第66話 それがお前の願いなら
よっしゃあっ!
ふっふっふ〜!! 見たか! この私が本気になればグランのブレスだって問題無く斬り裂けるのだよっ!!
「私の勝ちだ」
斬撃が届く前に消滅……させたから、多少のダメージはあるだろうけどグランも健在!
完璧……流石は私! これぞプロの仕事!!
『流石ですレフィーお嬢様っ!!』
『お見事ですご主人様っ!』
でしょ、でしょ!?
むふふん! もっと褒めてくれたまえ!!
『褒められて嬉しそうに胸を張る……非常な微笑ましい光景だけど。
少し口元が緩んでるだけで、殆ど表情が変わってないのがちょっと怖いかな?』
クソ邪神め。
せっかく良い気分なのに水を差さないで欲しいわ。
表情が殆ど変わらない?
はっ! 何を今更わかり切った事を言ってるのやら。
私の表情筋が死滅してる事は周知の事実っ!
むしろ、これでも最近はちょっと表情が豊かになってきた方だわ!!
「グ……」
グランが呻き声を漏らしながら地面に沈む。
うん、流石の巨体、結構な音が鳴った……
『悪魔ちゃん、現実逃避は良くないよ?』
『お嬢様……』
『ご主人様……』
うぅ、だ、だって……
「我が全力の一撃を撃ち破り、
えぇ、そうですよ!
カッコ良かった白銀の鱗は血に濡れて、美しい翼はズタボロ状態。
綺麗に霧散させたつもりだったけど、完璧にコントロールできずにグランの全身を斬り刻みましたよ!!
でも、仕方ないじゃん!
いくら死なないとはいえ私だって必死だったし! 本気だったんだからさ!
「素晴らしく、見事な一刀であった。
クックック、よもやこの古竜王グランが敗北を喫する事になろうとはな」
はっ! 危ない危ない。
今はそんな事に気を取られてる場合じゃ無かったわ。
気合を入れないと! さぁ、頑張れ私! 私ならできるっ!!
「竜王グラン。
お前が気に入った、私の眷属になれ」
よしっ! やり切った!!
ミーシャの時と違って隣にシルヴィアもいないこの状況で眷属の勧誘まで……ふっ、自分で自分の成長が恐ろしいわ。
「クックック、クハッハッハッ!」
「何がおかしい?」
むぅ、せっかく勇気を振り絞って言い切ったのに……
「いや、すまん。
まさか今の今まで殺し合っていた貴殿にそのような誘いを受けるとは思わなくてな。
しかし眷属か……確かに貴殿と共に歩むのも楽しそうだ」
手応えアリだな!
ここはもう一押しで……
「だが、遠慮しておこう」
「っ、何故?」
「ここ数百年、色褪せていた我が永き時の中で貴殿との闘いは実に心躍った楽しき一時であった。
我はもう満足したのだ」
満足って……
「クックック、貴殿はまだ若い。
今はまだ我の言葉がわからずとも詮なき事よ」
まぁ、確かにまだ転生して半年だし。
前世と前前世でも15年しか生きてないけど……なんか釈然としないわ。
「魔王などと呼ばれてはいるが、我は一体の
そして我は貴殿と全力で闘い敗れた。
だからこそ、我は貴殿の手によって葬り去られる事を望む」
「むぅ……」
これはアレか?
誇り高き戦闘民族の王子が、情けをかけられるくらいなら死を選ぶ的な?
『いや、それは違うと思うよ』
黙れ邪神。
今はお前に構ってあげる暇はない。
『最近私の扱いが雑な気がする……』
とにかく! グランの言ってる事もわからなくもないけど、私はグランが欲しい!
だってカッコいいし、是非とも眷属になって欲しい。
「何もせずとも、もう半刻もせずに我は死に至るだろう。
その前に我を破った強者たる貴殿に介錯を頼みたい」
けど、このグランの目は知ってる。
全てに絶望して一瞬でも早く死にたいと思ってた私と種類は違っても本質的には同じ目だ。
本当にグランは私の手に掛かって死ぬ事を望んでるなら……
「わかった」
グランの考えてるのか事の全部はわからないけど、それが本心からのグラン自身の願いなら……
「レフィー殿、感謝する」
僅かに首を持ち上げて口角を吊り上げた瞬間……永き時を生きた古竜王の首が地面にずり落ちた。
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