第48話 VS鬼王
「このクソ餓鬼がぁっ!!」
大気すらも震わせるようなこの重圧。
流石にこの大陸に君臨する四魔王が一角なだけはある……
「死に晒せっ!!」
ヴィゴーレの怒声と共に凄まじい爆裂音が鳴り響き、地面が大きく爆ぜて舞い上がる。
その巨体からは想像もできない音を置き去りにする瞬間移動としか形容できないような速度に、優に2メートルを超える金棒を片手で容易に振り回す膂力。
「ふふ、ふはっはっは!!
たわいも無い! たった一撃で跡形も無く消したんだか!!」
この圧倒的なパワーとスピード。
単純な力のみで他の魔王達と渡り合って来たのは伊達じゃ無いって訳か。
これが鬼王、これが暴君ヴィゴーレ……
「けど、それだけ」
確かに圧倒的な身体スペックは驚異だけど……そもそも、私って接近戦タイプじゃ無いんだよね。
と言うかヴィゴーレは単純な身体能力のみでこの大陸の頂点の一角に立つ存在。
そんな化け物を相手に接近戦やら、肉弾戦をするのはただの馬鹿だ。
付与でバフを掛けて身体能力を底上げしても今の私じゃあヴィゴーレの動きを捉えるので精一杯だし。
誰がこんな脳筋と真っ向から力勝負なんてするか!
「轟け……」
さぁ、いこうか。
ヴィゴーレが何やら喚いて、軍勢も一緒になって勝手に盛り上がってるけど。
「ん? これは……」
何勝手に殺してくれてんの?
「黒鳴」
「っ……!!」
視線が合って、目を見開いたヴィゴーレが口を開こうとした瞬間。
湧き上がる軍勢の声を掻き消す轟音が轟き、天から降った漆黒の光が鬼王を呑み込んだ。
ヴィゴーレが砕いた地面を更に抉ってクレーターが出来上がり、その余波でもって周囲の者は焼け焦げ灰と化す。
うん、我ながら凄まじい威力だわ! けど……
「グッ……」
黒鳴の直撃を受けて膝を着く程度か……
「貴様、何故生きている?」
何故ってそりゃあバカデカい金棒で殴られそうになったからヴィゴーレの頭上に転移したからだけど?
「それに今の魔法はなんだ?
貴様何をしたっ!?」
「それをお前が知る必要は無い」
と言うか、敵であるお前に誰が教えるか!
しかし、流石は永き時を生きる魔王の一柱。
脳筋バカとは言え、魔法の知識程度は持ってるらしい。
本当はもっと甚ぶってやりたかったけど……一応私の攻撃手段の中でも現状最上位の魔法なのに黒鳴の直撃を受けてこの程度のダメージ。
ぶっちゃけ運営に文句を言いたくなる固さだわ! こんなの殆どチートじゃんっ!!
邪魔が入らないように他の魔王達の牽制をシルヴィアとミーシャに任せちゃってるし。
こんなバカみたいに固いヤツに付き合ってる暇もない。
「仕方ない」
さっさと終わらせるとしよう。
「まぁいい。
どうやってかは知らないが我の一撃を避けるからには貴様も多少はやるようだな」
うっわ、今背筋がゾワってした!
これはアレだ、冤罪で捕まった時や、オーク共から感じたモノと同じ……
「クックック、滾ってきたぞ! 精々我を楽しませて見せろっ!!
光栄に思え小娘! 貴様を屈服させた後は、我が身を鎮める玩具にしてやろう!!」
「死ね」
「何だ……っ!? ……っ!?」
怪訝そうに顔を顰めたヴィゴーレが驚愕に目を見開き再び地面に膝を着く。
確かに圧倒的な身体スペックやタフさは驚異だけど、身体能力が高いだけの脳筋との勝負なんて、初めから結果は見えていた。
「知ってる?
肉体に依存しているお前達が生きる為には酸素……空気が必要。
お前の周囲だけ真空にしてやれば……」
いくらタフであろうとも、悪魔のように精神生命体で無い限りヴィゴーレは
魔法が使えれば結界を展開するなりして防ぐ手段はあっただろうけど、力だけのコイツは魔法が使われた事にすら気付けない。
「っ!! ……っ!? っ、……」
もがき苦しんでたけど、静かになってきたな。
真空だからどうせ何も聞こえて無いだろうけど、敢えて言おう!!
「私に敵対した時点で……お前はもう死んでいる!」
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