第303話 次世代の力
「……はぁ、私とアリーは別に操られてなどいませんので、助けていただかなくても結構です」
「念のために言っておきますが。
これは私達自身が覚悟を決め、決断した事、断じて誰かに操られてこんな事をしているわけではありません」
そうだ! そうだ!!
もっと言ってやれ! まぁ、脳内お花畑のバカクズ勇者に何を言っても無駄だろうけど……
「しかし、まさか第一王子とその婚約者でもある公爵令嬢を洗脳するとは。
流石にこれは後で獣王国ビスバロニスに……いや、獣魔王レオンに抗議をする必要があるね」
「フィル、アリーちゃん……安心して! 私とノアがすぐに助けてあげるからっ!!」
ほらな。
と言うか、何この茶番?
魔王に洗脳されて操られてる息子と戦わないとダメな私可哀想。
必死に息子を救い出す私健気で良い!
とか、思ってるんだろうけど。
目の端に涙を浮かべて、顔の前で両手をギュッとか……お前何歳だよ!
自分に酔いすぎなんだよ! アバズレ聖女が!!
まぁ確かに2人は魔王の居城に向かったわけだし、洗脳されてるかもって思うのはわからなくもないけど……
コイツらこの映像が全国どころか、大陸中に生中継されてるっ事を忘れてるんじゃない?
アバズレ聖女の言う事を全て盲目的に信じ込んでるクズ勇者はともかく。
アバズレ聖女と狸ジジイ共はアレだけど顔色を真っ青にしたりして取り乱してたのに今更洗脳って……
「2人とも、少し手荒になるけど許してくれよ?」
「ごめんね……後でちゃんと治してあげるから……ぇ?」
「なっ!?」
これで上手く誤魔化せたと安心したのか、悲しげに眉を下げてセラフィルとアリシアを心配する心優しい聖女様を演じていたアバズレ聖女リナが唖然と声を漏らし。
絶対的な自信に満ちた笑みを浮かべていたクズ勇者ノアールが驚愕に目を見開く。
「確かに先程の騎士達に比べて速度はありましたが……それだけです。
その程度の攻撃は私達には通用しません」
ぷぷっ! 今のはダサいわ〜。
あんなに自信たっぷりの態度だったのに、さっきの近衛騎士達と変わらず指一本さえも使わずに攻撃を受け止められるって! ふふっ、ウケる!!
「そんな、バカなぁがっ!?」
おおっと! 呆然とするクズ勇者のボディにセラフィルの鋭い回し蹴りがクリーンヒット!!
これは効いた! 唖然としていたクズ勇者の顔が醜く歪む〜っ!!
「ノアっ!!
今行……」
──ィィィッ!!
「きゃあっ!」
苦悶の声をあげて顔を歪めるクズ勇者に駆け寄ろうとしたアバズレ聖女の行手を阻むように、耳をつんざく雷鳴を轟かせながら青白い閃光が走り抜ける。
「私の事もお忘れなく」
腐っても流石は聖女。
咄嗟に結界を展開して身を守ったアバズレ聖女の前には……
会議室の壁をぶち抜いて外まで貫通した雷の軌道上。
パリッ、パリッと小さく弾ける電雷を纏いながら焼き焦げた床の上に降り立ったアリシアが立ち塞がる!!
「っぅ……フィ、ル」
パチン!
「降り注げ、ルクス・レイン」
セラフィルが指を弾くと同時に、顔を歪めて膝を着くクズ勇者の頭上に幾多もの光の雫が出現する。
「っ!!」
降り注ぐ光の雫を地面を転がって何とか避けて、転がった勢いで体制を整えようとしたクズ勇者の身体を……
「ぐっ!?」
漆黒の翼が吹き飛ばす!
「ふふっ」
「レフィーお嬢様、そろそろご準備を」
「ん、わかった」
さぁ! 面白くなってきた!!
セラフィル、アリシア、お前達の力を!
そして、救世の六英雄と呼ばれて調子に乗ってるクズ勇者とアバズレ聖女の無様な姿を大陸中に見せつけてやれっ!!
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