第131話 本当の目的

「……ぇ?」


「お嬢ちゃんが……女王?」


 ふ、ふふふ! ふはっはっは!!

 そう! この私こそが世界最強と称される海軍を誇るアクムス王国を一瞬で降した悪魔王国ナイトメアの女王様!!


 神話級の存在が闊歩する終焉の大地を平定し、大陸全土を支配する大陸統一国家悪魔王国ナイトメア作り上げた大魔王!

 全ての悪魔の頂点に立つ存在にして魔神! 魔を統べる神なのであるっ!!


「ん、私が悪魔王国ナイトメアを統べる王。

 悪魔族デーモンの始まりたる原初にして魔を統べる悪魔の神」


 ふっ、決まったわ!

 2回目だけど、大事な事だしな。

 さぁ、驚愕に目を見開き、我が神々しい威厳の前に平伏して私を褒め称えるがいいっ!!


『悪魔ちゃん、願望がダダ漏れだよ……』


 ふん! 何とでも言うがいい。

 何でもいいからとりあえずナメられ無いために、私の凄さを知らしめる必要があるのだ。

 悉く思惑が外れた今、もうなりふり構っていられるかっての!


「ご、ご冗談ですよね?

 国王陛下からの書状にはそのような事はどこにも……

 確かに悪魔王国ナイトメアの重鎮がお越しになるとは記されていましたが……」


「アラン達には内緒にするように頼んでる」


 まぁ、アラン達は私の事情を知ってるわけだし。

 頼んでる……と言うか、私達の正体を許可なく他者に明かせないように魔法契約を結んでるからな。

 そりゃあアランからの手紙に書かれてなくて当然だわ。


「で、では本当に……?」


「紛れも無い事実。

 何なら今この場所にアランを転移させて証明してもいい」


 アランは……う〜ん、お城の執務室でグランツェ公爵達と一緒に忙しそうにしてるけど。

 まぁ、細かい事は気にしない! はい、強制転移っと!


「グランツェ公、次はその書、類を……」


 期待通りの反応をありがとう。

 でも見事に硬直してるところ悪いんだけど、今はそう言うのは別に必要ない。


「アラン」


「レフィー様? これは一体……」


「私がギルドの応接室に強制転移させた。

 それより、この2人に私が悪魔王国ナイトメアの支配者と言う事を証明して」


「……なるほど、そう言う事ですか。

 別にそれは構いませんが……」


 おぉ、流石はアラン。

 話が早くて助かるわ!

 さぁアクムス王国国王アランよ! 私が本当に魔国の女王だと言ってやるのだ!!


「ガルドにクリスティアも久しぶりだね。

 レフィー様に巻き込まれたのは2人だったか」


「よう、アラン坊。

 久しぶりだな」


「……」


「まぁ、とにかくこのお方が仰っている事は全て事実。

 このお方、レフィー様こそが我が国の海軍を鎧袖一触で圧倒した悪魔王国ナイトメアを統べる女王陛下だ」


 はい、証明アンドご説明ありがとう!


「そう言う事。

 じゃあアランはもう帰っていいよ?」


「では、この私からいと貴きレフィー様にお一つお願いがございます。

 どうかこの私を元いた場所に、王城の執務室まで転移させていただきたく思います」


 え〜、どうしよっかなぁ?

 本当は面倒だから断ってもいいけど……貴いとか、そこまで言われたら仕方ない!


「ん、わかった」


「感謝いたします。

 じゃあガルド、クリスティア、色々大変だとは思うけど……またいつか一緒に酒でも飲もう」


 はい、転移!

 まぁ、これで私の身分の証明はできたわけだけど……この2人はアランと知り合いっぽいな。

 地味に気になるから後で詳しく聞くとしよう。


「アラン殿……いえ、アラン陛下が……で、では本当に!」

 っーー!! じょ、女王陛下とは知らず!!」


「別に構わない」


 ふっふ〜ん! やぁっと私の偉大さが伝わったようだな!!

 ふふふ、さぁ! もっと私を崇め、恐れて讃えるがいいっ!!


「となると、そっちの2人は……」


「2人は私の眷属」


「改めまして、レフィーお嬢様の眷属にして専属メイド長のシルヴィアと申します」


「同じくご主人様の眷属にして、ご主人様にお仕えするメイドのミーシャです!」


「シルヴィアは最上位悪魔よりも更に上位の存在である悪魔公デーモンロード

 ミーシャは神話に語られる雪猫の上位存在である氷魔猫」


「悪魔公……氷魔猫……?」


「マジかよ……本当にお嬢ちゃん達と闘ってたらヤバかったじゃねぇか! マジで命拾いしたわ……」


 ふふふ! そう! その視線っ!!

 私が求めていたのは畏怖のこもったその視線だよ!!

 いやぁ、非常に満足です!

 これでスイーツを好きなだけ食べたら機嫌も直ってぐっすり眠れそうだわ。


「しかし、何でまたそんなお嬢ちゃん達が冒険者に?」


「……それを知ったら2人は関係者になる。

 そうなったらもう後には引けなくなるけど。それでもいいなら教えてあげる」


「クックック、面白れぇ。

 どのみちもう喋ったらヤバい秘密を知っちまったんだ。

 ここまで来たら俺は最後まで聞かせてもらうぞ」


「わ、私もガルドさんと同様です」


「ふむ」


 邪神の覗き見回線を遮断して、完全防音結界を展開。

 更に念には念を込めて多重結界を構築してっと……こんなもんかな?

 これで誰もこの場所を覗けないハズ……多分。


「冒険者になった理由を幾つかあるし、その前に私の過去を見てもらう必要があるけど。

 まず先に結論から言っておく。

 かつて勇者と共に魔王と戦った仲間の一人。

 英雄にして冒険王と呼ばれる男に復讐する事、それが私が冒険者になった一番の目的」

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