第171話 わたしをたのしませるがいいっ!!

「何がどうなっているのだ!?」


「取り乱さないでいただきたい。

 そんな話があり得るハズが無いでしょう?」


「その通りですぞ。

 全ては卑劣な悪魔共が流した戯言、所詮は敵の罠に過ぎません」


「では、先日の報告は一体何だと言うのだ!!」




 あぁ醜い、実に醜い。

 信じたく無い現実を受け入れられずに子供みたいに喚き散らし、苛立ちから意味も無く怒鳴り散らす。


 ふふふ、まさしく! 会議は踊る、されど進まずって感じだわ。

 まぁ、紛糾してるだけで別に踊っては無いけど。

 それはともかく!!


「ふふふ! おかわり!!」


 いやぁー、いい大人が!

 それも一国の王たる立場にある者達が顔を揃えてるのに怒鳴り散らしてるだけで一向に進まない会議!

 こんなにも不毛で、それでいて滑稽な人間共の姿を見ながら飲むお酒は最高だわ!!


「レフィーお嬢様、程々になさって下さいませ」


「問題無い」


 むふふ、シルヴィアはこう言ってるけど状態異常無効があるからアルコールで酔う事もないし、どんどん進む! グビグビお酒が止まらないっ!


 グランは悪魔王国軍の総司令、元帥として魔国に戻って今回の戦争後処理に当たってるし。

 ミリアはお酒好きで、ミーシャはマタタビ酒で陥落!

 アラン達も一緒に酒盛りをしてるし、この状況下では流石のシルヴィア保護者でもこの私は止められない!!


 そして、酔わないと言っても状態異常無効は私の意思でコントロールできるからアルコールを摂取する事は可能で程よく、気持ちよく酔う事ができるのだ!

 つまり! さぁ、もっと持ってこい! どんどん持ってこい!!


「むふ〜、美味しい!」


 お酒も美味しいけど、このお肉も最高に美味い!

 ちょうど暗くなってきたしって事で皆んなで、テラスに出てバーベキューをしながら今回の戦争であしらってやった3カ国。


 グローリー王国、フラン帝国、アウストロ皇国の国王やら皇帝やらの3人が集まって行ってる会議を見てたわけだけど……


「ふっふっふ! ざまぁ!!

 欲望に目を眩ませ、私利私欲に塗れて身の程知らずにも、この私にケンカを売るからこうなるのだよ!」


「あの……レフィー様?」


「もしかして酔っていらっしゃいますか?」


 む? この程度のお酒でこの私が酔う?

 いやいやいや、流石にそれは無い。

 全くエレナとアランもお酒が入ってるからと言って、冗談はやめて欲しいわ。


「わたしは、別によってない!」


「クックック! しっかりと酔ってるじゃねぇかお嬢!!」


「シルヴィア様の仰る通り、程々になさった方がよろしいのでは……」


 酔ってないって言ってるのに!! ガルドもクリスティアも失礼な〜!


「よってないもん!」


 確かにちょっとだけ状態異常無効を緩めてはいるけど、この私が酔っ払うなんてあり得ない。


『いや、さっきから呂律が回ってないし、しっかりと酔ってるよね?』


 むぅ、邪神までそう言うか! 皆んなして失礼な!!

 この私を誰だと心得る! 私は淑女の鏡、淑女の中の淑女と謳われた元公爵令嬢にして原初の悪魔。


 世界に対して魔王を名乗った、魔を統べる魔神だぞ!!

 クールでかっこよくて可愛いくて美しい超絶美少女な私がこれしきのお酒で酔うハズが無いのに!


「あぁ! 拗ねていらっしゃるレフィー様も尊い!!」


「ご主人様、お肉のおかわりはいかがですか?」


 ふむ、お肉のおかわりか。

 当然もらうとしよう!


「ん! くるしゅうない!!」


 んふふ〜!

 ミーシャから受け取ったお肉を頬張ると同時に口の中に広がる肉汁! 実に素晴らしい!!


 私の隣を陣取って頭を撫でてくるミリアのナデナデも悪くない。

 非常に心地良いけど、断じて私は拗ねてなどいない!!

 まぁ、それはともかく! 気を取り直して……


「ふふふ、つぎはゆうしゃたち!」


 この世界の情報のやり取りには馬の他にも、重要度の高い情報や緊急性のある情報では主に長距離通信魔法が使われていて、情報伝達技術はそこまで低くない。


 まぁ、悪魔王国軍の皆んなの追撃を受けながら敗走する兵士達にそんな余裕は無く。

 命からがら何とか戦場から最も近いフラン帝国の都市。

 辺境伯が治る要塞都市に辿り着いたのが昨日。


 それから暫くしてアーク達も要塞都市に辿り着き、冒険者ギルドや3バカ王達に情報が届いたのが半日ほど前。

 それからずっと時間だけを浪費する無駄な会議が行われてるわけだけど。


 流石にそろそろ宰相だったり、国の上層部が情報を精査してまとめただろうし。

 そろそろ勇者共にも20万の先遣部隊が敗走したって情報が伝わった頃だろう。


「ふっふっふ! さぁ、滑稽で無様なすがたを見せろ!

 せいぜい、わたしをたのしませるがいいっ!!」

 

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