第266話 アイツが来た!

「お嬢様、レフィーお嬢様。

 お目覚め下さい」


「ん〜ぅ、もうちょっと……」


 わかってる。

 勿論、わかってるんだよ? 流石にもう起きないとダメだって事くらいは。

 けど! 眠たいんだから仕方ない!!


 程よい気温に保たれた寝室!

 心地良い布団に、ふかふかのベッド!

 そして! 微睡へと私を誘う睡魔と……


「みゅふ〜」


 ついつい抱き着いて、頬ずりしちゃう最高の触り心地のモフモフなミーシャの尻尾!

 我ながらなんて最高で最凶な睡眠環境なんだろうか。


 私がずっと惰眠を貪っちゃうのも仕方ないと思う。

 うん、私は悪くない! 全てはこのいつまでも惰眠を貪りたくなっちゃう睡眠環境のせいなのだ!!


「……致し方ありませんね。

 このような事はしたく無かったのですが……」


 むっ、この気配は……


「リーナ、ミーナ」


「「はい!」」


 ほほう〜、リーナとミーナがこの私を強制的に起こすと?

 まぁ確かに高位の吸血鬼にして、シルヴィアの直属って事でシルヴィアに鍛えられてる2人の実力はかなり高い。


 とは言えだ、いくらこの2人でも……まだまだ私の睡眠用の結界は破れない!

 ふはっはっはっ! 破壊神たる保護者シルヴィアじゃ無ければ恐れるに足らず!!

 我が至高の惰眠を阻止できるものなら阻止してみるが良いっ!


『悪魔ちゃん、流石にもう起きた方がいいよ。

 聖位闘技大会の最終日、悪魔ちゃんがフェリシアに復讐してからもう丸1日だよ?』


 もう丸1日。

 されど、まだ1日。

 まだまだ、ごろごろ自堕落に惰眠を貪っても問題ない!!

 特に急ぎでやらないとダメな事なんて無いし。


「「ミーシャ様、お願いいたします」」


「わかったにゃー」


 な、何だとっ!?

 ミーシャが2人に買収されて……


「あぁ……」


 私のモフモフが!

 ミーシャの尻尾がぁ……!!


「わっ」


「はい、捕まえました」


「ふふ、おはようございます」


 そ、そんなバカなっ!?

 抱っこだと! 何でリーナとミーナが結界の中に……と言うか、相変わらずの破壊力だな。

 恐ろしい凶器おっぱいめ!


「お見事です。

 リーナ、ミーナ、2人とも腕を上げましたね」


「「ありがとうございます」」


「さて、ではレフィーお嬢様こちらへ、朝支度をいたしましょう」


 まぁ、ベッドと言う名の聖域から連れ出されてしまった以上はもう抗う気は無い。

 煮るなり焼くなり好きにするが良いわ!


「ふむ」


 しかし、リーナとミーナはどうやって私の結界を破ったんだろ?


『あぁ、それなら簡単だよ。

 悪魔ちゃんがミーシャの尻尾を取り上げられて狼狽えた一瞬の隙をついて突破されたってわけ』


「その通りです。

 レフィーお嬢様は、私対策のために結界の効果を一定に固定していませんでしたね?」


 そ、それは……そうだけど。

 ここ最近……と言うか、もうずっとだけど、シルヴィアが起こしに来たら結界の強度を跳ね上げて抵抗するのがいつもの事だし。


「ミーシャの尻尾が手の中から無くなり、動揺なされて揺らいだ結界を一気に突き崩したと言うわけです」


 なるほど……


「ん」


「「お、お嬢様!」」


 よしよし。

 流石は私の専属メイド。

 動揺したとは言え、私の結界を破るとは……ふふふ、2人は何故か顔を赤くしてるけど、この私自ら頭を撫で撫でしてやろう!


「レフィーお嬢様に撫でられるなんて!

 な、なんて羨ましい……!!」


「シルヴィア様……いや、何でもないです」


 ん? シルヴィアとミーシャ、こそこそと何の話だろ?


「それよりも、あの方の事をお伝えしなくてよろしいのですか?」


 あの方?


「ミーシャ、あの方って?」


「それは私からご説明いたします」


 な、なんかシルヴィア怒ってる? 機嫌悪くない!?


「実はレフィーお嬢様がお眠りになられている間にファルニクス様がお越しになられております」


 ファルニクスが?

 魔国でお留守番中だったハズなのに、何しに来たんだろ?

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