第368話 次は王都
「ん……んぅ……」
目が覚めたら知らない天井……じゃ無いな。
思いっきり見慣れた、私の寝室の天井だわ。
コン、コン
「失礼いたします。
おはようございます、レフィーお嬢様」
「ん、シルヴィアおはよう」
流石はシルヴィア。
扉の前でタイミングを見計らってたような、このタイミング。
「ふぁ〜……」
それにしても、いつもなら一緒に寝てるはずのミーシャがいないし。
ここ最近はシルヴィアと一緒に私を起こしに来るアリーもいない。
「みんなは?」
「皆各々の持ち場に戻っております」
「ふ〜ん」
なるほど、なるほど。
ミーシャとアリーとフィルが
「アーク達は?」
アーク達の任務は昨日のガスター、マリアナ、フェリシアの3人に勝つ事だし。
昨日まではずっと魔国で訓練してたから特に持ち場とか無かったと思うけど。
「他の面々は未だにヴァントの城で転がっております」
ふ〜ん、アーク達はまだ寝てるわけか。
仕方ない! ここは師匠として、この私が直々に起こしに行ってやろうっ!!
「終わりましたよ」
「ん、ありがと」
うんうん、流石は私の専属メイド長たるシルヴィアさん。
この短時間で私の身だしなみを整えさせてしまうとは!
「じゃあ、アーク達を起こしてくる」
「かしこまりました。
では、私は朝食の準備をしております」
「ん、よろしく」
ちょちょいと転移してっと……
「ふむ」
何これ?
私は確かに昨日の祝勝パーティーの会場だったヴァントにあるミュール辺境伯のお城に転移したはず。
それは未だに寝てるアーク達がいるから間違いない。
けど……なんで、こんなにボロッボロなの?
地面の至る所が陥没して、亀裂が走ってるし。
昨日まではあんなに煌びやかだったパーティー会場が何故か激しい激闘があった後みたいな惨状になってるんですけど。
「はぁ……」
どうやら、アーク達は随分とはしゃいだみたいだな。
全くお酒を飲むのは良いけど、酔っ払ってはしゃぐとは。
今度、酒は飲んでも飲まれるなって言葉を教えてやらないと!
『おぉ〜、凄まじいブーメラン』
むっ、出たな邪神。
『悪魔ちゃん、昨夜のパーティーの事を覚えてないの?』
「ん?」
昨日のパーティー?
当然、しっかりと覚えてるけど?
昨日のパーティーはアーク達は勿論、そこで転がってるアラン達も呼んで、ご馳走とスイーツを一杯食べた!
アーク達のカッコいい戦闘シーンを大スクリーンで流したり、ヴァント陥落とガスター達敗北の報告を受けて愕然とするクズ勇者達を見たりして楽しかったけど……
あれ? 途中から記憶があやふやだな。
と言うか、どうやって自分の寝室に戻ったんだろ?
確かクズ勇者共の滑稽な姿を見ながらお酒を飲んで……
「ふむ」
そこから先は曖昧で思い出せないけど、まぁ別に良いや。
『はぁ、悪魔ちゃんこそ酒に飲まれないように気をつけないとダメだよ?』
は? 何言ってんの?
ありとあらゆる全ての状態異常に完全耐性たる無効を持ってる私がお酒に飲まれて酔っ払うなんてあるはず無いじゃん。
『やれやれ、記憶がないからタチが悪い』
むっ、失礼なヤツめ。
私はお酒に飲まれたりなんかしないって言ってんのに。
まぁ、昨日はやぁっとアルタイルに攻め入ったわけだし、ちょっとテンションが上がってた事は否定しないけど。
「ふん」
アルタイル王国の王都ペイディオ。
王都の象徴だった王城は私が破壊して瓦礫の山になってて、人と活気に溢れる街並みも今は多くの人間達が避難して閑散としてるな。
『何やってるの?』
ちょっと王都の様子を見てるだけ。
ふふん! この私にかかれば、昨日設置したままだった大スクリーンに王都の光景を映し出す事なんて雑作もないのだっ!!
「……」
貴族の屋敷が立ち並ぶ区画にある、無惨に焼け落ちた状態で放置された屋敷。
昔……6年前までは家族と一緒に住んでた、領地の本邸とは別の王都にある我が家。
それに、旧魔王が出現して前線の後方支援を始めるまで通ってた学園……
『悪魔ちゃん……』
とまぁ、感傷に浸るのはこのくらいにして!
シルヴィアが朝ご飯を用意して待ってるし、早くアーク達を起こさないと!!
「ふふっ」
あぁ、楽しみだなぁ。
ミュール辺境伯領の領都ヴァントの次は、懐かしき祖国の王都。
「やっと、次は王都の番」
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