第304話 さぁ……行こう
「全てを呑み込め、
「っ……! 光よっ!!」
クズ勇者が剣を振るって放った光の斬撃が、セラフィルから広がる闇を迎え撃ち……
「ぐぁっ!」
相殺しきれ無かった衝撃波によってクズ勇者の身体が吹き飛ばされる。
「ノアっ! 今行……」
バリィィィィッ!!
天井を、床を、空気を焼き焦がしながら迸る稲妻がアバズレ聖女を呑み込む。
「行かせると思いますか?」
「っ、アリーちゃん……」
パリッ、パリッ……っと、小さく紫電しながら電気が空気に弾ける中、結界でアリシアの雷撃を防いだアバズレ聖女が自身の前に立ち塞がるアリシアを睨む。
「そこをどいてっ!」
「アレはフィル様と勇者の戦いです。
お姉様の所蔵によれば、男の子の戦いに手出しするのは無粋らしいですよ?」
アリー……それって、私のマンガの話じゃ……
「ふふっ、それに聖女様の相手は私です」
うん、まぁ何も言うまい。
祖国に対して宣戦布告なんてシリアスな場面なのに……って思わなくもないけど。
別になんの問題もないしな!
「頑張って後ろの方々を守ってくださいね」
「っ!」
「雷波」
アリシアの足元から雷が波ように唸りながらアバズレ聖女に襲いかかる。
「この程度じゃあ私の結界は破れな……」
ドゴォッ!!
「ぐぉっ!?」
「ぎゃぁっ!!」
アリシアの雷波を防ぎ切ったアバズレ聖女の決め台詞を遮って轟音が鳴り響き、次いで悲鳴が上がる。
「ダメですよ。
しっかりと守って差し上げなければ」
「っ……」
アバズレ聖女を通り過ぎた雷波が、背後の壁を砕いて近くにいた狸ジジイ共が巻き添えになったか。
まぁ怪我が数名出ただけで誰も死んではないようだけど。
軽傷のくせに泣き叫んでるヤツまだいるし……ぷぷっ! 良い大人がみっともない。
ふふふ、せいぜいみっともなく泣いてる姿を大陸中に生放送されるが良いっ!!
「けど」
幾ら城内で、近くに重鎮達もいて本気を出せないとは言え……ここまで一方的な展開になるとは。
フィルとアリーもまだまだ本気じゃ無いのに。
アバズレ聖女は結界で身を守ってるから傷は無いけど、土埃まみれで肩で息をしてるし。
クズ勇者なんて全身傷だらけでボロボロ。
あの会議室もセラフィルとクズ勇者、アリシアとアバズレ聖女の戦いの影響……と言うか、殆どのアリーの雷撃のせいで廃墟って言っても過言じゃない状況。
どっちが優勢かなんて火を見るより明らか! ふふっ、愚かな人間共め、我が眷属たる2人の力に驚愕するが良いわ!!
『ねぇねぇ悪魔ちゃん、ちょっと良いかな?』
ん? なに?
今は気分が良いから答えてやる! 感謝しろ!!
『はいはい。
じゃあ聞くけど、どうしてセラフィルにフィル、アリシアにアリーって愛称とそうじゃ無い時があるの?』
ふっ、そんな事もわかんないの?
そんなの、2人の活躍を録画してるからに決まってるじゃん!
カッコいいシーンに愛称だと微妙になるからな。
『へぇ、そうなんだ』
なんだ。
せっかく教えてやったのに、興味が無さそうだな。
『あはは、そんな事ないよ』
ふ〜ん、まぁ良い。
今はお前に構っている暇はないのだ!
「ふふっ」
そろそろ、今回の宣戦布告を締め括らないと。
「フィル、アリー」
『『かしこまりました!』』
「さぁ……行こう」
私の出番だっ!!
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