第152話 5人目の眷属
「陛下? いかが致しましたか?」
「お気になさらず。
レフィーお嬢様はご友人であらせられる邪神様に少々言い訳をなさっているだけですので」
いやいやいや、シルヴィアさん何をおっしゃるやら。
邪神が私の友達とか……うん、絶対に無いな。
なんと言っても邪神は性格悪いし、しょっちゅう私の事をバカにするし、何より邪悪な邪神なわけだし。
ま、まぁ! 邪神がどうしてもこの私の友達になりたいって言うのなら考えてやらん事もないけど……
とにかく! 今現在、私と邪神は友達じゃあ無いのだ!! 勘違いしてもらっては困るよ全く!
「邪、邪神様ですか?」
「まぁ、今はまだ信じられないのも仕方ないですけど。
ご主人様の眷属になればリリィーさんにもわかりますよ!」
ミ、ミーシャまで!
あっ、真っ白でモフモフな尻尾がゆらゆら……
「ひゃっ!」
「ミ、ミーシャ様!?」
「気にしなくても大丈夫だよ。
いつもの通りレフィー様がミーシャ様の尻尾に抱き付いただけだから」
ネコの尻尾みたいにスラッとしなやかでありながらもこのモフモフ感!!
ふふふ! いつ何時であろうともこのモフモフの誘惑には誰も抗えない!!
「むふふ〜」
つまり、醸し出していたシリアスな空気をぶち壊してミーシャの尻尾をついつい抱き締めちゃった私は一切何も悪くない!
そう! これは言うなれば不可抗力なのだっ!!
『大魔王陛下に相応しい雰囲気云々はどうなったの……?』
あっ……
「こほん、それでリリィーの眷属化だけど」
『流石に何も無かった事にするのは無理があるんじゃない?』
えぇい! 煩いぞ!!
モフモフな尻尾が鼻先でゆらゆら揺れてたら思わず抱き着いちゃうのは仕方ないし。
大事な事だからもう一度言うけどこれは不可抗力! さっきも言った通り私は悪くない!!
「最後にもう一度確認するけど。
前にも説明した通り、眷属化に伴って人間から別の種族へと転生する事になる。
当然今まで通りの生活には戻れなくなってしまうけど……」
「もう決めた事ですので。
それに貴族令嬢としての退屈な生活は飽き飽きしていました。
実は冒険者として自由に世界を飛び回り、強大な敵と戦えるお兄様が昔からずっと羨ましかったのです!」
超大国アルタイル王国が侯爵家の御令嬢にして救世の六英雄が一人、冒険王ガスターの実の妹と言う何不自由の無い生活を捨てるって言うのに……
めっちゃ嬉しそうに目をキラキラさせるとは……流石は没落したところから実力だけでのし上がったガスターの妹なだけはあるわ。
「本当なら実家が没落してせっかく堅苦しい身分から解放されたのだから私もお兄様と一緒に冒険者になって全力で戦って強くなりたかったのですが……危ないから私はダメだと言われてしまい。
もう今となっては諦めていたのですが……まさか子供の頃からの夢が叶う日が来るなんて!!」
「えっと……リリィー?」
「はっ! す、すみません!
私ったらつい嬉しさのあまり興奮してしまって……」
「ん、別に構わない」
私もさっきついついミーシャの尻尾に意識を持ってかれちゃったし。
「それじゃあ、これからリリィーの眷属化を開始するけど。
その前にどんな方向性が良いか希望はある?」
「希望、ですか?」
「ん、前にも説明した通り私は魔を司る。
だからリリィーの転生先の種族にもその影響が強く出るだろうけど、どんな種族に転生するのかはリリィー次第。
でも、例えば水属性みたいに大まかな方向性を決める事はできる」
「方向性ですか……では炎でお願いします。
私の生家は代々、炎の魔法を得意とする家門。
この真っ赤な髪色も相まって紅き炎、カーディナルと呼ばれておりましたので」
「わかった。
リリィーには、カーディナルの名を与える」
「え? それはどう言う……」
あれ? 真名の事は教えて無かったけ? う〜ん、まぁ別に良いや。
「リリィー・カーディナル、それがリリィーの真名。
さぁ、リリィー! 私の眷属になれっ!!」
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