第153話 リリィー・カーディナル

 いつもだったら名付けた同時に膨大な量の魔素量エネルギーを持ってかれるわけだけど……

 正真正銘の神である超越者に! 魔神へと至った今の私にとっては全く問題無い!!


 それどころか、何事も無かったかのように!

 さも当然のように足を組み替えて、ミーシャ特製のココアも優雅に飲めてしまう!!


「ふふふ……」


 いやぁー、これでまだ転生してから……つまりは生まれてから5年半ちょっとしか経ってないんだから、我ながら自分自身の成長が末恐ろしいわ。


 まっ、眷属化に必要な名付けで持っていかれる魔素量エネルギーは対象の強大さによって大きく左右される。

 ここまで負担が小さくて余裕があるのは、リリィーが普通の人間だったってのもあるかな?


 幾ら人類でもトップクラスの素質を持っていようとも、今のリリィーは至って普通の一般人。

 神話に語られる伝説級の魔物だったミーシャや、終焉の大地に君臨していた四魔王が一柱だったミリアーナに比べたら消費する魔素量エネルギーが少なくなるのは当然なわけだし。


 まぁ、それでも一般人は勿論、それなりの実力者だろうとも一瞬で身体中の魔素が枯渇して死に至る程の魔素は消費してるのに全くもって問題無い私が凄いって事実は変わらない!!


「レフィー様……これは大丈夫なのでしょうか?」


 ん? あぁ、そう言えばミリアは見た事なかったか。


「問題無い。

 これは、進化の眠りと言われる現象」


「これが……」


 まぁ、ミリアが驚くのも無理は無い。

 だって名付けを終えると同時に、天井まで届く火柱がリリィーを包み込んで今は小さな太陽みたいになってるし。


「因みに、悪魔だったら黒い繭に包まれる。

 ミリアの時は、普通に眠ったように目を瞑ってた」


「へぇ、そうなんですか」


 微妙な反応だけど……目の前のコレを見た後だったら仕方ないか。

 そういえばミーシャの時はどうだったんだろ?

 うーん、気になる! 後で聞いてみよう。


「あの、ご主人様……そろそろ」


「ん、わかってる」


 定まって無かった膨大な魔素エネルギーが安定して収束していってるしね。


「もうそろそろ、リリィーさんの進化が完了しますね」


「うん、楽しみ」


 さてはて、リリィーはどんな進化を遂げたのか!


「あの……ご主人様?

 そうでは無くててですね、いえ勿論それもあるのですが」


「ん?」


「もうそろそろ尻尾を離して頂きたいのですが……」


「……あっ」


 そ、そう言えばずっとミーシャの尻尾を抱き締めて掴んだままだったわ。


『忘れてたの?

 じゃあやっぱり、ずっと胸にミーシャの尻尾を抱きながら優雅にとか言って足を組み替えたりしてたのはネタじゃ無かったんだね』


 や、やめろ! 何も言うな!!


『いやまぁ、可愛らしかったけどね?』


 うぅ……あっ! そ、そんな事より! リリィーの進化が終わる!!

 おぉ! リリィーを包み込んでいた火球が一気に弾けて花火みたいに小さな火花が舞って綺麗だわ!!


『あはは、必死になって』


 何か言った?


『いや、何も言ってないよ』


 ふ〜ん、まぁ良い。

 今はそれよりも! 直径数センチ程の小さな火球が舞い散るなか、空中に浮いていたリリィーが目を瞑ったままゆっくりと地面に舞い降りる……


 何この演出、めちゃくちゃカッコいいじゃん!!

 紅き炎カーディナルって二つ名もそうだけど、リリィーさんマジでカッケェーっすわ!


 また今度この演出をパク……こほん、使わせてもらうとして!

 さてさて、じゃあ早速!! 果たしてリリィーはどんな進化を果たしのか……


「解析鑑定!」




 名前:リリィー・カーディナル

 種族:炎霊姫


 魔神へと至った原初の悪魔の眷属にしてユニーク個体。

 魔霊、聖霊、精霊の3つの性質を併せ持つ、炎を司る大精霊が受肉を果たした半精神生命体。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る