第100話 自重? 何それ美味しいの?

 背中に突き刺さるシルヴィア達の視線を感じながら、多少の演技じみた仕草でバッと振り返り……


「こほん、お待たせしました。

 いや、お待たせし過ぎたのかもしれません!」


 召喚された紳士な悪魔が如く、胸に手を当てて優雅にペコリと腰を折った。

 ふっ、決まったな。


 服装が漆黒の魔王様風ワンピースじゃ無くて、黒のスーツか燕尾服。

 なおかつシルクハットを被っていたらなお完璧だったけど……


 ふっ、今の私はさながらオークションとか、大規模なショーイベントとかの司会進行者!

 それに、私を凄いと褒め称える皆んなの尊敬の籠った視線を想像するだけで……みゅふふ! 細かい事は別に気にしないのだ!!


「……レフィーお嬢様、大丈夫ですか?

 どこかが加減でも悪いのですか?」


「ご主人様……」


「えっと、何かお飲み物をご用意しましょうか?」


 あ、あれ? 思ってた反応と違う。

 ここはもっと、おぉ! ってなるところじゃないの?

 シルヴィアはガチで心配そうな顔してるし、ミーシャとミリアは苦笑いを浮かべてるし。


「あの面倒くさがりで、人前では殆どお喋りにならないお嬢様が、こうも生き生きと……」


 グランに至っては何故か目頭を押さえちゃってるんだけど……


「ははは……楽しみですね」


『まぁ、悪魔ちゃんが突然こんな事を言い出したらこう言う反応になっちゃうよね』


 うぅ〜、別に良いじゃんか!

 だって、これから首都自信作の自慢をするんだよ?

 昨日みたいに上空にソファーを浮かべて、見えやすいように特等席まで用意したんだよ?

 私だってちょっとくらいはしゃいだって良いと思う!!


「大丈夫。

 別にどこも悪くない……」


 さてと、じゃあ気を取り直して!


「こほん……さぁ、とくとご覧あれ! これが私が造り上げた自信作! 悪魔王国ナイトメアの首都ですっ!!」


 はいそこ! 首都の上空にいるんだから最初から見えてるとか言わない邪神っ!

 興が醒めるでしょうが!!


『まだ何も言ってないんだけど……』


 ふっ、こう言うのはノリと勢い、そして気分が大事なんだから余計な事は言わないで欲しいわ。


『いやだから……』


「首都の中央に聳え立つ白亜のお城!」


 我ながら素晴らしいセンス!

 このお城だけで十分に賞賛に値するわ!!


「そして四方にある大都市へ向かって真っ直ぐに伸びる4つの大通りと、大通りによって大きく区画分けされた4つの区画」


 まぁ当然、もっと細かく道はあるけど……細かい説明は後回し!

 まずは首都の基盤となる四区画についてだな。


「まず最初は移住区画」


 その名の通り首都に住う人々の家が立ち並び、主に教育機関などがある区画。


「次に商工業区画」


 ここには移住区画にはない規模の大規模複合商業施設を中心に、色んなお店が立ち並ぶ銀座とかをイメージした区画。

 そして3つ目は……


「迎賓区画」


 首都に遊びに来た人達宿泊するための旅館やらホテルやらが立ち並ぶリゾート地。

 まぁ、殆ど他国からのお客なんて来ないだろうけど、将来的に国交を開く事を考えると必ず必要になってくるからね。

 別に自分でリゾート気分を楽しみたいから特に力を入れて作ったとかでは断じてない。


「そして、最後に娯楽区画!」


 これが最も重要な区画なのは語るまでも無い。

 映画館を筆頭に、力試しを楽しめる円形闘技場はもちろんカジノや色街も存在する区画!!


「この4つの区画を基盤に上下水道の完備は勿論。

 トイレは当然水洗式で、どの家にもお風呂を完備!

 さらには! 首都の区画整備された構造自体を用いて展開される防御結界」


 その他にも移動に役に立つ転移門の設置などなど!

 新しい技術の開発とか、国家機密みたいに重要な事はダンジョン内部に作った中枢で行う予定だけど。


 この時点で既にこの世界に存在するどの都市よりも……少なくとも大国と呼ばれているアルタイル王国の王都よりも遥かに凄いと断言できるっ!!


「ふふふ、細かい説明は後でするけど。

 これがこの首都の大まかな説明なのです!!」


 決まった。

 ふっふっふ、皆んな驚きの余り声も出ないようだな!!

 後で資料を作って全員に配ってやろう。


『オーパーツもいいところだね……少しは自重しようよ』


 はっ! 自重? 何それ美味しいの?

 私は自分の望みを叶えるためなら全力を尽くすのだっ!!

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