第215話 おっぱいが無いからかっ!?

「ふっ」


 決まった。

 完璧に、これ以上なく完璧に。

 執務室を自分の魔素エネルギーで満たしてクリスに神託を下そうとした女神アナスタシアに完全に勝った!


 ふはぁっはっはっ!!

 いつも外からの侵入者を拒むように吹き荒れる吹雪を分厚い雲ごと消し飛ばし。

 神々しい光が降り注ぐ中、純白の翼を広げてバッシィっ! これぞ! まさに天から降臨せし神の姿!!


 今の超絶カッコいい、女神にして魔神宣言も拡声魔法を使って聖都中に聞こえるようにしたし。

 多くの人々が何事かと、窓から顔を出し、扉を開けて外に出ては誰もがポカンと口を開いて唖然とこっちを凝視!


「ふふふ」


 愚かで醜く、脆弱なる人間共よ!

 刮目せよ!

 私こそが超越者! 私こそが神なり!!


 レストランから飛び出して来たガスターとマリアナ達も。

 さっきまで麗しき白ネコ姿の私が座していた執務室の窓から私を見上げるクリスも……


 これでこの聖都デサントに存在する全ての者に私の! 全ての魔を支配する神たる魔神の姿がインプットされたわけだ。


「ふふん!」


 別にアナスタシアに張り合ったわけじゃないけど。

 これでクリスに神託を下して盛大に神様ムーブをかましてくれたアナスタシアより遥かに強い印象を与えたのは確実!!


 むふふ! これでこの場所、霊峰ルミエルは……

 五大国が一角であるアナスタシア教国が首都、聖都デサントは、かつて女神が降臨せし神聖にして伝説の地では無く!


 可憐でありながらもクールビューティーでカッコいい超絶美少女たる魔神様!

 この私が実際に降臨し、降り立った地として畏れられる事となるだろう!!


「っ! あぁ……神よ!!」


「神が、女神様が御降臨なされた!!」


 ふふふ、1人また1人と跪いちゃって。

 中には唖然とこっちを見上げながら両膝を地面について感 涙を流してる人すらいる始末。


 まぁ、私は原初の悪魔にして魔王が一柱ヒトリ

 超越者へと至った魔神だし?

 人間共のこの反応も至極当然と言うもの!


 ふはっはっはっ!

 もっと私を敬え! もっと恐怖しろ! もっと畏怖しろ!

 そしてプルプルと生まれたての子鹿の如く、無様に震えながらこの私の前に平伏すが良いっ!!


「おぉ! まさか生きているうちに女神様をこの目で拝見できる日が来ようとは!!」


「女神様がご降臨なされたぞ!」


「今日は何て目出度い日なんだ!!」


 あ、あれ?

 なんかちょっと反応がおかしいんだけど……これじゃあ恐れて畏れてるって言うよりもまるで……


「皆様! 落ち着いて下さい!!

 まずは我らが神へと祈りを捧げるのですっ!!」


 あそこの教会の神官は何を言ってるんだろう?

 我らが神って……アナスタシアの事じゃ無いの?


「しかし……まさか女神様があのように……」


「えぇ、あのように幼いお姿をされていたとは!」


「っ! 我々は今まで女神と言う言葉だけで身勝手にも姿を思い描いていたと言うのか……」


「我ら如きが女神様のお姿を決めつけるなど、何て愚かな事を……!!」


 誰が幼いじゃ!! って、そうじゃない!

 ふぅ〜、落ち着け、落ち着くんだ私!

 常に冷静沈着でクールビューティーなできる女たるこの私がこの程度事で取り乱すわけにはいかない!!


「壊せ!」


「我が女神様の真のお姿を!」


「一刻でも早く、真のお姿の神像をお作りするのだ!!」


 何か一部の神官達をはじめとした民衆がアナスタシアの像を倒して暴走してるけど……それはこの際どうでも良いから無視するとして。


 本来なら恐怖に震えて絶望に包まれているハズの聖都デサントの様子は、ガスター達一部の例外を除いて何故かお祝いのお祭りでもおっ始めそうな程に歓喜に包まれてるし。


「コレは……」


『あはは、コレは完全に悪魔ちゃんが女神アナスタシアだと勘違いされてるね』


「っ!」


 やっぱりか!

 な、何故だ!? 私はちゃんと女神にして全ての魔を統べる魔神だって宣言したのにっ!!


『それは……まぁ、ねぇ?

 どう考えても、悪魔ちゃんの姿がとても魔神には見えないからだね』


 おっぱいか? おっぱいが無いからか!?


『いや、胸は関係無いと思うけど……』


 くっ、またしても……またしてもこの幼児体型な外見のせいでっ──!!


『まっ、ガスター達以外は悪魔ちゃんの実力も本性も知らないしね。

 登場の仕方も魔神って感じじゃ無かったし、人間達が勘違いするのも仕方ないと思うよ?』


「むぅ」


 ふん! 良いもん。

 こうなったら私の力を見せつけて、私が甘ったれでクソッタレな女神アナスタシアなんかじゃ無くて!

 可憐でカッコいい超絶美少女でありながらも、恐ろしく畏ろしい魔神だと言うことを……


「ふふふ、覚悟しろ」


 魔神と言う存在を、魔神の恐怖を!

 その身をもってして教えてやる!!

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