第258話 叩き潰してやる!
いぇーい! とか観客に向かって言って、子供みたいにはしゃいでるけど……
ふふふ、無邪気に何も考えずに笑ってられるのも今だけだ。
「もうすぐ……」
「ん? どうかしたの?」
もうすぐ、フェリシアの顔は屈辱に歪み! 恐怖に染まる!!
「あっ、わかった!
ふふふ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ!
私はフェリシア、この試合では騎士王とか地位は関係ない実力勝負!!」
ふ〜ん、地位は関係ない実力勝負ね。
まぁこの大会のコンセプトは全くもってその通りなんだけど……お前がそれを言っちゃうか。
観客に紛れて周囲を包囲してるヤツらが10名、まぁフェリシアの近衛である直属の十騎士だし。
どうせフェリシアは何も知らずに十騎士のヤツらが勝手に動いてるんだろうけど。
よくもまぁ、この状況下でぬけぬけと……虫唾が走る!
目に見える事だけを真実だと信じ込み、裏の事情を一切考慮しないどころか見ようとすらせずに、さもそれを当然だと、正しい事だと言わんばかりのこの態度。
「だから、お互い全力で頑張ろう!
よろしくね、レフィーちゃん!」
本当に、コイツのことは大っ嫌いだわ。
「よろしく」
本当に、この自分の方が強いって思ってる態度も。
裏表の無いこの笑顔も。
裏方の事なんて考えもせずに表に出てる明るい所だけを見て、それだけを無邪気に信じ込むコイツの全てを……
『それでは!
第3回戦、第一試合! レフィー対フェリシア……始めっ!!』
「壊してやる」
お互い全力で頑張ろう? 違う。
これは私の私による、私のための
フェリシア……お前に現実を見せつけてやる。
「じゃあ、いっくよ〜!」
確かにそれなりに速いけど、真っ直ぐ直進的な踏み込み。
有象無象にはフェリシアの速度を捉えきれ無いだろうけど……ふふふ、私もナメなれたもんだわ。
フェリシアもまだ全力じゃあ無いだろうけど。
アークよりちょっと速い程度のスピードがこの私に通用するとでも本気で思ってるのかな?
「ぇっ!?」
「とろい」
『こ、これは! 何という事でしょうっ!!
フェリシア様の姿が掻き消えたかと思えば……先程までレフィー選手が立っていた場所で剣を振り抜いているフェリシア様!
しかし、そのレフィー選手がフェリシア様の背後に立っていますっ!!』
立ってるだけじゃなくて、フェリシアの首筋に魔刀を据えてるんだけど……まぁ良いや。
『これは一体、何が起こったのでしょうかっ!?』
やった事は至って単純。
真っ直ぐ突っ込んで来たフェリシアの横薙ぎの抜刀を避けて、背後を取っただけ。
まぁ、それを認識できたヤツがこの会場に何人いるのかは知らないけど。
「っ!」
『すかさずフェリシア様がレフィー選手の剣を弾いて距離をとる!
この一幕だけでもわかる! 何と高レベルの攻防! これは一瞬たりとも目が離せないっ!!』
まっ、フェリシアが距離をとったんじゃ無くて、私が逃してあげたんだけど。
ただの実況にそこまで求めるのは酷ってもんだな。
それにどうせ……
「レフィーちゃん……キミは何者なんだ?」
実況する事も忘れて唖然と見入る事になる。
何たって、所詮は人間レベルとは言えフェリシアは人類最強の一角。
「ふふっ! 救世の六英雄の。
姫騎士と呼ばれるお前の力は……この程度?」
これから始まるのはただの試合じゃ無くて人類最高レベルの殺し合い!
「いいや……まだまだこれからだよっ!!」
確かにさっきよりも速いけど……
振り下ろされる袈裟斬りを最小限のスウェーで避けて、フェリシアの剣の腹を踏んで地面に抑えつける。
「なっ!?」
「まだ遅い」
さぁ、吹っ飛べ!
「くっ!!」
ほほう、咄嗟に剣を離して自ら飛ぶ事で裏拳で頬を殴られた衝撃を緩和したか。
まぁ、このくらいはしてくれないとねっ!
「「「「「「「「「「ッ!!」」」」」」」」」」
十騎士共が息を呑んでるけど、この程度で驚いてもらっては困る。
モラールがフェリシアが出場する闘聖位戦で大会に出場したのは、フェリシアの脅威となるヤツがいるかどうかの確認のため。
だから出場者の中でもフェリシアを除けば優勝候補筆頭だと思われたアークと剣を交えて。
その結果、フェリシアの脅威とは成り得ないと判断したからアッサリと負けたんだろうけど。
そこで判断を下すのは早計だったな!
まぁどの道、モラールではアークには勝てなかっただろうし。
お前らがいようがいまいが、私には関係ない。
「あはっ! さぁ……」
こんなお遊びの普通の剣じゃ無くて、かつての大戦時からお前が使っていた聖剣ワルキューレで。
「本気で来い」
邪魔するヤツらも全員まとめて……叩き潰してやる!
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