連合軍最高戦略である救世の六英雄と、女神アナスタシアに仕える最上位の天使である五大熾天。
そして魔国軍の首魁である魔神レフィーとの間で繰り広げられる激しい戦闘に頬を引き攣らせた苦笑いを浮かべながらも慌ただしく動く。
「他の区画のヤツらとの連携は?」
「問題ありません!」
「よし! 広域殲滅魔法でヤツを弱らせて、近接戦ができる者は勇者殿達に合流。
一気にヤツにとどめを刺す!」
指揮官の言葉言葉を受けて、苦笑いを浮かべていた戦士達の貌が真剣なモノへと変わり。
王都の一画に……王都中に気迫に満ちた声が鳴り響き……
「ふぅ……今だ!
あの化け物に魔法の嵐を叩き込んでやれっ!!」
王都の至る所で巨大な魔法陣が光を放ち……
「ふふふ」
それら全てが一瞬にして砕け散った。
「なっ!? 一体何が……」
「せっかくレフィーお嬢様が、お楽しみになられているのです。
レフィーお嬢様の遊びの邪魔はしないでくださいませ」
装飾のなされた黒いメイド服に身を包んだ金髪の美女が軽やかに降り立ち、戦場のど真ん中とは思えない優雅な所作で頭を下げる。
「ご安心を。
貴方達のお相手は、私共が勤めて差し上げましょう」
「っ! お前は魔神レフィーの──」
声を荒げた高位冒険者の言葉が不意に途切れ……
「「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」」
周囲の者達が。
連合軍の精鋭たる強者達が息を呑む。
ドチャッ
赤い血を撒き散らしながら、声を荒げた冒険者の身体が地面に崩れ落ち……
「ゴミ風情がレフィーお嬢様のお名前を呼ぶなど万死に値します」
愕然と目を見開く首を。
崩れ落ちた冒険者の首を片手に持った、金髪の美女が道端のゴミでも見るかのような視線で、この場に集った強者達を見据える。
「貴方達の相手はこの者達で十分ですね。
来なさい、
「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」
女の横に出現した黒い門から続々と姿を表す悪魔が女に向かって頭を垂れて跪く。
「なっ!? ウソだろ……」
その悪魔達の最後。
他の悪魔達とは比べ物にならない圧倒的とも言える程の覇気を纏った人の姿をした存在が姿を表し……
「何なりと、我らに御命じください」
他の悪魔達と同様に金髪の美女に向かって跪く。
「ここにいる者達を皆殺しにしなさい」
「はっ! シルヴィア様の仰せのままに」
「貴方達も聞いていたとは思いますが、レフィーお嬢様は死ぬなと仰いました。
わかっていますね?」
「勿論でございます」
「よろしい。
ならば、レフィーお嬢様のお名前を敬称も無しに呼び捨てにしたこのゴミ共を片付けなさい」
「っ!! 承知致しました」
悪魔に命じた金髪の美女、シルヴィアの姿が掻き消え……
連合軍の精鋭たる戦士達は、凄まじい殺気を放つ悪魔を前に誰も一言も発する事ができずに固唾を飲みこんだ。
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