第8章 悪魔姫の復讐・冒険王編
第132話 過去と理由
「復讐……」
「冒険王にねぇ……」
……2人とも、思ったよりも淡白な反応だな。
そりゃあガルドは最高位たるSランクまで登り詰めた冒険者なわけだし、血生臭い事とか物騒な事にも慣れてるだろうけどさぁ。
クリスティアまでこうも淡白なリアクションだなんて。
なんかもっとこう 〝ふ、復讐!? あの勇者様のお仲間である冒険王にですかっ!?〟 的な反応を期待してたのに……
「何でまたアイツに復讐を?」
「それも説明するけど、その前にさっき言った通り2人には私の過去を見てもらう」
別に長々と話すのが面倒くさいとか、そんな下らない事実はこれっぽっちも無いけど。
その方が一から全部口で説明するより遥かにわかり易い上に早いしね。
「レフィー様、失礼致しました。
女王陛下の……」
「別に名前で呼んで構わない」
魔国でも殆ど誰も私の事を女王様って呼ばずに姫って呼んでるし。
今更、女王陛下なんて呼ばれても何か落ち着かんわ。
「そ、それは」
「名前でいい」
「しかし」
「名前で、いい」
「か、かしこまりました」
ふっ、勝ったな。
「レ、レフィー様」
「ん、何?」
「過去を見る、とは一体……」
あぁ、なるほどね。
確かに過去を見てもらうって言われても混乱するのも無理はないのかな?
「それは体験した方が早い」
はい、という訳でいつもの如く私の記憶をガルドとクリスティアに付与してっと……これでよし!
「っ!?」
「っこれは……」
「
まだ子供だった時。
日常を奪われ犠牲に6歳から始まった厳しい王妃教育。
それまでの生活を失い、幾度と無く泣きながらも第一王子の婚約者としての矜持のみで頑張った幼少期。
復活した魔王と、魔王が率いる魔物の大軍勢による侵攻。
勇者として仲間と共に戦地に向かう婚約者を見送る事しかできない無力な自分。
自分自身の無力を呪い、何もできない悔しさに枕を濡らした夜。
戦地で共に戦えないならせめて後方支援をと奔走した日々。
そして異世界より召喚された一人の少女、聖女が戦場に赴いた途端に後方での私の努力なんて関係ないとばかりに一気に巻き返した戦況。
魔王を討ち倒し、仲間達と……聖女と仲睦まじく凱旋し、出迎えた私に特に悪びれた様子もなく笑顔で聖女を正妻にすると口にする婚約者。
まぁ、ハッキリ言って王妃なんて面倒……こほん、百害あって一利無しだし、婚約破棄自体はぶっちゃけどうでもいい。
が! 長年……6歳の時から8年間も受け続けた虐待とすら言えそうな程に厳しく辛い王妃教育の全てが無駄になったと言う事実。
私の人生を半分以上を無駄に、無意味にされても世界を救った勇者と聖女。
そしてその仲間である英雄達、更には彼らを祝福する民達の前に何も言えず。
言い表せない悔しさに掌に爪が食い込む程に手を握り締め。
大切な家族や友人達との生活を心の拠り所にして、無様な姿だけは晒すまいと無駄になった王妃教育で培った微笑みを絶やさずに家まで帰って泣き崩れた悔しさ。
私の人生を無茶苦茶にしておきながら、大した謝罪も無く自分達は幸せになり、多くの人達から祝福されている理不尽さ。
何とか心の整理をつけ、王太子となった婚約者との婚約を撤回するために向かった王城。
そこで何故か偶然遭遇し、すれ違いざまに突如として悲鳴を上げながら倒れ込んだ聖女。
これまた何故か待機していた騎士達によって捕縛され、有無を言わせずに地下牢に放り込まれた時の絶望感。
そして、それから始まった無意味な拷問の数々。
暴力に恥辱に……1秒でも、一瞬でも早く死ぬ事だけを考えて願うようになった心境。
悪魔と呼ばれ、石を投げられながら立たされた断頭台で無理やり見せられた親しかった者達の……家族の無惨に晒された苦痛に歪んだ生首。
隣に立って何やらバカな事を喋るクズ。
怯えるような演技をしながらこっちを見下すよアバズレ。
楽しむように醜く咲う下衆達。
口汚く喚き散らす穢らわしい人間共。
全てに絶望して怒りでドス黒く心が染まっていき……振り下ろされた刃。
「っ、マジかよ」
「で、では悪魔族が一人の少女の怨念によって生まれたと言うのは……」
「アレは嘘でも何でもなく、紛れもない事実。
人間を、国を、世界を、全てを憎悪しながら冤罪によって殺されたのがこの私」
「レフィーお嬢様……」
「ご主人様……」
シルヴィア、ミーシャ……喋り辛いから抱きしめないで欲しいんだけど……まぁいいか。
「私は殺される直前、潰された喉で、心の底から叫んだ。
例え何があったとしても、お前らの言う〝悪魔〟となって報いを、復讐をしてやるって。
その怨念の結果、私はこの世界で最初の悪魔として転生してこの世界に悪魔族という種族が生まれた」
「「……」」
「これが私の過去。
Sランク冒険者にして英雄と呼ばれる勇者の仲間の一人。
私を貶め、私の大切な人達を皆殺しにしたヤツら全員に復讐する。
冒険王もその一人、これが冒険王に復讐する理由」
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