第372話 王都決戦 その3

 聖なる祝福、ねぇ。

 まぁ確かに、魔法に対して全種族の中でトップの親和性を持つ正しく魔法チート種族たる悪魔族デーモンにとって神聖魔法は弱点。


 神聖魔法なら、精神生命体であり基本的に本当の意味で滅びる事のない悪魔を浄化して完全に滅ぼす事すらできる。

 だから悪魔である私に対して神聖魔法を使って来る事自体は間違ってない。


「けど……」


 異世界……地球から召喚された正真正銘の異世界チート聖女リナ。

 クソ女神アナスタシアに仕える最上位の天使である五大熾天が一翼である熾天使パウロ。


 2人は神聖魔法のエキスパート。

 それなりに極めてるけど、まだ習得してから6年しか経ってないマリアナのそれを遥かに凌ぐ。


「はぁ……」


 まぁ確かに、それなりの存在。

 上位悪魔グレーターデーモンなら確実に消滅してるだろうし、最上位悪魔アークデーモンだって致命傷になり得る大ダメージを負う事になるだろうけど。


「くだらない」


「えっ!?」


「なっ!!」


 ふふっ、アバズレ聖女とパウロが驚愕に目を見開き。

 次いでクズ勇者共が、そして全ての人間、天使共がその顔を驚愕に染めて頭上を仰ぐ!


「あはっ!」


 さぁ! 押し潰されろっ!!



 ピシッ──



 空より降り注ぐ漆黒によって、王都全域に張り巡らされた大規模結界に一瞬で亀裂が走る。



「っ!!」


「これは……っ!」



 クリスが息を呑んで聖盾ユミルを地面に着き、マリアナが自分の身の丈もある神器・聖杖イブを振り翳す。

 瞬時に大規模結界の内側に強固な二重結界が展開され……王都大規模結界が砕け散る!


「っ……! クリスっ!!」


「わかっているっ!!」


 マリアナの結界に衝突した事で漆黒の一部が周囲へと飛び散り、王都へと降り注ぐ漆黒をクリスの広範囲結界が受け止めるか。

 まぁ、力を分散させるってのは悪くない案だけど……



 バリィッンッ!!



 マリアナの結界だけでは受け止め切れない!


「っ──グゥ……!」


 マリアナの結界を砕いた漆黒をクリスが展開した広範囲結界が受け止め……



 ピシピシッ!



「ガァぁッ!!」



 パリィッンッ!!



 漆黒が王都の中央に。

 崩壊した王城跡へと降り注ぎ……



 ──────ッ!!!



 天へと漆黒の黒柱を立ち上らせる。

 徐々に天へと伸びる黒柱が消失し……崩壊した王城の瓦礫も、大地すら消滅して底の見えない大穴のできあがり!


 っと、こっちもそろそろ終わりみたいだな。

 やぁっと、チカチカと眩しくて鬱陶しかった白い光の柱が徐々に狭まって来た。


「っ! うそ……」


「そんな、バカな……」


 ふふふっ! さぁ驚愕せよ! 恐怖しろっ!

 そして……私の前に平伏して、震えながら命を乞うが良いっ!!


「無傷、なんて……」


「それに、分散させたのにあの破壊力。

 もし直撃していれば……」


「っ! 化け物めっ!!

 マリアナ! あの化け物はいったい、どんな魔法を使ったんですかっ!?」


 ぷぷっ! さっきまで調子に乗ってたくせに、取り乱しちゃって!!


「ふふっ」


 それに! 無傷、なんて……だって!!


「あはははっ!」


 あぁ、やっぱりコイツらは自分の都合が良いようにしか考える事ができないバカだわ。


「残念だけど、私の知らない魔法ね」


「なっ!?」


 まぁ、マリアナが知らないのは当然だな。

 だって……


「今のは魔法じゃない」


「魔法じゃ無い?」


「そう、今のは私の魔素エネルギーを直接、叩きつけただけ。

 魔法でも何でもない」


 まぁ、でも頑張った方だと思うよ?

 何もせずに直撃してたらパウロが懸念してる通り、王都自体が消滅してただろうからな。

 それに、私に神聖魔法が効かないのも至極当然!


「私は魔神。

 原初の悪魔にして、神へと至った存在。

 お前達程度の、神聖魔法なんて効かない」

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