第361話 剣聖vs姫騎士
キンッ! キンッ!!
金属同士がぶつかり合う音が鳴り響く。
地面を砕いたり、大規模な魔法を使ったりと隣で派手に戦ってる星屑の剣とガスター、マリアナとは違って静かに。
けど、確かで高度な技巧による剣撃を打ち合うリーゼとフェリシア。
ふむ、まだ全力全開じゃ無いとは言え、押され気味だけどリーゼと対等に打ち合うとは流石は姫騎士フェリシア。
まぁ領都の外壁で観戦してる有象無象には互角に見えるだろうけど。
まっ! それはともかく、一回徹底的に私にボコられて、格の違いを見せつけられてるからちょっと心配してたけど。
ガスターも、マリアナも、フェリシアも、3人とも腑抜けて無いようで何よりだわ!!
「リーゼ……どうして……」
「くどいですよ、フェリシア。
言ったハズです、これが私の正義だと」
「っ……!」
「この戦において貴女達に正義はありません」
リーゼは刀を神器・聖剣ワルキューレで受けたフェリシアがその勢いを利用して背後に飛んで距離を取る。
まぁ、リーゼは当然としてフェリシアのレベルになってくるとあんな距離はあって無いようなものだけど。
「本当に、本当に戦うしか無いの……?」
「はい。
この場でフェリシアを倒す事がレフィー様より与えられた私の任務ですから」
「そっか……なら、私もここからは全力で戦う!
そして私がリーゼを止めて見せる!!」
止めて見せるねぇ。
「確かに私達に正義は無い。
けど何の罪もない人達を守るために! そんな人達をリーゼが手にかけなくて済むために!
リーゼ……全力で行くよ?」
ふむ、盛り上がってるところ悪いけど……
「罪のない人達を手にかける? 何を言っているのですか?」
「えっ?」
「言ったハズですよ。
私の任務はフェリシア、貴女を圧倒して倒す事だと。
今のところ私が彼等を始末する予定はありません」
ぷぷっ! 恥っずかしぃ〜っ!!
せっかくビシッと宣言したのに、勘違いして全くの的外れとか……ぷっ! ふふふ!!
「尤も、これが戦争と知った上で戦場に立った以上。
向かって来るのならば容赦はしませんが……ふふっ」
「っ! うぅ〜わ、笑うなっ!
もう、全力で行くからねっ!!」
顔を真っ赤にしたフェリシアが真っ直ぐにリーゼに突っ込む。
まぁ確かにそこらの有象無象だったら反応もできない速度の踏み込みだけど……私に鍛えられたリーゼを雑魚と一緒にしてもらっては困る!!
「はぁぁっ!! っ!?」
「直線的過ぎです」
当然のように受け止められたフェリシアが目を見開いて息を呑む。
まぁ、前回2人が全力で戦った時。
騎士王継承戦の時は今のスピードにリーゼは反応するのがやっとだったらしいから、余裕で受け止められてビックリするのはわかる。
しっかし前も思ったけど、何でフェリシアって攻撃する時に叫ぶんだろ?
それに、私の時と一緒でまた何の駆け引きもないスピード重視の直進だし……まぁ、別にどうでも良いけど。
そんなんじゃあ、私のリーゼには到底勝てないっ!!
「えっ! うそっ!!」
リーゼの刀の腹を聖剣ワルキューレが滑り……
「カッ──!!」
鳩尾に蹴りが突き刺さったフェリシアが息を吐き、顔を歪めながら背後に吹き飛ぶ。
「フェリシア。
貴女の全力は……」
「ッ!!」
「その程度ですか?」
蹴り飛ばされて、地面を転がりながらも体勢を立て直したフェリシアに瞬時に切迫したリーゼが頭上から刀を振り下ろし……
ビシィッ!!
リーゼの剣を受け止めたフェリシアを中心に地面に亀裂が走り、陥没する。
リーゼの剣圧に押されて膝を着いたフェリシアに向かってリーゼが蹴りを放つ。
キンッ!
蹴りを放った事で僅かに剣圧が弱まった刀を弾いたフェリシアが軽やかにジャンプして蹴りをかわし……
「っ!!」
息を呑む。
「閃っ!」
いつの間にか鞘に収められていた状態から、僅かに姿勢を落として放たれる横薙ぎの一閃!
ギィッンッ!!
けたたましい音と共にフェリシアの身体が吹き飛んで地面を転がる。
「くっ……リーゼ、ちょっと見ない間に強くなり過ぎだよ」
「当然です。
何度も……それはもう何度も死ぬほど頑張りましたから」
やっぱりリーゼには剣よりも、敵を斬る事に特化した刀をすすめて正解だったな。
普通の玉鋼じゃ無くてオリハルコンとかの合金だから強度も凄いし、その切れ味は語るまでも無い。
ついでに後方支援特化だったマナにも刀で戦えるようになってもらって、今では後方支援職ながら前線での戦闘でもガスターと対等に渡り合える程度の実力者なのだ!
ふふん! どうだ見たかっ!!
これが我が弟子達の実力! 人間共の希望の光である救世の六英雄をも圧倒する強者なのだよっ!!
さぁ! 目の前で希望が敗北し、無様に這いつくばる姿を目の当たりにして絶望するが良いっ!!
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