第52話 第二の生贄
裏道を使わないと辿り着けないマイルームこと、最下層である35階層。
その1つ上にある普通に迷宮を攻略して辿り着く偽りの最下層である34階層に設置した応接室。
一見しただけで高価である事が伺える調度品の数々!
豪華だけど下品ではなく、程よい品を醸し出すこの空間っ!
我ながら良いセンスしてるわ。
「お待たせして申し訳ありません」
「いえいえ、お気になさらず」
あー、お茶が美味しいな。
ソファーもふかふかで座り心地抜群だし! 本当に良い仕事をしたって自画自賛しちゃうね!!
『キミね……』
え? 何か?
使者殿をで迎えようか、とか言っておいて何してるんだって?
フッ、大多数に向けてなら兎も角。
初対面の人とこの私が普通に喋れるわけないじゃん!!
使者殿とのお話はシルヴィアにお任せして、私は大人しくお茶でも飲んでるわ。
子ネコの姿になったミーシャを膝の上に乗せてモフモフしてるんでお構いなく。
「それでは改めてお聞きしますが、死王ゲヘディは降伏すると言う事でよろしいですね?」
「ええ、その通りです。
我らが王であらせられる死王ゲヘディ様は無駄な争いを好まぬお方なのです」
う〜ん、着ている物も上質だし確かに強い。
ゲヘディの勢力の中でも高い地位にいるんだろうけど……
「アンデットの王であるゲヘディがですか……それは意外ですね」
「今回の同盟とて他の3名の魔王に迫られ致し方無く参加されましたが。
争いなく平和的にこの戦いを終わらせられるのであれば、喜んで貴女様方に降伏するお考えでいらっしゃいます」
ポーカーフェイスがなってないな。
シルヴィアがゲヘディを呼び捨てにした時、一瞬だけど不愉快そうな顔になったし。
すぐに取り繕ってたけど、この私の目は誤魔化せないっ!!
「分かりました。
死王ゲヘディの選択を嬉しく思います」
「ありがとうございます」
あーあ、本当になってないわ。
そこで笑みを深めちゃったらダメでしょう。
ゲヘディもなんでこの人を使者にするかな? 普通に人選ミスじゃん。
「では早速ではありますが、我が主人であるゲヘディ様が貴女様方に直接ご挨拶をと……」
「だが断る」
「は?」
「この私、レフィーが最も好きな事のひとつは、思い通りに物事が進んでいるとほくそ笑むヤツに〝NO〟と断ってやる事だ!」
決まった!
いやぁ、一度は言ってみたいセリフランキング・トップ10にランクインしてるセリフが言えて満足だわ!
という訳で使者殿にはお帰り願うとしよう。
「あ、あの、それは一体どう言う……」
ふっふっふ、ならば説明してやろう!
テンションが上がって気分がいいし、隣にはシルヴィアがいて膝の上にはミーシャもいるし。
やっぱり最後は私が直接告げないと格好が付かないしね。
「ゲヘディの降伏は受け入れない」
「なっ! 何故ですか!?」
「何故、ね。
ふふふ、随分と舐められたモノだ……お前達程度の策略に気付いていないとでも?」
「さ、策略?
なんの事でしょうか?」
まぁ、当然シラをきるよな。
若干頬が引き攣ってるけど……まぁ、そこは黙っておいてあげよう。
「降伏するフリをして配下を送り込み、背後から私達を始末する。
小者なゲヘディが考えそうな事だ」
「っ!? 何を仰って……」
『あの小娘共に服従するフリをして取り入り、挨拶をすると言う名目でヤツらの拠点に侵入してから始末する』
私の背後のスクリーンに映し出されるこの映像。
ダンジョン外部の死王の本陣での会話を録画した映像だけど……面白いくらいに驚いてるな。
「残念だけど。
お前達の考えなんて最初から把握済み」
「っ!! 死……」
「ミャー!」
ソファーから飛び退き声を荒げようとした使者が一瞬のうちに氷によって拘束される。
ミャーだって! ミャー!! ミーシャがかわゆ過ぎてヤバイっ!!
「レフィーお嬢様」
おっと、危ない。
もうちょっとでこのシリアスな空気をぶち壊してミーシャに抱き着くところだったわ。
さてさて、それじゃあフィナーレといきましょうか!!
やっぱり人と話すときは目を合わせないとね。
「っ!」
身動きが取れず、口までを完全に氷によって覆われてる使者殿の髪を掴んでその目と。
その先にいる者と目を合わせる。
「使者殿……いや、この使者の目を通してここを覗き見してる覗き魔ゲヘディ。
小者らしい姑息な策略だったけど、お前の気持ちは良くわかった」
使者殿。
驚愕した様子で目を見開いてるけど……姑息な策略もだけど、この程度の小細工に私が気付かないとでも思ってたのかな?
「そっちがその気なら受けて立ってやろう。
喜べ、ヴィゴーレの次は……第二の生贄はお前だ」
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