第51話 使者

「シ、シルヴィア! ミーシャっ!!」


「っ!? 如何なさいましたかっ!?」


「ご主人様! ご無事ですかっ!?」


 おぉー!! よくよく見たら身長も結構伸びてるんじゃないかな!?

 ヤバイ! テンション上がって来たぁっ!!


「ほら! 見てっ!!」


「見て、とは?」


「ご主人様?」


 もう、早くこの感動を分かち合いたいのに!

 こうなったら仕方ない、強硬手段に出るとしよう。


「ほら! これ!!」


 どうだ!

 直接触らせれば例え着痩せして外見では判断がつかなくても関係ない!!


「お、おおおお嬢様ぁ!?

 一体何をっ! わ、私の手がお嬢様の! レフィーお嬢様のお胸にぃっ!!?」


「ちょっ! ご主人様、何をやっていらっしゃるんですか!?」


 あれ? おかしいな。

 2人の反応が思ってたのと違う。

 私の予想ではもっとこう、おめでとうございますっ!! って感じになると思ってたのに……


『いや、突然手を掴まれて、それを胸に押し付けられたら誰だって驚くでしょう?』


 た、確かにいきなり自分の胸を触らせるとか……よくよく落ち着いて考えれば、途轍も無く恥ずかしい上に非常識な事なんじゃ……


「うぅ……」


 と言うか、いきなり自分の胸に同性とは言え他人の手を押し付けるなんてただの変態じゃん!

 ヤバイ、さっきまではテンションが上がってだけど……何しちゃってんの私っ!?

 仮にも私は公爵令嬢だったのにっ!!


「お嬢様の……レフィーお嬢様のお胸。

 ぐふ、ぐへへ……」


「うぅ、恥ずかしい。

 穴があったら入りたい」


『あはは、カオスだね』


「笑ってないでどうにかして下さい!

 ほらご主人様! シルヴィア様がケーキをご用意して下さいましたよ。

 アフタヌーンティーにしましょうね?

 シルヴィア様もしっかりして下さい!!」













「ふぅ」


「如何でしょうか?」


「うん、美味しい。

 ありがと」


 ミーシャの入れてくれるココアはやっぱり絶品だわ。

 おかげで落ち着けたし、さっきの醜態は無かったことにしよう、そうしよう!


「レフィーお嬢様、全身鏡です」


 シルヴィアもさっきまではアレだけ取り乱してたのに、何事も無かったかのかのようなキリッとした凛々しい面持ち。

 私も見習わないと……まぁ、でも今はそれよりも!


「ふむふむ」


 シルヴィアとミーシャの身長が170台だから、丁度2人の胸くらいで150センチくらいかな?

 外見で体型の変化は殆ど無し、総じて言えば……


「中学1年生って感じか」


「中学?」


「何ですかそれ?」


 まぁ、シルヴィアとミーシャは何の事かわかんないよね。

 この大陸を統一したら学校でも作ろうかな?


「何でもない」


 まっ、2人みたいなナイスボディーにはほど遠いけど気落ちする事はない!

 何せ進化するたびに順調に成長してる訳だし!!


「シルヴィア、ありがと」


「もうよろしいのですか?」


「ん」


「かしこまりました」


 おぉ、一瞬にして全身鏡が無くなった。

 空間魔法によって作り出した亜空間に生物以外なら何でも収納できる収納魔法。


 異世界と言ったらアイテムボックスはテンプレ中のテンプレ!

 後でシルヴィアに教えてもらおう!


『機嫌は治ったみたいだね。

 念願かなっておめでとうと言っておくよ』


「っ!」


 コイツ、いつの間に……


『悪魔ちゃんが羞恥心に悶えてる間さ。

 いや、本当に酷い目にあったよ。

 まさか神たるこの私が、あんな目にあわされるなんてね……』


 ふっ、ざまぁ!

 私のスイーツタイムを邪魔するからだ! あぁ、思い出したらちょっとムカついて来た。

 あのパンケーキ、食べたかったのに……っと、今はコイツに構ってる暇は無かった。


『酷い言い草だね。

 確かにちょっとシステムに干渉したけど、本当にあのタイミングになったのは偶然なんだよ?』


 コノヤロウ……やっぱり、お前が手を回してたんじゃねぇか!!

 後でもう一回制裁を加えてやる。


「シルヴィア」


「はい、レフィーお嬢様がお眠りになられていた6時間の三魔王の動向をご報告いたします。

 こちらをご覧下さい」


 シルヴィアから渡されたタブレット。

 ダンジョンの権能と私の記憶を用いて作り出したモノだけど……


「これは……」


「はい。

 1時間ほど前に魔王が一角、死王ゲヘディが降伏を願い出ました」


「へぇ」


 死王が降伏、ね。

 ちょうど良い、パンケーキを思い出してイライラしてたところだし。


「じゃあ、これ以上待たせるのも悪いし。

 早速、使者殿を出迎えようか」

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