第217話 これぞ、魔神たる我が力!!

 バッ! っと腕を振り下ろすと同時に、滅槍が霊峰ルミエルへと向かって真っ直ぐ落下を開始する。

 まぁ、ぶっちゃけ腕を振り下ろす必要は一切ないんだけども……細かい事は気にしない!


 うんうん! だってこっちの方がかっこいいし。

 私のことを慈愛に満ちた女神アナスタシアだと不愉快な勘違いをしてる人間共に私の力を見せつけること。

 そして、私は魔神だって事を知らしめることが目的なわけだし!


「さぁ、恐怖しろ」


 決まったー!

 ねぇどう? どうだった!? ニヤリって笑う私、めっちゃカッコよくね?


『カッコいい、と言うよりは何かほんわかする感じ?

 イタズラが成功してちょっと得意気な子供みたいな』


 ……まぁ、外野の意見はともかく。

 思考加速まで使って聞いたんだから同意しろよって思わなくも無いけどそれはともかく!


 真っ直ぐに落下する滅槍が地表に。

 昨日の夜までクズ勇者共が会議をしていた、霊峰ルミエルの頂上に存在する神殿へと到達した瞬間──





 世界が純白に染まる!

 視界を埋め尽くし、視野を潰す程に眩い輝きが徐々に落ち着き。

 視野を奪われていた人間達がゆっくりと目を開けて……静寂が舞い降りる!


 跪いて祈っていた民間人も、感涙を流していた神官共も……

 誰もが動きを止めて、さっきまでバカみたいに騒いでいた全ての人間共が押し黙って唖然と目を見開く!!


「ふふ……」


 ふはぁっはっはっ! どうよ?

 人間共の視線の先に広がるは、霊峰ルミエルの背後に聳え立つ広大な山脈の斜面に覗く深淵。


 アナスタシア教国の象徴。

 かつて女神アナスタシアが降臨したとされる伝説の地、霊峰ルミエルが綺麗さっぱり消滅し、ぽっかりと大地に穿たれた底の見えない大穴!!


『うわぁ……』


「ふふん!」


 世界を白く染め上げて音も無く……音すらも消し飛ばし!

 霊峰ルミエルを、ちゃ〜んと人間共からも見えるように背後の山脈の斜面までの範囲を消滅させてやったのだよ!!

 さてさてアナスタシアは……


『……』


 ぷぷっ! 人間共と同じように唖然と目を見開いちゃって。

 一応はこの世界の主神のくせに、とても主神とは思えないマヌケな顔!!


『まぁ、私でもちょっと引いちゃう光景だからね。

 彼女が唖然としちゃうのも仕方ないよ』


 ん? 超越者ならこの程度誰でもできるじゃん。


『それはそうだけど。

 彼女からしたら悪魔ちゃんがそれ程の力を持っている事は想定外だったんだろうね。

 さっきも英雄級とは言え、所詮はでしか無いクリスにキミを止めるように神託を下そうとしてたし』


 なるほど、つまりは自己満クズ女神ことアナスタシアは私の事をナメ腐ってたと。

 ふん! せいぜい私をナメていた事を後悔しながら天界で指を咥えて見てらが良い。


「愚かで醜い人間共、今一度言う」


 翼をバサァッと広げて唖然とする人間共を見下ろし。

 軽く覇気を使って威厳を演出!


「私はお前達が崇める最低……女神アナスタシアじゃ無い。

 私はレフィー、悪魔王国ナイトメアの女王にして始まりたる原初の悪魔。

 全ての魔を統べる神……魔神」


 ぬふっ、ぬふふ、ぬはっはっは!

 これぞ、魔神たる我が力!!

 恐怖しろ! 畏怖しろ! 泣き叫べ! そして私の前に平伏し無様に命を乞え!!


「ふふふ、魔王が一柱ヒトリだ」

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