第261話 やっと気付いた?

「ぁっ! ぅ……!?」


 あはっはっはっ!

 唖然と、呆然と驚愕を張り付けた真っ青な顔で、確かな恐怖を宿した目を見開いて。


「ふふっ、やぁっと……私が誰か、気が付いた?」


 そりゃそうだよね。

 こんな間近で、わざわざ魔素エネルギーを解放して、翼まで出したんだもん。


 幼くなったとは言え顔立ちも。

 魔素や魔力も、質と量は違ってもその本質も公爵令嬢の時と変わってない。


 シルヴィア達の話ではレフィーは前世の私が親しい間柄の人達から呼ばれていた愛称だったらしいし。

 バカで愚かなガキとは言え、多少なりとも前世から交流があったコイツが知らないわけが無い。


「ぉ……ぁ、ぉ……」


「ん?」


 何か言おうとしてるみたいだけど、私が黙れって付与してるから話せずに口をパクパクと……

 ぷぷっ、間抜け! 何かめっちゃ間抜けでちょっとウケるわ〜。

 なになに、フェリシアだけ付与を解除して何を言ってるのか聞いてやる。


「っ! お、お前は……レむぐぅ──!?」


 あ〜まさか開口一番でそれを言うとは。

 思わず反射的にフェリシアの顔を掴んで黙らせちゃった。


「その名前は死んだ。

 お前達に殺された」


「っ!」


 その名前で。

 かつての、公爵令嬢だった頃の名前で呼ばれるのは嫌い。

 忌まわしい記憶が鮮明に蘇るから。


「今の私はレフィー。

 次にその名前で私を呼んだら……」


「何で、何でお前が……」


 何で、ねぇ。


「ふっ、ふふふ、あはっはっはっ!」


 まさかそんな分かりきった事を聞かれるとは。


「っ! こ、この悪魔っ……」


「で?」


「ッお前はあの時、リナが滅したはず……まさか、生きていたなんて!」


 いや、死んだよ。

 死んだ上で悪魔に転生したんだけど……まっ、それを口で説明してもコイツは信じないだろうな。

 自分の信じたい事しか信じないバカだし。


「っ! わかったぞ。

 お前は魔王の、魔神の配下だな? 今度こそ、この私が悪を倒してやるっ!!」


 は? 流石にこれは想定外の発言だわ。

 コイツは六英雄の1人だし。

 いくら隠蔽してるとは言え、私に……


 魔王が一柱である魔神について何らかの情報を持っていても不思議じゃ無いって思ってたんだけど。

 そう言えば、コイツはバカだったわ。


「卑劣な悪魔め! 今すぐ皆んなを解放しろっ!!」


「もういい、煩いから黙れ」


「むっ! んー、ぅんーっ!?」


 本当に鬱陶しい。

 イラッとして殺したくなる。


「私を倒す?

 お前みたいな雑魚がどうやって?」


「っ……!」


「弱いくせに粋がるな。

 それに、勘違いしてる」


 私が魔神の配下?

 何をどう脳内に繋げたのか知らないし、興味も無いけど……バカで愚かなコイツの間違いを正してやろう。


「私こそが魔王。

 最古にして始まりたる原初の悪魔、全ての魔を統べる魔神」


「ぇ……」


 さぁ! 恐怖しろ! 畏怖しろ! 恐れろ!

 私の前に平伏して、跪いて! 醜く、愚かに、必死に命を乞え!!


「ぅ、ぁ……!?」


 う〜ん、何を言ってるのかはわからんけど……まぁ、どうでも良いや。


「あはっ!」


 早く、平伏せ!


「ぅっ!」


 フェリシアの頭を地面に踏みつけてっと。


「「「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」」」


 背後で十騎士共が身じろいでるけど、気にしない。


「もう一度言う。

 バカで愚かなフェリシア、お前に真実を……お前の罪を教えてやる」

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