第276話 消え失せろ
「俺は……あんたを信用するよ」
「ショウ様っ!? そんな簡単に……!」
「よろしいのですか? この者の話が信用できるかは……」
真面目そうなシャルルが声を上げ、アヤが探るような怪しむような視線を向けて来る。
身動きを完全に封じられてるこの状況でそんな態度を取れる度胸は褒めてあげるけど……
ソルはムッとした顔でこっちを睨んでるし、ヒューはそんな彼女達の姿を見て敵意剥き出し。
この娘達は本当に今の状況を正しく理解してるのかな?
唯一難しそうな顔をして考え込んで、次いで他4人の態度にため息をついたのがユミルだけって。
私としてはショウの選択は英断だと思うけどなぁー。
「あはは、まぁ皆んなの気持ちもわかるよ?
俺だってまだ彼女の言う事を全て信用したわけじゃないしね」
「でしたら……」
「でもね、シャルル。
この拘束は俺でも破れない」
「「「「っ!!」」」」
「やはり……」
ふふん! そんなの当然じゃん。
察してたユミル以外の4人は驚愕してるけど、私が付与者の権能を使って拘束してるんだよ?
ファルニクスですら数秒なら捕らえる拘束をハーレム主人公くん程度に解けるハズがない!
「それに、この白い光の剣もヤバそうだし。
流石にこの状況では彼女に従うしかないよ」
うんうん、ハーレム主人公くんは状況をよく理解してるようで何より!
「まっ、そう言うこった。
ハッキリ言うが、ここにいる全員でかかってもお嬢には勝てねぇよ」
「そんな!」
「っ!!」
「レオン様……」
「うそ……」
「……」
はい、茶番はこのくらいにして。
いい加減、話を先に進めても良い?
と言うか、もう面倒だし勝手に進めるわ。
「皇帝ショウ。
もう一度聞く、私の話を信じるって事でいい?」
「あぁ、そう捉えてもらって構わないよ」
「だ、そうだ。
皇帝ショウはこっちに付いた」
「お嬢?」
「何を……」
この場にいる全員が訝しむような視線を向けて来るけど、そんな事はどうでも良い。
レオンとショウも気付いて無かったみたいだけど……
今一度言おう。
そんなにも気持ち悪い残滓を皇帝ショウに残して、この私が気付いていないとでも思ったか?
「ふん」
ダンマリか。
まぁ、そっちがその気なら私にも考えがある。
ふふっ、強制的に引き摺り出してやる!
「〝出てこい〟」
「っ!?」
『ぐぅ……!』
皇帝ショウの右肩辺りから魔素の塊が吹き出し、呻くような女の声が鳴り響く。
「ショウ様っ!!」
「陛下っ!」
「ショウ兄っ!!」
「兄様……!」
「ショウ様っ……!」
ほほう、シャルルとユミルがショウ様で、アヤが陛下。
そんでもって幼いソルとヒューには兄と呼ばせてるわけか。
いやまぁ、まだ幼い外見のソルとヒューとも寝てる時点でわかってたけど……変態野郎め!!
『悪魔ちゃん』
おっと、話が逸れた。
今はハーレム主人公くんが変態だって事よりも、コイツが先だ。
『まさか無理矢理引き摺り出されるなんて……』
ショウの肩に乗っている存在。
白い光を放つ鳥が愕然と呟きを漏らす。
「消え去れ、卑劣な女神」
『なっ! 私はこの世界の主神である女神アナスタシア、決して卑劣な神などではありません。
そして哀れなレフィー、これ以上罪を犯すのはやめなさい』
「黙れ。
皇帝ショウの事を認知すらして無かった癖に利用しようとしたグズが」
『っ!』
「皇帝ショウを介して、自分は安全な場所で私を監視しようと思ってたみたいだけど。
残念、そんな虫の良い事は許さない」
『わ、私はそんなつもりでは……そ、それに今ならまだ間に合います!
復讐なんてやめて、私の元へ……』
「黙れと言った」
あぁ、本当にこのグズ女神と話してると虫唾が走る。
ついつい反射的に
『ッ……後悔、しますよ』
「失せろ」
依代の首を掴んで握り潰す。
「私の前から〝消え去れ〟」
『キャァぁっ!!』
白い輝きをも塗り潰して呑み込む、黒い光に包まれた依代が……甲高い耳障りな悲鳴を上げて消滅した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます