第96話 最終手段を使う時が来たようだ……

 とは言えだ。

 魔国を発展させるには、これらに着手する前にしないとダメな事がある……


「ふぅ……さて、では手始めにまず魔国の中心となる都市。

 このダンジョンの真上に首都を造り上げる!」


 ふっ、決まった!

 我ながら今のはかっこよかったのでは無いだろうか?

 ただでさえ見た目の威厳は皆無な訳だし、ちょっとは態度で威厳を出さないとね。


『威厳……威厳、ねぇ……』


 むっ、何その含みのある言い方は?

 と言うか、何で皆んなしてそんな生暖かい目でこっちを? 今のカッコよさ抜群の仕草のどこに問題が……


「ふふふ、レフィーお嬢様、お顔にクリームが付いておりますよ」


「……」


 クリーム……?

 は、ははは……いやいや、そんな事無い。

 うんうん、流石にそれは無いわ〜……


「今お拭きますね。

 失礼いたします」


「ん……」


 シルヴィアに口元を拭われて……拭われてっ!!


『甲斐甲斐しくお世話されるし。

 威厳を出そうとカッコをつけたみたいだけど、何と言うか……微笑ましかったよ?』


 この私とした事が! まさかクリームを口元に付けるなんて……そんなの、そんなの! 子供みたいじゃんかっ!!

 うぅ……穴があったら入りたいぃ〜!!


『いや、悪魔ちゃんはまだまだ子供だよね?

 キミ、まだ生後半年と少しって事を忘れてないかな?』


 誰が子供じゃいっ!

 例え転生しての生後が半年ちょっとでも精神的には15歳! この世界では成人! 立派な大人なんですけど!?


 ふぅ〜、落ち着け。

 落ち着くんだ私。

 私は立派な大人のレディー、この程度のミスでいちいち取り乱してどうする。


 まずは皆んなして微笑ましげにこっちを見てくる、この居た堪れない空気をどうにかして脱しなければ!

 ふっ、こうなったら仕方ない……最終手段を使う時が来たっ!!


「こほん、そんなわけで私は今から首都の建造に着手する。

 その間に皆んなには首都に移住する人達を募集して集めて来て欲しい」


 よし、ここまでは完璧!

 何事も無かったかのようなポーカーフェイスで真面目な話を切り出し、自然に! そしてさりげな話題を逸らす。

 さぁ、どうだ……?


「かしこまりました。

 我ら4名で四方に散り、移住者を募ってまいります」


「では、私はドラゴニアを中心に当たりましょう」


「じゃあ私は吸血鬼の都でしょうか?」


「そうですね。

 グランとミリアはそれぞれ自身が治めていた領域を中心にお願いします。

 旧死王、鬼王領は私とミーシャで当たるとしましょう」


「わかりました!」


 乗り切った〜!!

 我ながら素晴らしい機転と弁舌! 自分でも驚いちゃうほどだわ!!


『いや、弁舌って言うほど話してないと思うけど?』


 ふっ! なんとでも言うがいい!!

 この窮地を独力自力で脱した私に怖いものなど何も無いっ!!


「じゃあ、期限は1週間後。

 人数は……」


 ふむ、人口ってどのくらいがいいんだろう?

 地球での記憶があるって言っても流石に中世の大都市の人口なんて知らないしなぁ。


 悪魔に転生する前の祖国。

 人間国家において大国の一つだったアルタイル王国王都の人口は5万人だったから……


「各方面5万人、合計20万人」


 まぁ、4倍の規模があれば十分でしょ。

 四魔王連合戦争の時にいた軍団だけで100万はくだらなかっただろうし人口の心配は多分無い……ハズ。


「募集人数を超過した場合の人選は各々に任せる」


「かしこまりました」


「あの、レフィーさん。

 私も何かお手伝いしましょうか?」


 当然!

 私の全身を覗き見て、仲間となったからにはファルニクスにも働いてもらう!

 働かざる者食うべからずなのだよ!!


『悪魔ちゃんが言っても説得力が皆無だね』


 ……


「ファルニクスには私の補助をしてもらう」


「了解です」


 他に質問もなさそうだし……


「じゃあ……このケーキを食べたら始めよう」

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